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好きにしろ(仮)外伝:神剣の舞手  作者: やー
漢達の宴――謡え、野郎共の狂詩曲
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用事は手短に

「さて、そろそろか」

 数貴は徐に呟いて周囲を見渡して。

「格摩とお兄さんはあの機械越しから左右で突撃、剣人とビリーと氷牙と銃使いは左右のほうへ、残りは真正面だ」

「おい、行き成り何を」

「格摩、速くしろ! 遅れるともう二人が敵陣のど真ん中から突撃してくる!」

 突如、人が変わったかのように真面目な表情で数貴が周囲に指示を送る。先程までの呆けたような口調と様子が一切合財切り替えて、なので格摩だけが困惑する。

「って待て待て! 何でお前あいつら二人の動向が分かるんだ!?」

「説明は後だ、さっさと行きやがれ!」

「おい行くぞ格摩! 数貴が指示を出したんだ、俺らは大体こいつの言うとおりにしてりゃいつも勝ってたろ!?」

 数貴に便乗して氷牙が格摩をあおった。それを聞いて当人は。

「ああもうわぁったよ! 行きやいいんだろ行きゃ!」

「格摩、タイミング合わせるぞ!」

 覚悟を決め、武旋の言葉に従って格摩は配置について聞き耳を地面に向ける。此方に向かって来る靴の音、疎らだけでかつ一斉に向かって来る人の群れ。そして。

「行くぞッ!」

「おうッ!」

 二人は一気に飛び出して前方に攻撃を開始する。更に左右からも三人と銃撃が飛び出していく。

 格摩は槍を、と言うより銃剣を突き出して弾幕を背に突っ込んでくる一行を前に拳一つで立ち向かう。一見して誰もが感じ取れる無謀感、だがそれは前に突き出した拳が下に向けられ直撃した瞬間に反転する。

 地面が抉れ、構えた槍が盛り上がった地面に食い込んでそれ故に足が止まり、そこから、その地面が砕けて中から格摩の拳がそのまま敵部隊の顔面に突き刺さる。

 一人殴り飛ばし、次に回し蹴り更に裏拳と次々と敵兵士を薙ぎ払い、その直後。

「此処かぁッ格摩ぁッ!?」

 扉を蹴っ飛ば――もとい、重力爆破で何もかも吹き飛ばしながら関哉が部屋の中へと突撃してくる。その背後には皐も一緒だが格摩は何よりも。

「せ、関哉!? お前なんで、此処にッ!?」

「なるほど、やはりそうか」

 格摩は目を見開いて目の前の状況に驚き、武旋は寧ろ確信に満ちた何かを感じ取る。寧ろ関哉はこの、敵だらけの状況から格摩が自分に向かってくるという絵面に。

「お、おい、こりゃどう言う状況だ? 何で格摩がそっちから来る……のは良いけど、こりゃ一体全体」

「話は後だ、こいつらを挟み撃ちに――なっ!?」

 関哉と即席の作戦の打ち合わせの途中で、格摩は絶句する。何故なら――


 脳裏に浮かぶ。

 口端をゆがめ笑う。

 ペテン師の、顔。


「数貴手前ええええええええええええええええええええええッッ!!」


 鋼鉄の像越しから放り込まれた、無数の水素ボンベ爆弾。つまる所、彼にとってさっきの台詞はただの。


 乾いた鉄の落下音が響き、それに釣られた兵士達は全員まとめて動きを止める。何故かと言えば、もう理由をいう必要は何処にあるのかと問いたくなる勢いで。

 次々と爆発が巻き起こり、直後更なる異変を感じ取った格摩は即座に二人の壁になるように立ちはだかり、同時に岩の壁を展開して構えてその壁に幾つも細かい衝撃が走るの感じ取る。

「野郎、あの詐欺師が……ッ!」

「お、おい、何が……」

「あの、戦況を教えて下さい。即座に私が」

「動くなッ! 下手に動いたら」

「そうそ、下手に動くなよ? 俺は」

 声が響くと同時、更なる軽い金属の落下音。

「味方殺しに躊躇しない事に定評がある」

 同時、また爆音と無数の何かが撃ち出されて壁に埋め込まれる音、更に撃たれて呻く人間たちの声。そして音がやむと同時に格摩は顔を覗かせる。

 果たして何があったのか、と言えば。

 まず爆炎とマメ鉄砲で全身撃ち抜かれて倒れ伏す魔王残党軍達に、何故か平然としている武旋。そしてにたにたと笑いながらゆっくりと登場する、愉快なペテン師。

「やあ格摩君、無事ぃ~?」

「この野郎……ッ! 俺や兄さんごと、下手すりゃ関哉や皐もふっとばすきだったのかよ!?」

「えー? そんなの知らん。それにそれこそ俺をよく知ってるお前がフォローすりゃいいだろうが」

 数貴はけたけたと、何時か言ったような台詞をもう一度口にする。そう、格摩はこの男の本質を忘れていた。その本質、忘れてはいけないこの男の実体と正体とそのあり方。それについて名を呼ぶと言うのなら正しく。

