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2話 説明

 今の状況をまとめよう。


 目覚めた → カブトムシになっていた → 目の前にミミズの化け物 → そのミミズが魔王 ← 今ここ。


 ……魔王?


 え? 今このミミズ、なんて言った? 魔王? いやいや、こいつが?

 私が黙ったままミミズの化け物を見上げていると、そいつは高笑いしながら上機嫌に話し始めた。


「フハハハハハハ! どうやら儂に恐れおののいているようじゃな! まあ無理もない、儂を見て恐怖を感じぬ者などおらぬからのう!」


「キ……」(な……)


 私は思わず本音を口に出してしまった。


「……キュキュイキュキュー……」(……なんか微妙……)

「な、なんじゃと!!」


 ミミズの化け物がショックを受けていた。


「お、おぬし今なんと言った!? 微妙じゃと!? この儂が魔王であることを“微妙”と申したか!?」


 驚愕の表情でこちらを凝視してくる。


「キュキュ、キュキュイキュー……」(いや、だってさあ……)


 魔王って言ったらさ、普通は魔人とかドラゴンとか、そういうの想像するじゃない?


 なのに、いきなり巨大なミミズが「魔王です」とか言われても、そりゃ微妙って思うでしょうが。他に感想が浮かばないんだよ。


 すると、ミミズの化け物はぶつぶつと文句を言い始めた。


「び、微妙……そんなこと言われたの初めてじゃ……儂、魔王じゃぞ? 普通なら恐れるものじゃろうが……なのに……こやつは恐れるどころか“微妙”などと……! こ、こんな馬鹿なことが……」


 ……なんか、めっちゃ落ち込んでるんだけど。私、そんなに悪いこと言ったかな……?


「キュー……」(あのー……)


 話しかけると、ハッとしたようにこちらを向き、怒鳴ってきた。


「お、おぬし! なぜビビらんのじゃ!? 儂は魔王じゃぞ、魔王! もっとこう……“う、うわぁぁー!”とか叫んで逃げたりするのが普通じゃろうが! なのに……なのに……儂を見て“微妙”とは何じゃ、“微妙”とは!!」

「……キュキュイキュー」(……まあ、そんなことはは置いといてさー)


 私が話を続けると、ミミズの化け物はさらに驚いた様子を見せた。


「そ、そんなことは!? お、おぬし、儂がこんなにも悩んでいるというのに“そんなこと”とは……おぬしには人の心がないのか!?」


 いや、今の私は虫なんですけど……。


「キュキュイキュ?」(ここはいったいどこなの?)

「む、そうじゃった……話が変な方向に逸れておったわ……」


 ミミズの化け物は一度咳払いをして、ようやく説明を始めた。


「ここはランド大樹海の地下洞窟、その最深部じゃ」

「キュキュキュイ?」(ランド大樹海?)


 聞いたことない。やっぱり、ここは異世界ってことか……。


「そして、おぬしは儂がここで生み出したのじゃ」


 ……は? このミミズが私を生んだ? ってことは……このミミズが私のお母さん!?


「違うわ、このたわけ! 儂のスキルを使って作り出した卵からおぬしが生まれたのじゃ! 直接産んだわけではないわ!」


 スキル? ていうか、なんで私が喋ってもないのに言いたいことが伝わってるの?


「スキルでおぬしの頭の中を読んだのじゃよ」


 頭の中を読んだ!? ……ってことは、つまり!?


「うむ、おぬしの考えることは儂にダダ漏れじゃぞ?」


 い、いやぁぁぁぁぁ!! 


 は、恥ずかしいっ! つまり、さっきのカブトムシになったことに狂喜乱舞してたのとかぜんぶ丸聞こえってこと!?

 嗚呼……穴があったら入りたい……。


 私が頭を抱えて悶えていると。


「……いろいろと忙しい奴じゃな……話を続けてよいか?」


 あ、はいどうぞどうぞ!

 私は必死に思考を切り替えて、話に耳を傾けることにした。


 魔蟲王ヤタイズナ……以降、ミミズさんと呼ぶことで良いとして。


「よくないわ!!」


 ……まあ、それはさておき、ミミズさんはこの世界のことをいろいろと教えてくれた。


 まず、私が今いるのはジェラルド大陸というらしい。

 この大陸には、人間のほか、エルフ、ドワーフ、獣人といった多種多様な種族が存在していた。

 その中には“蟲人”と呼ばれる種族もいたらしい。


 ミミズさん曰く「我が同胞のくせに人間に味方した愚かな種族よ!」とのこと。


 千年前、この大陸で“人族と蟲族の大戦争”が起きた。

 その原因を作ったのも、実はミミズさんだったという。


「暇つぶしに遊んでたら、国が滅んでおったわ!」らしい。


 当然それが火種になり、「蟲は敵だ! 滅ぼせ!」という人間たちの声が高まり、ついに全面戦争へ。


 戦争は百年にわたって続き、当初はミミズさんの召喚能力により蟲たちが圧倒的優勢だった。

 スキルで次から次へと蟲を召喚できるので、人間側はどんどん追い詰められていった。


 だが、二百年目を目前にして、ついに状況が変わる。

 ――六人の勇者の登場である。


 エルフ、ドワーフ、獣人、そして裏切り者の蟲人を含む“種族大連合”が結成され、戦況は逆転。

 勇者たちは炎魔法で次々とミミズさんのしもべを焼き尽くしていった。


 戦争はついに二百十年目、勇者たちによってミミズさんが倒されたことで幕を閉じる。


「儂を倒すとは全く見事な奴らじゃったわ!」


 その後、連合軍は勝利を祝して一週間の宴を開いたが、その直後――

 蟲人たちは「用済み」として処刑され、絶滅してしまったらしい。


「人間に味方するからこうなるのじゃ!」とミミズさんは憤っていた。


 そして戦争終結から九十年後、ミミズさんは再生スキルにより復活。

 体の一部が残っていれば再生できるらしい。


「ふふん、すごいじゃろ!」


 ……でも、復活直後のサイズはたったの二メートル。

 元の巨大サイズに戻るまで五百年もかかったそうだ。


 復活したものの、部下もいないミミズさんは寂しかったらしい。


「べ、別に寂しくなんてなかったわ!」


 いや、絶対寂しかったよねそれ。


 その後、スキルでしもべを召喚しようとしたが――何かがおかしかった。


 召喚される蟲たちは知能が低く、命令すら理解しなかったのだ。

 どれだけ繰り返しても、まともに意思疎通できる者は一匹も現れなかった。


 そして二百年が過ぎた今日――

 ついに知性ある蟲、つまり“私”が誕生した、というわけ。


「苦節二百年……やっと、やっと成功したのじゃ! ……だがしかし、おぬしは儂を恐れず、あまつさえ“微妙”などと言いよったのじゃ!」


 ああ……ごめん、ほんとごめんって……!


「だがそのような事はこの際どうでもよい! おぬしに頼みたいことがあるのじゃ!」


 私に? 首を傾げると、ミミズさんはこう言った。


「うむ、おぬしに儂の跡を継ぎ、新たな魔王になってもらいたいのじゃ!!」


 ……はいぃぃ!?

説明がながくなってしまいました。

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