男には男の、女には女の
次々と関哉達の目の前に多くの砦の兵士達が押し寄せてくるが、漆黒の斬線がそれら全てを一気に薙ぎ払う。それは大地の波動にして星の重み、推定5tには至ろうかと言う重み。
誰が見たって、狂気的な士気以外何もかも低俗としか言えないその兵士達にその斬撃を対処しろと言うにはあまりにも無茶と言うものである。
「ああ、くっそおめー」
ぼやきながらも関哉の振るう大剣に衰えはなく、近寄る敵兵士達を薙ぎ払って奥へ奥へと突き進む。
皐はその後を黙って付いていく。関哉が切り開いた道を後に続いていくだけで、基本的に何もしていない、と言うより何も出来ないというのが正しい。何せ関哉が一直線に戦場を駆け抜けていく為、それも大剣を振り回して狭い砦の通路を突きぬけていくのは正直言って援護のしようもない。
関哉は剣を振りぬけながら廊下の曲がり角に飛び出す。隕鉄を連想させるほどの重量を持つ大剣が地面を壁を砕きながら振り下ろされ、粉塵巻上げて煙幕を生み出す。関哉は廊下の先を見ると遠くに銃を構えてこちらに走ってくる一団、目の前には腰を抜かして座り込んだりうつ伏せになってる一団。
それを見て埋め込んだ大剣をそのまま。
「ウオオオオオオオオオオオオオオラアアアアアアアアアッッ!」
振り上げ、瓦礫と共に打ち出した重力波で近くの者を薙ぎ払い、更には奥の武装集団までも蹴散らす。当然、そんな光景を黙って見ている訳もなく関哉は皐と共に飛び散る瓦礫と共に武装集団に突っ込んだ。
砦内の騒ぎを聞きつけてやって来たのだろう彼らは急に飛んで来た仲間と瓦礫に蹴散らされ、追撃と言わんばかりに関哉達の攻撃を受けてあっさりと突破された。
「本当、芸術の欠片もありませんね」
「へっ、そもそも力押しにそんなもんあるかよっ!」
「と言うより、私それ聞いていないのですが!」
皐は走りながら関哉の持つ漆黒の大剣を目で示す。
「こいつは、ま、俺が駆け出しの頃に鍛冶屋のじーさんに打って貰った一品さ。刀身自体に黒曜石をふんだんに使った特注品でよ、強力な地属性の魔力を帯びているから普段は俺の足元に締まってるのさ!」
「本当に聞いたこと無い話なんですけど!? 後、それ見ため以上に重いと思うのですが!?」
「地属性の強大な魔力を帯びてるって言ってるだろ!? だからッ!」
言って、関哉は跳躍と共に大剣を振り上げて廊下の先に迫る扉目掛けて思いっきり振り下ろす。結果、爆発にも劣らない衝撃が扉周辺を粉微塵と打ち砕き、部屋の入り口付近にいた者達までも容赦なく吹き飛ばす。
「つまり、刀身自体が超重力を纏っているってことだ。まあ、刀身自体大体5tあるしな」
関哉は言いながら大剣を肩で担いで部屋に入ってくる。中は兵士達が詰まっており、ワンテンポ遅れて銃声が鳴り響き、銃弾が一斉に関哉に向かって飛び交うが関哉の目前に迫った瞬間に全てが押し潰されるように地面にめり込んだ。
「無駄だ。今の俺に、飛び道具は魔法以外意味はねえ。全部周囲に展開した重力圧で落ちちまうからなあ」
言って、関哉は床を抉るように大剣を振り上げて瓦礫を部屋中の兵士たち目掛けて思いっきりばら撒く。突然の反撃に彼らは対応できずにそのまま瓦礫に巻かれて沈んだ。
そこで関哉は部屋を見渡す。大きな部屋で四方に扉があり彼の目の前には大きな階段と扉がある。
「此処って、砦の中心部か? つうか、本当に広いな。一体何の為にこんな砦があるんだ?」
「知りませんよ、そんなこと」
後ろから付いてきた皐はそんな事を言いながら瓦礫に巻かれて気絶した兵士達のほうに歩み寄る。
「ふむ、キレイに気絶していますね。と言うより、行き成り飛んで来た瓦礫に驚いて気絶、と言う所ですか? 魔王軍の残党と聞きましたが、あまりにも杜撰過ぎますね。これでは新兵どころかそこらの冒険者のほうがましと言うレベルです」
「いや本当、俺も何度か傭兵紛いの仕事した事あるけど此処まで酷いのは見た事ねえぞ? 銃を持つにしても構えもひでえし、昨日今日戦い方を学んだばっかみたいな」
「その通りだとも」
降って来た声に極大の熱量が伴って関哉の頭上に降り注ぐも、超重力の一閃がそれを一気に薙ぎ払った。
「手前誰だ!」
「さて、ね」
上から降ってくる声の正体は不明。見上げても黒いフードで姿を隠した者と言うくらいで。
「多くの者達は我等が理想を理解し、それに従った者達でのみ構成されている……我らのように旧魔王軍の残党はわずか500人たらず、之で世界に挑めなど、正気とは思えぬよな」
「じゃあ止めろよ。皆迷惑してんぜ」
「そうは行かぬ!」
叫びと同時、関哉の頭上に再び爆炎が落とされる。が、関哉の大剣の一振りで先程と同じく呆気なく炎はかき消された。直後、男の首筋に刃が置かれる。
「ほう」
「貴方が首領ですか。安易に出てくるとは随分と余裕がありますね」
