幕間・・・休日
時に、俺はこの世界の『ライトノベル』ってヤツが好きだ。
あちらでは紙媒体なんてのは王侯貴族やそれなりに裕福な商人位しか扱わない超高級品だった。
それがこちらでは紙なんて当たり前で、更に時代遅れとまで言われている。
主流はホロディスプレイとかいう空中投影された画面表示。
技術の格差がシャレにも出来ない・・・。
過ぎた技術は魔法と同じって言葉を聞いた事があるが、あれはマジだな。
とにかく、そんな紙を惜しげもなく使ったこの娯楽小説が好きなのである。
それにこれらの主人公はあらゆる困難にも挫けずにハッピーエンドに至る事がほとんどだ。
なんかこう、俺もそんな生き方出来るのかも・・・!とか空想できてしまうのがいい。
特にお気に入りなのは主人公が異世界に召喚されて使い魔にされて、魔力がゼロなツンデレ主とか可愛いメイドとかとアレコレあったりするヤツだ。
なんか親近感が湧くのだ。
いや、俺は使い魔の気持ちとかは判らんが。
でも異世界で苦労している彼に感情移入してしまったのだ。
仕方ないだろう・・・。
俺には一応研究員という立場があるので多少の収入がある。
それの大半は食事や宿舎の家賃になるのだが、それ以外にはラノベにしか遣っていない。
おかげで、未読既読を問わなければ500冊程度の蔵書になっていたりする。
恐らく、たかが元農夫風情でこれ程の書物を持っているのは俺だけだろう。
村の友人たちの中には本を読んでみたいという奴らも居た。
そいつらを思うと少し胸が締め付けられるような感じがするが・・・。
まあ・・・そこは割り切るしかない。
今の俺にはどうにも出来ないし、悲しんでみても何も変わらない。
この趣味のおかげでこちらにも友人が出来た事だしな。
研究部署は違うが、色々と相談に乗ってもらっている男で常々おかしな言動をしている。
例えば
「俺は嫁が200人居る。二次元の中限定だが」
とか
「俺がこの研究所に居るのは二次元に渡る方法を確立する為だ」
とかの手遅れ感の激しい奴である。
まあそんな奴なのであちらが次元すらも隔てた世界かも分からんから相談出来ているのだ。
・・・でも可愛いよな、二次元の女の子。
ちなみにこの原稿を読んでしまったとある女性研究員からの視線が恐ろしく冷たくなったのは言うまでもない。