春が来れば
雪がまだ残る庭に息子はしゃがみ込んでいた。
「おかあさん。僕ね、いいこと聞いちゃった」
「どんなこと?」
そばに寄って頭を撫でると、幼い顔が嬉しそうに笑った。ようやく元気を取り戻した様子だ。
「動物ってね。冬になると眠くなるんだって。ぐっすり寝ちゃうから、呼んでも返事をしてくれないんだ」
雪の窪みに子犬が横たわっていた。ペットフードの袋が添えてある。
「だから、ゴンが好きなご飯と一緒に埋めるの」
息子の目は昨日からずっと赤かった。
「春には起きてくれるよね?」
冷たい手を握り締めて抱き寄せることしかできなかった。