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呪われた物語

作者: 海之本

眠れないのを誰かのせいにして

目をつぶって静かに呼吸しても

何も変わらない自分が

部屋の闇に浮かんでいる

泣いてしまえば

どこか息苦しい胸の奥も

しゃくり上げたりなんかした呼吸と一緒に

空気が入り込んで

楽になれそうな気はするけれど

負けたような悔しさが

布団の上にのし掛かかるから

ぼんやりと天井を見上げたまま

いっこうに時間は経っていかない

長い夜になりそうだ

本心を宣言してしまえば

何もかもが終えられる

分かってはいるけれど

どうしても言えないでいるから

中途半端なまま

夜を眺めている

疎まれることも

蔑まれることも

妬まれることも

批判されることも

無視されることも

上手くいかないことも

恐怖も不安も

不満も怒りも失望も

悲しみも恨みも

己への卑下すら

まるでおとぎ話みたいに

毎晩耳元で囁くのは

割り切ることも

許すことも出来ずに

古びた棚から取り出して

何度も読み返すバカが

忘れられないでいるから

うとうと眠りかけた瞼が

闇の底で溺れる幻覚を連れてくる

息苦しさに目を開けても

真っ暗なのは変わらなくて

夢の中なのか

部屋の中なのか分からないから

脳みそから

呪いの物語だけ抜き取って

めちゃくちゃに破ってしまえたら

大好きなあなたとアナタと貴方

楽しいあの日とあの時とあの頃

大切な本と紙とペンで

ずっと頭の中も胸の中も

満帆に詰め込み

穏やかな時間を抱き枕に出来るのだろう

遠くで誰かがバイクを吹かしていて

オレはここにいるんだと叫んでる

大丈夫だよ、ちゃんと聞こえてるから

もう家に帰ってゆっくり眠りなよ

新聞屋のオヤジに絡まなくても

すべてを賭けて燃やした

あんたのエンジン音

少なくとも一人は覚えてるから

もう安心して帰りなよ

ついでにその自慢のハイグリップタイヤで

煩わしい呪い踏みつけ

面白くもない文面に

イカしたトレッド紋様塗り込んでってよ

そうしたら呪いの本なんて

ただの紙切れの集まりだと思い出せるからさ

これからどうしようか

間違いじゃないって

どうして自信が持てないんだろう

あの人は俺の何を知ってるつもりなのか

この場所でも

あなたにとっても

どれだけ経っても

何も変わらない自分の立ち位置

時間が経つほどに悔しく

ツラみつらつら書き連ねて

呪いの物語作ったバカが

何冊も棚に置いていくから

いい加減頭にくるんだ

だからやっぱりあんたのバイク

ちょっくら貸してくれないか?

どこか見知らぬところに

こんなバカな自分捨てて行こうじゃない

今夜は思ったより長引きそうだ

映画でも見ますか?

あとほんのもう少しすれば

朝日が見られるだろ?

そうしたら呪いの本は溶けだして

乗っかていた重苦しさも流れて

溺れながら足掻いていた闇の底が

しだいに明るい空気で満ちるだろう

それまでは誰かが夢見た幸せな世界で

ひと時を過ごそう

闇の奴隷から解放される時

自由な光の兵となって貧弱な皮を脱ぎ

少し強い甲鉄なんてまとって

呪いを踏みつけられるはずだから

眠れないのを誰かのせいにして

だけどその誰かのせいで眠れない

どこまでも情け無い自分が

あなたやあの人やアイツとの

時間や言葉や気持ちを連れて

語り囁くそれは呪いの物語

だけと分かってるんだよ

呪いは呪ったバカにしか変えられない

窓の外が明るくなったら

朝日に向かって破り捨てやろう

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― 新着の感想 ―
[良い点] ラップでも聴いてるかのようにゴロが良いというか韻を踏んでいるというか、読んでいて妙に早口で読み進めてしまう自分が居た。 普段なら空行の一つも入れるべきと思うがこれはむしろそれが無い方が良い…
[良い点] どもども。 眠れない夜に降りかかる不安や葛藤が「呪いの物語」という本で、その本を持っているのは自分で更にそれを読み囁き呪いを思い出させるのもまた自分、という堂々巡りのような状況から、一筋…
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