4話 スキルの使い方
『第1回 魔王への道!〜スキルの使い方編〜!』──と、なんかいきなり始まったミミズさんの授業。
「これからおぬしにスキルの使い方を教える! 準備はよいか!」
「あのー、せんせー?」
「せんせー? ……よくわからんが、なんか心にくる響きじゃな! うむ、なんじゃ?」
「私、なんか喋れるようになったんですが……なんでですか?」
そう、ミミズさんから魔王の称号を継いでから、急に喋れるようになったのだ。
ミミズさん曰く「魔王になったことで色々と変わったんじゃよ」だそうだ。……そんなもんなのか?
それと、自分の体長がどれくらいか気になって、ミミズさんに測ってもらうことにした。
人間やいろんな生き物を見てきたミミズさんなら、きっと分かるだろう。
「お主の大きさ? そうじゃのう……儂の見立てでは、1メートル半といったところじゃな」
……やはり私は、普通のカブトムシよりも異常に大きいらしい。
ていうか、この世界ってメートル基準なんだ……まあ、分かりやすいからいいけど。
ちなみに、私の体長を基準にしてミミズさんを目測してみると、今のミミズさんは体長30センチほどだった。
「さて、何はともあれスキルの使い方を教えるぞ」
「その前に、そもそも“スキル”って何? なんでこの世界にはスキルなんてものがあるの?」
カブトムシに転生できた喜びと、ファンタジーみたいな世界に来たことで浮かれてたけど……今さらながら、ふと思った。
なぜ、この世界にはスキルが存在するのか?
スキルがあるってことは、やっぱりレベルとかも存在するんだろうか……まるでゲームみたいだ。
スキルってどこから来たんだ? 誰か強大な存在がこの世界に与えたのか、それとも──
「何故って……何故じゃろうな? スキルは儂が生まれた時から存在しておったからのう……そのようなこと、考えたこともなかったぞ」
「そっか……」
……うん、まあ、今この疑問を考えても答えは出そうにないし、いったん保留にしておこう。
「話を戻すぞ。スキルと一口に言っても千差万別あってのう、中には通常のスキルよりも強力な『エクストラスキル』、そしてその個体だけが持つ特別な能力──『ユニークスキル』が存在するのじゃ」
「へぇ〜……それで、私はどんなスキルをもらったの?」
「うむ……教えておらなんだかのう?」
「“もらってからのお楽しみ”とか言ってたけど」
「ならばちょうど良い、自分に《鑑定》のスキルを使ってみるのじゃ」
「鑑定? ……なんかそのまんまのスキルだなぁ。どうやって使うの?」
「頭の中で“鑑定”と念じるのじゃ」
言われた通りにしてみる。
《鑑定》
その言葉を頭の中で念じた瞬間、視界に文字の羅列が浮かび上がった。……これが私のステータス?
ステータス
名前:ヤタイズナ
種族:ヤマトビートル
レベル:1
称号:初心者魔王、昆虫の召喚師
属性:虫
スキル:鑑定
ユニークスキル:昆虫召喚
種族名そのまますぎる! カブトムシの部分を英語にしただけじゃん!
……いや、ツッコむべきはそこじゃない!
「“初心者魔王”ってなんだよ!?」
「当たり前じゃ。いきなり本物の魔王になれるわけがなかろう」
「いや、ミミズさんが“魔王になれ”って言ってきたんですけど!?」
「まぁ、いずれ本物の魔王になれるから心配するな。今はスキルの確認じゃ!」
そう言われて改めてステータスを見る。……あれ? スキルが二つある?
「ミミズさん、スキルが二つあるんだけど……?」
「む? 言ってなかったのう。鑑定のスキルは、最初からおぬしが持っていたものじゃぞ」
「え、そうなの?」
「うむ。最初からスキルを持って生まれてくる者もおるのじゃ。おぬしの場合は《鑑定》だった、ということじゃな」
「へ〜……あれ? でもなんでミミズさんは、私が鑑定のスキルを持ってるって分かったの?」
「儂の生み出した者たちの大半は持っておったからのう。まあ、おぬしも持っておるだろうと思って言っただけじゃ」
……つまり、分かってたんじゃなくて、ただの当てずっぽうだったわけね。
「あ、じゃあミミズさんに《鑑定》使ってみてもいい?」
「ふ……よかろう。我が力を見て驚くでないぞ?」
ミミズさんを見つめながら、鑑定を発動する。
「こ、これは──!?」
「ふふん、どうじゃ? 今の儂のステータスは? 申してみるがよい!」
私は、見えたステータスをそのまま伝えた。
ステータス
名前:ミミズさん
種族:エンペラーワーム
レベル:1
称号:元魔王(笑)
属性:虫
スキル:分裂
エクストラスキル:全属性耐性EX、物理耐性EX
ユニークスキル:穴掘り(あなほり)の神
「“(笑)”ってなんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ミミズさんの叫び声は、洞窟中にこだましたという──。