表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/125

25:ショック

「サンキュー」

 鷹緒はコーヒーを受け取ると、まぶたを押さえた。大分、眠気は取れたようだが、だるそうにしている。

「あの、ごめんなさい。ついてきたりして……」

 不機嫌な様子のままの鷹緒に、沙織が素直に謝る。鷹緒はコーヒーに口をつけると、軽く顔を掻いた。

「べつにいいけど……それで、何の用?」

「あ、あの、キャンディス見てびっくりしちゃって……」

「ああ、よく撮れてたろ?」

 静かに笑って、鷹緒が言う。

「うん……でも、あんなに大々的に載るとは思ってなくて、びっくりした」

「まあ、メインページだから仕方ないだろ。何か問題でもあった?」

「ううん。ただ、学校ではちょっとした噂になっちゃって……」

「ハハ。よかったじゃん」

「よかったのかな?」

 立ったままの沙織は、思い切って鷹緒の横に座った。鷹緒は何も言わず、ぼうっとしている。

「雑誌はおまえの家に、何部か届けてあるはずだから。あと、ヒロがおまえをモデルにってうるさいんだよ」

「うん、さっきも言われた。でも私、来年は受験生にもなるし……」

「なに? 興味ないんだ、モデルとか」

 鷹緒が、意外そうに尋ねる。

「興味がないわけじゃないよ。正直、楽しかったけど……でもすごく緊張したし、仕事としては考えられなくて」

「ふうん? まあ、俺はどうでもいいけどな……」

「なにそれ、ひどい」

「だって、選ぶのはおまえだろ?」

 いつもと変わらず、そっけない態度の鷹緒に、沙織は俯いた。

「そうだけどさ……」

「さあ、帰るか」

「あ、うん……」

 沙織は頷くものの、なんだか心が晴れない。

 鷹緒はコーヒーを飲み干すと、立ち上がって支度を始めている。そんな鷹緒に、沙織も立ち上がり、口を開く。

「あ、いいよ。電車で帰る……今日は寝た方がいいよ。だるそうだし」

「いいよ、べつに」

「よくないよ。ちょっと辛そうだもん」

「……いいのか?」

「うん、まだ全然早いし。それより、さっきの話だけど……」

「さっきの話?」

 聞きにくそうに尋ねる沙織に、意味がわからず、鷹緒が聞き返す。

「だから、さっきの写真……鷹緒さん、本当に……子供がいるの?」

 沙織が言った。鷹緒はもう一度ソファに座った。

「ああ……その話か」

 面倒くさそうに、鷹緒は顔をしかめる。

「私、知らなかった……」

「……だからなんだよ。知ってたら、どうだったって?」

 溜息をつきながら、鷹緒が言った。その態度は今までと違い、強い拒否のようなものが、体全体で伝わってくる。

「どうって、べつに……」

「俺に子供がいようといなかろうと、俺がどういう人間だろうと、おまえには関係ないだろう? 親戚っていっても、大して交流もない親戚なんだから。もう帰れよ」

 いつになく冷たく突き放す言い方をする鷹緒に、沙織は驚いて俯いた。

「わかった。ごめん……」

 沙織はそれだけを言うと、急いで部屋を出ていった。

 残された鷹緒は、そのままソファに横になり、大きな溜息をついた。


 家へ帰った沙織は、ショックで落ち込んでいた。

 鷹緒が結婚していたということ、そして子供がいたという事実に、ショックを隠しきれない。そして沙織は、鷹緒のことが気になって仕方がないという気持ちに、気付かされていた。

「私……鷹緒さんのことが好き……?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