男が関哉に気を取られているうちに皐が後ろに回っていたようで。しかし男は自身を爆発させて皐を薙ぎ払った。そして、その後には何も残らなかった。
「これまた、大胆な逃げ方を……って、貴方何をしているんですか?」
皐は下で蹲っている関哉に注目する。彼が何をやっているのかを確認する為に下へと降りていく。近寄ってみれば、ただ単純に地面に手を置いているだけで。どうやら周囲の音を探っているようだ。
「ふぅ……お、皐。格摩と試しに連絡を取ってみたぞ」」
「そうでしたか。向こうは何と?」
「特に何も。取り合えず向こうは何処に居るのか不明だとのこと、だから俺たちの居所の報告だな。で、どうするか……扉をくぐるか? 正直どこでも派手な戦闘音響いてるから、どっち行ってもあの連中が居る可能性あるし」
振り向いた関哉の視線の先。皐は不思議そうな目をむけ。
「……やる気ないのでは無かったのですか?」
「ん? ずっとやる気出さない方が良かったのか?」
「そう言う訳ではないのですが。貴方が、真面目に頑張るときもあるんですね」
「可愛い女が近くに居る時は無茶だってしたくなるものさ」
「……そう、ですか」
返す皐の言葉は何処か冷たい。関哉はグランディエールを地面に突き立てて背を伸ばす。
「とりあえず、こっからどうする?」
「……一先ず大きな戦いがある所へ。目的の人物と接触しましょう」
格摩達もまた砦内の大きな部屋に辿り着いていた。そこで関哉からの通信が来たので応答したが、目下の問題は何と言っても現状、此処がどこなのかと言うことだった。
関哉の居る場所は大きな部屋に四方に扉で一つは大きな階段付きだそうだが、そんなもの何処にもない様な場所に出たのだった。
「さて、この砦の構造がちでどうなってんだ?」
「分からん……少なくとも洞窟からの繋がりで来た時に見たよりもでけえってのはたしかみたいだ」
武旋が呟く中、不意に足音が聞こえた。振り向いてみれば水純が居て。
「水純、お前も此処に来たのか」
「……ふむ」
格摩の問いかけに対する答えは考える仕草だった。そして、唐突に扉が開いて武装集団が一気に突入してきた。格摩達はすぐさま臨戦態勢を整えるが突如降り注いだ雷光によってそれは中断される。
「もしかして、ビリーか!?」
「お、格摩だ! 数貴は一緒じゃないのか!?」
雷光が通った先、そこには蜂蜜色の金髪にライトブルーの瞳を持った雷の戦斧を構えた男が、ビリーが立っている。
「おっすビリー。悪いな」
「おうよ! って、リーダーの兄ちゃんじゃねえか!」
「おう、久しぶりだなビリー」
と言った雰囲気でビリーは武旋や格摩との挨拶を済ませていく。そこでふとした疑問が格摩によぎる。
「なあ、氷牙は一緒じゃねえのか? あいつの声も聞こえたんだが」
「あれ、あいつはどこ行ったんだ? さっきまで一緒に……」
と言ってビリーは周囲を見渡す。そこにもう一つの足音がして、そこには青い髪の男が居て。
「おい、格摩……お前、このメール」
「お、おう氷牙おまえもいたのか!」
しかし、氷牙は暗い表情で携帯電話を覗いていた。そしてそのメールの内容を見せ付けて。
「このメール、おかしいぞ!」
「は? おかしいって、何が?」
格摩は氷牙の唐突な責める様な口調に首を捻る。だが氷牙の言葉は止まらず。
「これ、数貴が頼んだものじゃねえだろ」
「え、お、おう、確かにそうだけどそれがどうした?」
「お前、本気で言ってるのか?」
「本気で、言ってる? おい、どういうことだ!?」
「そんなもん決まってんだろうがッ!」
口にした直後、別の扉から派手な爆音が響いた。今まで聞いたよりも何より激しい大爆音、大破壊、爆撃。まるで、ダイナマイトを一気に何本も爆破したような大破壊。
「数貴に断り無く、そんな真似すれば、あいつ」
「見つけた……」
「見ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃつけたァァァァァァァァァァァァァッッ! くぁあああああああああああああああくまくぅぅぅぅぅぅぅぅうううううううううんッッ!!」
「めっちゃブ千切れるに決まってんだろッ!」
「会いたかった……会いたかったぞ格摩ぁッ!」
数貴は青筋立てて、指にフラスコを何本も構えてゆっくりと歩み寄ってくる。咄嗟に銃を構えたユージを武旋が制する。
「おい止めろ、ユウッ! あいつの持ってるもんはニトログリセリンだ!」
「なっ、なんでそんな危険物を持って!?」
「実に数日ぶりだな、格摩……今の俺は、正しく阿修羅さえも凌駕する存在となる!」
「いや、何言ってるのかわからん」
狂気に満ちた怒りの目で格摩達を見下ろす数貴。そしてその様子を見て、水純は満足気に格摩に向けてこういった。
「流石です。貴方たちならやってくれると思いました」
「な、に!?」
「だって僕、先生が嫌がることは何でも進んでするので」
それではまた。




