異世界のシャボン玉はスゴかった
もうね、ご都合主義だろうが何だろうがカンケーねーわ。
身の安全を確保できるならそれに越したことはない。
半ば呆然とそんなことを考えながら虹色のシャボン玉を見てると、また調べられる合図の矢印が出てきた。
矢印に集中すると半透明のレイヤーが出てくる。
【シャボン玉】完全防御の固有魔法 レア度S
子を護りたいと想う母の強き願いが形になったもの。
内部にいる限り、外側からの物理、精神、魔法、状態異常、温度や濃度、重力などありとあらゆる攻撃を受けない。
術者を中心に膜を張るので、効果範囲は術者の任意で決められる。しかし広くなればなるほど魔力を大量に消費し、中心地を術者以外にして発動させることはできない。
あー、うん、名前【シャボン玉】で決定なのね。
なんだか申し訳ないわ、、、
そうかー魔法か~。
魔力って私にもあったんだね。
知らなかったわ~。
アレかな、異世界転移でチート特典とかかな。
言われてみれば、若干疲れてっていうか、ダルいような重いような?
そんな気がしないことも、、、ないこともないような、あるようでないような?
「あ、そういやさっきの熊どうなった⁉」
身の安全を確保できたとわかれば現金なもので、いそいそと岩陰から熊VS盾の彼+剣の彼の闘いを覗き見る。
有理も一緒になって見ているが、こちらはどちらかと言うとワクワクしているように思える。
さすが男の子だな~。やっぱり戦いゴッコとか、戦隊モノとかバッタの人や宇宙の人とか好きだからな~。
ロボットも艦隊も、男の子は大好きだよね。
男のロマンとかいうやつなんでしょ。
「いけー!そこだー!おにーちゃんたちがんばって!」
キラキラのお目目で応援してる有理が、シャボン玉から出ないように胴体を抱えながら、私も声援を送ることにした。
「頑張って~!」
それから10分後くらいに、漸く熊が倒れ、息絶えたようで、彼らは勝利を喜び、武器を仕舞う。
熊が倒されたということで、ホッとしたからか虹色のシャボン玉はパチンと弾けて消えた。
相変わらず発動や解除のタイミングやら何やら、謎が深まるばかりだけど、気にしたら敗けのような気がするので意識の片隅に追いやり、すっかりエンターテイメントショーを見ているがごとき私たちのそばに彼らがやって来る。
「お疲れ様でした!
すごいね、二人とも強いね!」
「おにーちゃんたちスゴいね!」
私も有理に負けず劣らずキラキラのお目目だったんだろう、彼らは若干ひきつりながら応えた。
「あー、アリガトウ?」
目立った外傷は見当たらなかった二人だが、無傷と言うわけにはいかなかったようで、近寄ってきた彼らは所々傷口から血が流れ、土埃などで汚れていた。
「とにかく、ここは危険なのがわかっただろ?
ピクニックならもっと村や町の近くでやれよ。」
そう言いながら、盾の彼は肩の辺りをしきりに擦っているのでどうしたのか聞くと、どうやら熊の体当たりやら引っ掻きの爪やらを盾で凌いでいるときに、一度結構強いやつをもらってしまい、うまく衝撃を逃がせなくて肩が外れたのを嵌めたと言う。
隙を見てしなければならなかったとはいえ、すぐに対処できたので、次のアタックからはまたきちんと受け止めることができたらしい。
大したことはできないけど、さっき摘んだ諸々の中には傷薬になる薬草があったはずということで、盾の彼には、何の革なのかはわからないけれど、身に付けていた革製の軽鎧と上着を脱いでもらい、肩を露出してもらった。
──────素敵な筋肉、肉体美、ゴチです!
それはさておき、手当てである。
ちなみに剣の彼は先程倒した熊の血抜きと解体をし始めている。
盾の彼の肩は、赤黒く内出血し、少し腫れていた。
さてさて、ぶつけたりしたところに貼っておくと良いって薬草どれだったかな~?とバッグやカバンなどを探っている間に、渡してあった川の水で絞ったハンカチタオルで肩の回りを拭いておいてもらう。
すると、有理が心配そうな顔で彼に近づいて行った。
「おにーちゃん、かたにアザができてるね。いたそう、、、いたいのいたいの、とおいおやまにとんでけー!」
そう言いながら、盾の彼の肩を優しく撫でて、その後手で痛みを放り投げて飛んでいくようにって動きを入れて、最後にふーーーっ、ふーーーっ、と息を吹き掛けると、肩の辺りがじんわりと淡く光り、みるみるアザが消えていった。
───────────何で!!?
盾の彼と、私と、二人で目を見開いて凝視してしまったのは無理もないことだと思います。