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101/125

101:秘密の交際

「今日はコンサートの打ち合わせがあったんだけどさ、企画目白押しできっと楽しくなると思うよ。コンサートには、沙織も来てくれるよな?」

 ユウの部屋で、ユウが沙織にそう言った。

 二人のデートは、ユウの部屋で過ごすことが多かった。外だと目立つ上、リスクも大きい。ユウの住むマンションは、オートロックで駐車場も地下のため、そうそう人に会うことはなかった。駐車場に出入りの際は、沙織が体を隠しておけばバレることはないのだ。そんな他人にはあまりない苦労を抱えながらも、二人の交際は順調だ。

 ユウの話を聞きながら、沙織は笑って頷く。

「もちろん行くよ。今回のコンサートも、楽しくなりそうだね」

「うん、頑張るよ。ああ、そういえば諸星さん、もうニューヨークに行って二年じゃない? そろそろ帰ってくるんじゃなかったっけ?」

 突然、ユウがそう尋ねた。

 久しぶりに聞く鷹緒の名前に、沙織の目が一瞬揺れた。だが、前よりその情熱は確実に薄れてしまっている。

「ああ、うん。わかんない。私には全然連絡くれないから。でも、この間ヒロさんが、少し長引きそうって言ってた……」

「そう、長引くんだ……」

 ユウが残念そうに言ったので、沙織は微笑んだ。

「ユウは本当に鷹緒さんのこと、尊敬してるんだね」

「うん、まあね。僕は前から趣味で写真をやってたんだけど、あの人の写真はずっとすごいって思ってたんだ。こっちは被写体だけど、思った以上にカッコよく撮ってくれるしさ。気持ちがいいんだ、撮ってもらうと」

「うん……わかる」

 沙織もその経験者であった。鷹緒は、沙織がカメラの前で緊張していても自然と解してくれ、仕上がった写真は別人のように写っている。そんな鷹緒の腕に惚れこんでいる人が、ユウ以外にも多くいるということは、沙織にも理解出来る。

「諸星さんに、言ってないんでしょ? 僕らがつき合ってること……」

「うん……会話もろくにしてないからね」

「じゃあ、知ったら驚くだろうな」

「そうだね……」

 二人は笑った。

「……寂しくない?」

 突然、ユウがそう尋ねた。その意味がわからず、沙織が聞き返す。

「え?」

「だからさ、諸星さんがいなくなって、寂しくない?」

「どうして? 私たち、ただの親戚だもん……」

「でも、好きだったんでしょう?」

 ユウの言葉に、沙織は驚いた。

「……どうして?」

「知ってるよ。見てればわかるもん。前に沙織をコンサートに誘った時、沙織ってば、僕らよりも諸星さんとばかり話してたし、態度がね」

「あ、あれは緊張してたんだよ。BBのコンサートだし、楽屋まで入れてくれたから……」

 赤くなって沙織が言う。

「僕はその頃から、沙織のことが気になってたんだけどな……」

 ユウの悪戯な瞳に、沙織が真っ赤になって天井を見上げる。そして一つ咳払いをすると、ユウを見つめた。

「でも、もう昔のことだよ?」

 沙織の言葉に、ユウは嬉しそうに微笑んだ。

「よかった……ずるいかもしれないけど、諸星さんが日本を離れたって聞いて、チャンスかなって思ってたんだ。あれから会う機会も全然なかったからアタック出来なかったけど、こうして沙織とつき合えてよかった」

 正直なユウの言葉に、沙織は恥ずかしそうに微笑みながらも、首を傾げた。

「どうして? ユウはモテモテなのに。鷹緒さんと張り合うことないじゃない」

「いやあ、確かに僕はモテモテだよ。だけどあの人、大人じゃない? 仕事面の姿勢や技術だけじゃなくて、男としていろいろ尊敬出来る人だと思う。そんな人のことを好きな子を、どうやったら振り向いてもらえるのか、結構真面目に考えてた」

「変なの。天下のBBのリーダーなのに」

 弱気なユウの言葉に、沙織が吹き出して言った。ユウも微笑む。

「変かな? 僕はただのユウだよ」

「うん。今はわかる」

 二人はそっとキスをした。

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