人材を探して
森の道の中に光の柱が立つ。地面に魔法が刻み込まれ、光が消えて中からティンが降り立つ。ポケットから携帯電話を取り出してピッピッと動かして耳に押し当てた。
「で、言われた通りに村まで来たけど宿屋に行きば良いの?」
『ええ、その村に居る魔導師を回収してください。行き先は伝えたとおりに、後はメイドたちがやりますわ。金銭的に足りないなら直ぐに連絡を、お金の問題なら私が何とか致します』
「分かった」
電話から聞こえるラルシアの声にそう答えると携帯をしまってティンは近くの村へと入っていく。村に入るとまず探すは本来の目的である宿屋を見つけ出して入っていく。
「あのーすいません。イヴァーライルの者なんですが」
「んー? イヴァーライル?」
宿屋のカウンターに立つおっさんは何か用かと言わんばかりの声を出す。ティンは困ったような表情を浮かべると。
「えっとー、ここに住んでるいや宿泊してる? 魔導師を引き取りに来たんですが」
「おおーあんたか、聞いてるよ。ちょっと待ってな」
おっさんはそう言うと何やらカウンターの向こうにある装置のボタンを弄り始める。
「おい、来たぞ」
『ほーい』
機械から通したような気の抜けたそんな声がティンの耳に届く。すると近くの階段から足音が近づいて来るとローブを羽織った男性がやって来た。
「うーっす……って、うお!? 何処の騎士さんだよあんた!?」
「何だって良いだろうが。手前みたいなごくつぶしを拾ってくれるってんだ、ありがてえと思いやがれ」
おっさんは溜息混じりにそんな台詞を漏らすと男はちゃらけた様子で。
「ひっでえなー、金は払ってるし村にも奉仕活動しまくってるじゃんかよー」
「まあ、この村が発展出来たのもお前さんが居たからだけどな。その辺は感謝するが、部屋がずっとうまりっぱなしってのは……と、お前さんにゃわかんねえか」
と、置いてけぼりを食らっていたティンは此処で漸く反応した。
「えっと……?」
「おお、悪いなお嬢ちゃん。引き取りてえってんなら好きにしな、そんなふらつきもんでも魔導師だ。なんかの役には立つだろうさ」
「ひっでえなおっちゃーん。俺の魔法が無けりゃこの宿屋もオンボロのまんまなんだったんだぜ?」
「そりゃ手前何年前の話だよ。ったく、あれから十年近くも寄生しやがって、手前のお陰で潰れた儲け話が幾つあると思ってんだ」
舌を打ちながらおっさんは苛立たしげに男を睨みつける。男は飄々とした感じで流すと。
「いーじゃんか、こんな寂れた村に定期的にお小遣いくれるうえに寄生してくれた奴のおかげでこの宿屋が持ったのは紛れもない事実だろ?」
「手前のお陰で稼げるときに稼げなかった時の方が多かったがな」
「世の中、安定が一番さ」
「ふらつきもんの魔導師がよく言うぜ」
そう言うと魔導師は先に外に出た。やっとティンは。
「あの、お金は」
「いらねえよんなもん。さっさと行っちまえ」
言われたティンは取り付く島も無いと感じたのか、そそくさと出て行く。外には暇そうにしていた男が。
「んで、可愛い騎士さん。俺を何処に連れてってくれるんだい?」
「んーあんた、何の魔法が使えるの?」
「俺の属性? 命」
「命かー命でこの村の発展させたの?」
「おうよ、この辺結構いい木の実とか生える木が多くてな、俺がちょちょいっと弄ったりすりゃ見事な名産物に大変身ってな」
男は笑いながらそう説明する。ティンは一先ずはとラルシアに渡された魔法陣を取り出して起動させる。
あっと言う間に二人は別の街に転移する。
「へえ、まさか転移術式を持ってるたあ驚きだ。あんた何もんだ?」
「ん? えっと、魔法大学作るから魔導師を集めてるんだけど」
「ってーと大学の構成員集めってことか? なるほどね、でどんな田舎の大学だよ、宿屋とまりの魔導師を集めてるなんて」
「えっと、イヴァーライル」
男は一瞬にして固まる。そしてティンに視線を合わせると。
「あの、イヴァーライルって、あの呪われていたって、言う?」
「まーうん、呪いは解かれてるから大丈夫だと思う」
「え、えええええっ!? うっそマジかよ!? 俺、これからどうなるんだ……?」
