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第一話 非日常って、やっぱり怖い。

あけましておめでとうございます。

新年早々、何出しているんだ私……

こちらも亀更新になるかもしれません。ストックが少ないので……

 皆は知っているだろうか。

 世の中には、いろんな属性を持つ女の子がいる。

 例えばドジっ子という属性。

 あれは物事がうまく行かず、何もないところでこけたり、何かの拍子でモノを壊したり、とにかく謝りまくる等をする子の属性である。

 しかし、その中には危険な属性の子もいる。

 例えば――――――――――――ヤンデレ

 あの属性は好きな人に引っ付く同性を殺そうとしたり、好きな人自体を冷たいモノに変えたりする、恐ろしい属性なのだ。

 しかし、重たい愛ゆえに好きだという人も、中にはいる。

 そのうちの一人が俺、政田(まさだ) 吉延(よしのぶ)である。

 エロゲを購入し、どっぷりハマったのだ。選択肢一つで画面が赤く、いや紅く染まるが、その子の一言一言がとても重たく、異性から愛されたことのない、いや、オカンとかには……あれは家族愛か。ともかく、愛されたことのない俺には、とても響いたのだ。

 それ故に、現実にはいまいと思っていた。油断していた……。


「お、落ちつけよ……な?」

「ふふふ……」


 目の前に居る女子は、俺に向けて包丁を振るう。斜め上から反対側の斜め下へ。綺麗に、一直線に斬りかかる。俺はそれをバックステップで避けると、瞬時に体の向きを反転し、走り出す。ああ、何でこんな目に……っ! とそう思い、こうなった経緯を思い出した―――



             ◆



 エロゲを毎朝七時に飯を食いながらやるのが日課である。というのも、うちの学校は幸か不幸か女子の顔のレベルが高く、とても可愛い子ぞろいである。が、恋愛に発展することのない俺にとっては、お店に売っている非売品の超高級な品物の如き存在であるため、ただ新たなカップルが生まれる瞬間を見ることしかできないのだ。だからこそ、恋愛シュミレーションゲームであるいろんなエロゲに手を出している。

 そうして、あのつまらない学校に行く前に怒りを収めていた。そして八時に家を出る。築三十年のボロイアパートのドアは、開けて閉めるのに約一分はかかる。鍵をかけた後は、二階に住んでいるため、滑って階段を下りることのないように、ゆっくり下りる。八時三分、アパートの敷地内から出る。そして、商店街の、あの人だかりを歩き進めば学校は目と鼻の先である。校門にたどりつくと、時計塔があり、その時計の短い針は八時を、長い針は六時を指している。(学校で、ホームルームが始まるのは四十分からなので、十分間に合っている)教室棟の一階、その廊下の一番端にある教室が俺の教室であり、つまらない学校生活を送る場に到着。

 とまあ、こういった経路で俺は登校している。

 しかし、その日は違った。俺がいつものようにエロゲで恋愛成分を補充し、ほっこりとしたまま八時に出た時だ。なんと、すんなり扉が開き、閉めることも普通の扉のように閉まったのだ。そう、この時点で何かおかしかったのだ(勘違い)。そして階段はエロゲの事で胸いっぱい、頭の中もいっぱいだったのだが、意識せず普通(・・)に降りていたのだ。滑ることもなかったし、これは奇跡と行っても過言ではない(勘違い)。敷地内を出るのに時間がかからず、スムーズにいけたことを登校の途中で気付き、ニヤケ顔になった。その時の俺はこう思っていただろう。


 今日はついている! 何かいいことがあるに違いない! きっとこれは神様からの良いイベントがあるとのお告げなんだ!


 と。

 しかし、現実は違った。神様なんていなかったんだ。

 気分が良くなった俺は、久しぶりに商店街からではなく、裏路地から行くことにした。そして、曲がり角を通りがかった時、その子は現れた。しかし、走っていたその子は、急に出てきた俺と衝突し、俺の上半身に倒れ込んだ。


「きゃっ」

「どわっ」


 漫画みたいなシチュエーションに俺の気分は最高潮、それに加え、その子の髪は日本人特有の黒色で、シャンプーのいい香りがするという、テンションの上がる特典が付いてきた。ああ、もう、なんて運命的な出会いなんだ……。と思いつつ、紳士スマイルをして、その子に質問する。


「だ、大丈夫ですか?」

「……ふっ」

「?」

「ふふふ、あはははははは」


 ……急にどうした。何か笑いだしおったぞ。え? 何? このコこんな子なの? 少し戸惑いつつ彼女を見る。顔は整っており、鼻はスッと、口は小さく、目はパッチリ……美少女だ。しかし、目に光が無い。受け付けないかの如く、漆黒である。とてつもなく怖いよこの子。え、どうすればいいの? そう思いつつ声をかける。


「あの~……」

「……あの人が悪いのよ……あなたも悪いのよ……」

「……あ~……スイマセン。前方不注意でした。」


 何か悪いことしたな見たいな感じで見られたので、一応心当たりのあることを謝罪する。しかし、彼女は無視して堕ちた鞄に向かう。えと、制服からして、彼女は俺の学校の生徒っぽいな……。黒色を基本に、所々緑色のラインが通り、ネクタイは赤色、スカートは深緑のチェック柄だ。しかし、こんな子は俺のクラスにはいない。はて、どこのクラスの子だ? と考えつつ、何かブツブツつぶやきながら、鞄をまさぐる彼女の行動を見る。取り出したのは、筆箱。しかし、目的のものとは違うのか、床に置き、まさぐる。


「あの、そろそろ行っていいですか?」

「……ぶつぶつ……」


 ……はい、無視ですね。分かります。腕時計をちらりと見ると八時二十分を指している。おい、早くして! 俺、学校に遅刻する! してしまう!


