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虫から始める魔王道  作者: 稲生景


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8話 初戦闘

「さて! そろそろおぬしには、実戦訓練を行ってもらうぞ!」


 唐突に、ミミズさんがそんなことを言い出した。


「実戦訓練?」

(ごしゅじんー、このひじょうしょく、なにいってるのー?)

「ひ、非常食じゃとぉ!? おいスティンガー! おぬし、まだ儂のこと食い物扱いしとるのか!?」


 ミミズさんはスティンガーから距離をとっていた。


「と、とにかく! おぬしにはこれより、洞窟内にいる魔物と戦ってもらうぞ!」

「え、なんで!?」

「おぬしは儂の跡を継いだのじゃぞ!? いずれは外の世界に出ることになる。ゆえに、今のうちに実戦経験を積んでおくのが一番なのじゃ!」

「おおっ! ミミズさんがまともなことを言ってる!」

「……おぬし、儂のこと何だと思っておるのじゃ……まあよい、いざ出発じゃ!」


「まぁ、行ってくるか……スティンガー、留守を頼んだぞ」

(うん! ごしゅじん、いってらっしゃーい♪)


 尻尾をぶんぶん振っているスティンガーに見送られながら、洞窟の最深部を後にし、ミミズさんと共に内部を探索する。


「しかし、今まで最深部にしかいなかったからわからなかったけど……広いな、ここ」

「うむ、ここは儂が掘ったのじゃが……こんなに広かったかのぅ?」

「えぇ!? ここ、ミミズさんが作ったの!?」


 驚く私を見て、ミミズさんはエッヘンと胸を張る。


 ……まぁ、ミミズさんに胸は無いんだけどね……


「ふふん、驚いたか! まだ儂が魔王だった頃、ユニークスキル《穴堀あなほりかみ》を使い、作り出したのじゃ!」


 《穴堀の神》?


 ……そういえば以前、ミミズさんのステータスを見たときにあったな。

 “元魔王(笑)”に気を取られてスルーしてたけど。


 私は再びミミズさんに〈鑑定〉を使い、スキルを確認した。






 ユニークスキル:穴堀あなほりかみ

 ──どんな地形でも瞬時に穴を掘ることができるスキル。その穴堀の速さは、まさに神。






 そのまんまのスキルだった。


 だがこれは便利だ。逃走や奇襲など、用途は多岐にわたる。

 そんなことを考えていると、ミミズさんが立ち止まる。


「む……いたぞ」


 その言葉に前方を向くと、そこには全長1メートルほどの細長い体型で、尾部に巨大な鋏を備えた生物がいた。


「あれは……ハサミムシか?」


 私の知識では、あれはハサミムシと呼ばれる昆虫。

 ハサミムシ目、ハサミムシ科に属する生物だ。


 私はすぐさま〈鑑定〉を使って相手のステータスを確認する。


 ステータス

 名前:なし

 種族:テールシザー

 レベル:5

 称号:なし

 スキル:怪力鋏かいりきばさみ


「あの鋏の形状……オスだな」


 ハサミムシは、鋏の形状で性別を見分けることができる。

 オスの鋏はきつく曲がっており、メスは緩やかに曲がっているのが特徴だ。


 ちなみにメスは、卵や孵化した幼虫のそばを決して離れずに守り、巣に近づく敵を鋏で威嚇し追い払う。


 さらに、孵化した幼虫に自ら餌を取ってきて与える。

 なかには、自らの体を幼虫の餌にする種も存在しており、その母性愛は海よりも深い。


 今回の個体は鋏がきつく曲がっているため、間違いなくオスだ。


 私はゆっくりとテールシザーに近づく。

 すると、相手はこちらに気づき、腹部を曲げて鋏を突き出して威嚇してきた。


「どうやら、あっちはやる気満々のようじゃのぅ……さあ! あやつを倒してこい!」

「シャアアァァァァァ!」


 ミミズさんの声と同時に、テールシザーがこちらへ突進してくる!

 鋏を突き出しての攻撃だ!


 私も応じて角を構え、突き出す!


 ガキィィン!!


 鋏と角がぶつかり合い、洞窟内に激しい金属音が響いた!


 テールシザーは鋏で私の角を挟み込み、身体を大きく揺らす。

 ギチギチと、鋏が少しずつ角に食い込んでいく。


「はあぁぁっ!」


 私はそのままテールシザーの身体を持ち上げ、大きく振り回す!


 風を切る音が洞窟内に響き渡る。


 何度も振り回した末に、テールシザーはついに耐え切れず、鋏を開放。そのまま壁に激突した!


「ギ、ギギィ……」

「今だ! オラァッ!」


 私は壁に激突してひるんでいるテールシザーの腹部に角を突き刺す!


「ギシャアァァァ!?」


 さらに、腹部に突き刺さったまま、力任せに地面へと叩きつけた!

 テールシザーは全身を痙攣させ、やがて動かなくなった。


「よしっ!」


 その直後、頭の中に声が響く。


 《テールシザーを倒した。ヤタイズナはレベル2にアップした》


 レベルがある時点で察していたが、やはり敵を倒すと経験値が入るようだ。


 ミミズさんがこちらへやって来た。


「うむ! 初戦闘にしては中々よかったぞ。これからもどんどん敵を倒してゆくのじゃ!」

「ところで、この死体どうするの?」

「何を言っとるのじゃ、持って帰って食うに決まっておろう」

「え、食うのこれ!?」

「あたり前じゃ! この洞窟では貴重な食糧じゃぞ! さあ、今日はここまでにして、それを持って帰るぞ」


 そう言われ、私はテールシザーを角に乗せて運ぶことにした。


 ……そもそもカブトムシの私って、これ食べられるの? と疑問に思い、ミミズさんに尋ねると──


「魔物はだいたい雑食性じゃ」


 とのことだった。


 最深部に戻ると、スティンガーが尻尾を振って出迎えてくれた。

 私はテールシザーの身体の一部をスティンガーにあげる。


(いいの!? ありがとー! ごしゅじんだいすきー♪)


 と、お礼を言ってくれた。可愛い奴だ。


 一方ミミズさんは……


「おぬしの師匠である儂は、半分はもらう権利があるのじゃ!」


 そう言って、テールシザーの半分を持って行った。


 ……いつ師匠になったんだ? そう思いながら、私はテールシザーを食べた。


 意外と肉厚で、美味しかった。

今回は主人公の初戦闘回になりました。

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