男は路頭に迷ったと言わんばかりに項垂れた様子で立ち尽くす。ティンは取り合えず指定されていたホテルに男を連れて行くと見覚えのあるメイドが待ち構えていた。
「後の事はお任せください、ティン殿」
「うん、お願い。次は何処に行けばいいの?」
「いえ、今日はもう良いとのことです。ティン殿には城で待機して欲しいとの事でございます」
「分かった。じゃあお願い」
ティンはメイドに返事すると振り向いて男に視線を向ける。
「後はこの人の指示に従って」
「あいよ……って、俺メイド見んの地味に初めてだ!?」
男がそう言って驚いてる様子を置いてティンは懐から転移術式を取り出して起動させた。デルレオンの公爵館を想像しながら光に包まれて目の前が白で塗りつぶされ、不思議な浮遊感を味わう。そして気付けばティンはホテルのロビーから豪華なお城の中に立っていた。
「たーだいまー」
「ああ、ティンさんお帰りなさい」
近くでそんな声が出る。首を動かせば洗濯籠を抱えた女性がティンに向けて頭を下げていた。一先ずラルシアに報告しようかと思って一歩踏み出すと。
「あ、ラルシアさんなら仕事に行っちゃっていませんよ」
「あ、そうなんだ。じゃーどうしようか」
「でもディレーヌさんがティンさんが帰って来たら呼んでくれって言っていましたよ?」
「分かった」
「その必要は無いわ」
更に後ろから声がかかる。振り返るとにこやかな笑顔を浮かべたディレーヌが立っていた。
「おかえり、ティンちゃん。報告ならメイドからさっき電話を受けたから平気よ」
「あ、はい。よかったーで、用事って?」
「ええ、ちょっと付いて来て」
言われたティンはディレーヌ連れられてある部屋に入っていく。
「ねえティンちゃん。ティンちゃんってどのぐらいの魔法が使えるの?」
「え、何を急に」
「ちょっと気になってね。どれぐらい魔法が使えるのかって」
言われてティンは今までの魔法を使った軌跡を思い出していく。
「ええと……光の床を作ったり光を爆発させてすっ飛ぶとか、出来ると思うけど」
「んー大体DからCか……まあそれだけ使えれば十分ね。ねえ、もっと高位ランクの魔法を使って見たいと思ったことはある?」
ティンは唐突に言われてぽかんとしてしまう。一歩遅れて。
「え、え? どういうこと?」
「最近カーメルイア社の術式開発部で出来たものなんだけどね」
そう言いながらディレーヌは幾つものノートの切れ端を取り出す。そのどれにも一つ一つ違う魔法陣を書かれている。
「全部光属性の術式でね。体を光子に変化させて速度を上げる術式よ。片方が光の力で速度を上昇させるもの、もう片方が体を光に変化させて速度の変化に体を合わせるもの。速度を上げて過ぎてしまうと幾ら魔力の加護を持ってしても空気の壁と言うものにぶつかると体が細切れになってしまう。だからこの光に変化させる術式を使う必要があるの」
「えーっと?」
ディレーヌの解説をボーっと聞いてたティンはそんな言葉を投げる。ディレーヌは微笑みながら。
「まあこんな長い話聞かされてもよく分からないでしょうから要点だけを伝えるわね。この術式、ティンちゃんに使って見て欲しいの」
「何であたし?」
「丁度いい実験対象が欲しかったから。ティンちゃんの魔力総量が半端ない事は聞いてるわ。この術式、流石にものがものだけに消費力が高くて実験が上手くいかないようでね。うちの娘は流石に女王だから実験には参加出来ないようだし、だから」
「あたし、か」
「うん、そう。蓋を開けるととても酷い理由だけど」
そう言いながらディレーヌは笑みを苦笑いを漏らす。ティンは納得して頷くと。
「分かった、じゃあ貰って置くよ」
「あら、そんなに簡単で良いの? 一応これは仕事として雇う事になるからしっかりお金を払うけど」
「うん。何か面白そうだし、ディレーヌさんならあたしになんかの可能性を見たって事だよね? だからくれるって事だよね? なら貰って置くよ」
「ふむ、確りとしてるわねえ。じゃあお願いね? あ、他にも術式を渡しておくか。使い方は後で教えるわね」
ディレーヌはそう言いながら柔らかく微笑んだ。
んじゃ、また。




