第一異世界人、発見
「ぅおっと、おい、急に立ち止まるなよ。」
後ろから来た彼が、私とお見合いしている先頭の彼に声をかける。
「どうした?」
「いや、どうって、、、、あれ、、、」
先頭の彼に指さされ、後ろの彼も肩越しに覗き込んでコンニチハ。
「??親子?姉弟か???」
「親子、じゃないか?そもそもなぜこんなところに子どもが居るんだ?
この川沿いは比較的穏やかな気性のヤツしかいないとはいえ、ここはランクBエリアのファルクスの森だぞ。
子どもを連れてピクニック気分で来るようなところじゃないだろう。」
「まったくだ。いったい何をしているんだ?」
思いっきり不審人物です。ハイ。
ホント申し訳なくなるくらいに不審者感ハンパなく醸し出しちゃってます。
獰猛な肉食獣や、山賊とかみたいなのじゃないみたいだから、ちょっとホッとしちゃったけど、でもまだ安心はできない。
言葉はわかるし、明らかに不審に思われてるけど今すぐに襲われるって風でもないし、ええい、女は度胸!母ちゃん 頑張るよ!!
「、、、、、、、、、こ、コンにちワ、、、」
声裏返っちゃったよ!!!
どんだけ緊張してんの私!!!
「あぁ、こんにちは。
で、子ども連れてこんなところで何してんの?」
あ、声裏返ったのスルーしてくれた。
よかった。
「、、、、、、、、さ、散歩、、、、かな?」
散歩て!
無理くりすぎるだろ!
「散歩、ねぇ、、、」
うわー、思いっきり不審に思われてる。
二人ともジトーっとした目で見てるよ。
大注目だよ。
でも私はなんて言えばいいのかわからずに視線泳ぎまくり。
そんな何とも言えない雰囲気をぶち壊してくれたのは、私の腰のあたりにしがみついてる有理の一言だった。
「まみーあっちからなにかくるっていってるよ。でっかいでっかいのがくるって。」
でっかいでっかい、何かって何?
そろそろキャパオーバーしそうな脳みそをなんとか叱咤して、有理の指さす方を見、、、
「!!!!」
彼らの後方斜め左手から、でっかい黒いのがのっそりと現れた。
うん、でっかいでっかい、黒い熊だな。
って、今度こそヤバイ!
だけど足が動かない!
ヤバイ逃げなきゃと思うのに身体は硬直して言葉すらまともに出てこない。
そんな私の様子にジト目から怪訝な顔をしたのち、彼らも有理の指さす方を見る。
「!!しまった、こんなに近づかれるまで気づけなかったなんて!」
「ちぃっ、ワイルドベアかよ!」
すぐさま戦闘態勢に入る彼らを横目に、私はアワアワしながらもとりあえず有理を背中に隠しながら、じわじわ後ずさる。
低く唸る熊と対峙する彼らと、見るからに弱っちそうな私たち。
熊も馬鹿じゃない。明らかにターゲットはこちらだ。
見かねて彼らの内、大きめの盾を持った彼がタウントを取るためにガツンと盾と短槍を打ち鳴らし、挑発する。
「さー来い、ウスノロ!!テメーの相手は俺だ!!!」
でっかい躰に相応しいでっかい咆哮を上げて、熊は盾の彼に狙いを定める。
「おい、アンタらボケっとしてないで今のうちにもっと後ろに離れてろ!」
もう一人の彼は盾の彼の斜め後方で剣を構え、熊から目を離さずに私たちに逃げろと言い、気合い一発遊撃に走る。
その声にやっと私の硬直も解けて、有理を抱えてダッシュでその場を離れ、大きな岩の陰に隠れて有理を抱きしめる。
響く剣戟、熊の咆哮、盾で受け止めているであろう鈍い衝撃音、彼らの気合の声、etc.
様々な音が聞こえてくる。
私はとにかく恐ろしかった。
恐ろしくて恐ろしくて。気が狂いそうなほど恐ろしくて。
岩陰から覗き見るようなそんな余裕もなく、私は助かりたい一心で願った。
怖い
守らなきゃ
怖い
守らなきゃ
怖い
助けて
怖い、怖い、けど、守らなきゃ!!!!
有理を、守りたい!守らなきゃ!
そう強く強く想い願うと、隠れて座り込んでいる私たちを中心に半径1メートルくらいのドーム状で虹色の膜が音もなく現れた。
「まみー、くるし~~~」と言いながらぎゅうぎゅうと抱きしめられてる有理が気づいて声を上げる。
「まみー、きれー。にじいろだよ。みてみて。」
目を瞑った私はその時初めて自分が目を瞑っていたことに気づき、はっとなって目を開くと、確かに虹色の膜に覆われていた。
「??なにこれ???」
混乱する私に、有理が教えてくれた。
「まみーがこのまもってくれるシャボンだまつくったんだよ。
このシャボンだまのなかはあんぜんなんだって!
まみーすごいね!」
――――――――― へ~、、、、、、
調べるといい、このシャボン玉(仮)といい、ちょっと都合良すぎやしませんか、、、、