 嘘吐き。正に之で済む。

 ペテン師にして嘘吐きにして詐欺師にして虚言回し。そうだ忘れてはいけないし、勘違いもいけない。この男の吐く噓は何時だって秀逸かつ的確、まるでそれこそが真実であるかのように立ち回る。

 軍師? 否、断じて否。何処の世界に味方に法螺吹き込んで纏めて潰そうとする奴が居るというのだ。

「この野郎……ッ! 関哉がこっちに向かってるってのも適当に吹いていやがったな!?」

「そう怒るな。ああでも言わなけりゃお前は直ぐには動かなかっただろうし、こいつが単独で動いてたってことはつまりこの砦の中に自分の魔力をばら撒いたって事だろ?」

「……は?」

 と、激怒していた格摩は途中で面くらい、そこに水純が。

「まあ、流石にそれくらいしていなければ一体何の為に先行してたんですかと聞きたくなりますしね」

「んじゃ答え合わせ――おい、そこの大剣担いでる人ー右肩を触ってみ?」

「え、俺? ま、いーけど……え、一寸待て!?」

 関哉は数貴のいうとおりの行動を取り、逆に驚いた。何故ならば、言われた場所には何か、ボタンの様な物が付属され居て。

「おい待てこりゃ一体なんだ!?」

「え、発信機」

「さらりと言ってのけるなしかも発信レーダーも見せるなよ!?」

 と、関哉が突っ込むのもお構い無しに数貴はピコンピコンとなるレーダーまで取り出した。さあ、此処でクエスチョン1。

「どれが事実でしょうか?」

「本人が聞くなよ!」

「正解は当てずっぽうですが、何か?」

「聞いてねえよ!」

 格摩はもう何かに疲れたように数貴に怒鳴りつけた。が、言われた当人は上を見上げて。

「んで、雑魚かたした訳だけどどーすんのおっさん」

 未だに上からこちらを見下ろす残党軍首領に向けて問いを投げる。

「この程度で全滅と? 舐めてもらっては困るな」

「おいおい、舐めてんのはそっちだろうが」

 ぱちんと指の音がなり、それと同時に幾つかの物音、結果として再び静寂が訪れる。

「この程度の増援でどうにか出来る俺らだとおもってんのか?」

「なるほど然り、流石は大魔王様を撃退出来る者達だ」

「あのさあ……この鉄屑が飾りじゃねえんならさっさと動かせや。動かせるんならよ」

 言って数貴は中央に居座る鉄の塊をけりつける。

「どう言うことだ、数貴」

「そんな決まってんだろうよ、格摩君。どうしてさっきからこんなど派手にドンパチってるのに何で之を持ってこないんだ? こいつ動かせば俺らなんてもっと軽く終るだろうが」

「言って良いのかよそれ」

「やらねえんだからいってやれ」

 そう言って数貴は上を見上げて挑発するように指摘を続ける。

「でどーなのよ? 動くのうごかねえの? 動かないなら、どうなるか分かってるよな?」

「そうか……では、止むを得ないな」

 再び響く指の弾ける音、そして直後に鉄屑人形の真上に黒い外套の人間が立つ。

「あ、あいつはさっきの!」

「首領ではなかったのですか」

 その人間は鉄屑の中に潜り込むと同時、鉄人形の天辺に二つの光が宿り、同時に中央の砦から人が出て行くような足音まで聞こえてくる。やがて鋼鉄の巨人が立ち上がり、中央砦の壁を薙ぎ払い始める。

「……え?」

 誰が言ったのか、そんな声が何処からか漏れる。何故か、と言えばそれはそうだろう、バトルフィールドとも言えるこの中央砦を崩し始めたのだ。それも自分からだ、驚くなと言うのも無理はなく。

 数分後、中央砦は――いや、砦の中央部そのものが完全に崩れ落ちた。

 んじゃまた。

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