「……あの~ヒッ!」

「……ふふ、ふ」


 凄い声を上げたな、お前。と思った方は、是非今起こっているシチュエーションを体験してみてやがれです。何しろ、あの鞄から出てきたのは、光沢を持った金属の一種であり、日常生活には欠かせなくて、地球の半分以上はそれが多いという、鉄で造られたものであり、先は尖り、正面から見ると逆三角形のような形をしているそれは、鋭利な刃物の中でとても有名な包丁だったのだ。どんな人でも驚くわ。

 彼女はそれを右手で持ち、上に上げると、俺から見て右上から左下に振り下ろした。俺に向けて。


「危ないっ! ちょ、落ち着いて! あぶっ! し、死んじゃうから! 俺、それで斬られると死んで舞うから!」

「あはははははははははははははは!」



               ◆



 そして冒頭に戻る。俺は裏路地を全力疾走なう。ツ〇ッタ―だったら、どんな反応が来るだろうか。そんなことを考えて、現実逃避しつつ、そこらに散らばる空き缶やゴミ箱を飛び越える。今の俺は陸上選手も真っ青なくらいに早い……と自負したい。実際はそんな気がするだけ。


「はぁっはぁっし、死ねる! って何でそんなに早いんだ! 止めて! もう俺のライフはとっくに零ですから!」

「死んじゃえ……」

「恐っ! お前はスクールデ〇ズのヒロインか!」

「……?」

「なんだよ! 怖ぇー目しながら、しかも追いかけながら首をこてんって傾けんなよ! 可愛いじゃねえかこん畜生!」

「え?」

「むしろ俺の首がこてんするわぁ!」


 何言っちゃってんのぉぉお! 俺! どうやら極地に立たされた俺は、思ったことを言葉として言ってしまうようだ。

 しかし、この言葉は彼女に何かしらの影響を与えたのか、足を止めるのに成功した。良し! これで勝つる! と思った俺は、全力で裏路地を抜けだし、走って学校へと向かうのであった。



   ※



「はい、遅刻。」

「ぜぇ……ぜぇ……し、死んでしまうかと、思ったのに……それは、無いっすよ、先生……」

「あ、倒れた。」

『あははははは!』


 先生に訳を話せることはできず、ついに力尽きた俺は、ここ、一年F組の床とチッスをする。すると教室が爆笑の渦に包まれた。何とか這いつくばって一番後ろの扉に近い自席に戻ると、隣の席の春風(はるかぜ) (すすむ)が声をかけてきた。


「おいっす、(きち)さん。今日は珍しく遅刻ですかい?」

「ああ、はっちゃん。遅刻しちまったぜ……」


 はっちゃんとは、勿論進の事だ。こいつはどちらかというと、イケメンな部類に加われるくらい整った顔立ちである。が、二次元にしか興味が無いという、残念な性格の持ち主であるため、モテないのだ。ファッションのセンスもとてつもなく良く、黙っていればいくらでも女子を囲っていられるのにひとたび口を開けば、


「あ、そういやフェルにゃんは可愛かったろ?」

「……あ、ああ。あの性格はとてつもなく可愛かった。」


 エロゲのヒロインの話へと変えるのだ。因みに、こいつからエロゲを借りたりすることはある。とまあ、これが進という男で、何とも救えない男である。


「あ、そうだ吉さん。」

「ん?」

「今日まで休んでた橋本さんが来るんだってさ」

「へぇ~」

「三次元には興味ないけど、橋本さんって可愛いらしいぞ~」

「ほぉ~……つまりは、あれか……」

「そう、また我等の敵が増えるということだ……」


 ふっと哀愁を誘う笑みを二人でする。チラリと見えたが、廊下に居る国語の山野(やまの)先生がなんかこっち見てあたふたしていた。担任は……言うまでもなくスルーである。気がつくと、担任はちょっと大きめな声で「はい注目~」といい、クラスの皆の視線を前へと向けさせる。なんとも上手い手段だ。俺も同じく前を向き、しかし哀愁は漂わせて、注目する。


「え~、今日まで休んでいた橋本さんが、なんと、帰ってきました~ハイ拍手。」

「先生~、橋本さんは女子? それとも男子ですか?」

「女の子です」

『よっしゃっ!』


 男が! 男が一致団結してる! よく見るとあいつらは、俺達【悲しみの㊚達】という、もてない男子限定の連合軍に、加わっている奴らだった。ああ、卒業したいんだな……同志達よ……。

 期待に期待を重ね、俺たち男のテンションは最高潮。五月だというのにココはもう真夏の如き暑さであった。男子全員の心音が聞こえるくらいにシンと静かになり、その時が来た。ガラリラと扉が開くと、髪の毛は日本人特有の黒色で、鼻はスっと、口はちいさく、目は……って!


「……橋本 波留(はる)です……」


 その女子は、朝、俺を襲ったあの子で、少し顔を赤く染めながらもじもじと自己紹介をした。俺? ああ、俺はと言うと、


「おい、しっかりしろ吉さん! 頬の肉が消えて皮が骨とくっついたような顔になっているぞ!」


 まあ、あんなことが起きた後じゃぁ、こうなるに決まっているだろう。こうして、俺の人生のルートが大きく修正されたのだった。

誤字脱字誤文誤った表現などありましたら連絡をください!

今年もよろしくお願いします。

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