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好きにしろ(仮)外伝:神剣の舞手  作者: やー
漢達の宴――謡え、野郎共の狂詩曲
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アカク、ヨゴレタ――テ

 ユージはA-7の叫びを軽く無視して、或いは之が返事なのか顔面に目掛けて撃つ。

 お互いに撃った弾丸は互いの顔の横を逸れて飛んでいく、その弾丸を器用に避けた後にお互いに発砲しては弾丸が至近距離で激突して地面に落ち、体勢を立て直してお互いの銃口に向けて撃って弾が激突して落ち、また撃っては銃弾同士がぶつかって下に落ちて、また撃っては落ちて。

 ユージの銃から弾丸が消えた瞬間、A-7は再び踏み込んでナイフで斬りかかるが、ユージは弾の切れた銃でナイフと打ち合った。

「リロードなんてさせねえよ」

「あっそ」

 呟いてユージは手にしていた銃を手放しもう片手の銃をナイフに向けて。

「いらねえよ!」

 うち、ナイフの刀身を砕きA-7はそのナイフでユージの頬を切り裂いた。走る斬線と切られた痛み、そして肝心の流血は何処かへと。

「なっ」

「お望みはこれかい!?」

 ユージは狙った痛みと衝撃が無く、驚いたところにA-7の凶刃が走る。

 その向かい先は額、A-7の脳天目掛けた一閃にユージの銃がもう一度火を吹く。結果として刃が額に触れて心臓を貫いた弾丸がA-7を吹き飛ばして僅かな距離を二人に設けた。

「くっそ、いってえ」

「やろう……」

「ははっ、兄弟はよっぽどこいつを壊したいみたいだなあ」

 胸を押さえながら立ち上がるA-7、魔力の抜き取られた殺人ナイフを見せびらかして、血の付いた刃を舐め上げる。

「ガキが粋がって振り回していいもんじゃねえしな」

「はっ! だから兄弟はあまいってんだよ! 俺らにとって殺人は当然、兄弟同士でも敵として会ったなら問答無用! 邪魔するなら殺せ、金になるなら殺せ! それが」

「ああ、それが俺らの」

 言ってまた何度目になるか分からぬ、二人は互いに距離を詰めあい。


「常識!」


 叫んで互いの武器を振るい合った。

「だって言うのに兄弟はこんななまっちょろい武器しかつかわねえ! そんな余裕ぶってると死んじまうぜぇ!?」

「余裕ぶってんのは手前だ。そんなの、ただのお遊びの道具だろうが」

「こいつがお遊戯の道具に見えるってのか!? 毒塗られてりゃもう兄弟は死んでるぜ!?」

「そう言う台詞は塗ってからいいな。わざと斬られてるのに気付けよ、ガキ」

 言ってユージは一歩下がってA-7に向けて三発ほど銃を撃った。しかしA-7はその銃弾を腕で薙ぎ払ってユージに肉薄してナイフの乱舞を見舞う。

 撫で斬り刺突切りかえしからの薙ぎ払い、どれもこれも空になった拳銃によって弾かれ、寧ろその防御の合間にユージは空薬莢を排出、シリンダーに手早く銃弾を再装填し終えてA-7にまた銃を撃つ。

「あめえ!」

 言って、A-7は撃たれた銃弾を頭突きで叩き落した。

「こんな魔力塗れの弾丸じゃ、赤ん坊も殺せねえよ!」

「それ自慢か? 赤ん坊なんて誰でも殺せるぜ」

 A-7の頭突きを見届けたユージは僅かに笑うとポケットから黒いボールみたいなものを三つは取り出してA-7に向けて投げる。

 それが手榴弾だと気付いたA-7は即座に距離を取り、直後にそれが爆発して煙幕となり、衝撃と火が壁となって二人に距離を設けた。

 ユージは数歩うしろに下がるとまるでA-7が居たと思わしき場所に5発の銃弾を打ち込んだ。そして煙幕が晴れるのを見ると。

「決意は弾丸に」

 腰のショルダーバッグの蓋を開けて合わせて五つの弾丸を取り出して。

「殺意は」

 空になった薬莢を取り出して、代わりとして相手に見せびらかすようにそれを丁寧に一つ一つ、銃に込めていく。

「ああ? なんだそりゃ」

「さあなあ」

 銃を振り、銃を元の形状に戻してユージは二挺の拳銃を向ける。

「さあ来いよ。ガキのしつけだ」

「手前に出きるかよ!」

 言いながらユージは数発の弾丸を撃ち込むが、A-7はそれらを手の銃で撃ち落し、一部は体で受け流して。

「ひゃはっ! 切り刻んでやるぁッ!」

 ナイフを振り被った瞬間、ユージの売った銃弾を頭に受けて。


「――え?」

 額に、奇妙な衝撃と共に吹き飛んだ。


 宙に浮く感覚。己が吹き飛んだという事実に気付くのに凡そ数秒。そして、脳に何かが入ってくるという初体験の現実にA-7は混乱していた。

 地面に転がり、何が起きたのかと額に手を置くと、何か変な感覚があって。

「……え、何で、穴が、あるの?」

 ぬちゃり、と音を立ててA-7は指に付いたものを視認する。指先に紅くて滑りとした物がそこにあって。

「え、血?」

 A-7は慌てて起き上がると、嫌な音を立てて頭の穴から何かが這い出て落ちて来た。金属音を響かせながら落ちるそれを見る。

「じゅう、だん? え、うそ、何で、お前、魔力の無い銃弾なんて」

「あーあ、耐えちった」

 ユージは含み笑いと共に銃を下ろした。その戦いを見届けていた格摩は呆然と。

「何が、起きた?」

「俺たちの体には、脳にまで魔力が通っている。脳味噌にだって、ある程度筋肉あるし。そこに銃弾を撃てば、筋肉に魔力通してる俺らは途中で魔力塗れで殺傷力を失う……そう言うこった」

「おい、ユウ。お前、一体、何を言っているんだ? まるで、今、お前が」

「い、嫌だ! 駄目だ、駄目だ駄目だ駄目駄目駄目駄目駄目駄目ええええええええええッッ!? こ、このままじゃ、俺が死んじまう!?」

 事態に気付いたA-7は傷口を押さえて蹲って泣き言を喚き始める。まるで小さな子供のように、わんわんと我侭を泣き叫ぶ。

「お、俺、まだ18で、まだオトナになってなくて、俺、まだ、まだ死にたくないッ!」

「散々人殺しといて、何都合の良いこと言っているんだか」

 ユージは言いながらゆっくりとA-7にへと近寄っていく。A-7は未だに傷口を押さえて蹲っていた。まるで、これ以上傷口を広げないようにしてるかのように。

「あ、あたまがっ! 俺の脳味噌ガッ!? ド、如何しよう、傷ついて、血が、血があああああああああっ!?」

「ああ、脳味噌に障害で出来て全うな思考が出来ていないと、そういうことかい?

「たっ、助けてッ!? 誰か助けてッ!?」

 とうとうA-7は涙目になってまで情けない事を叫び始める。

「お、俺、いやだ、いやだ、俺死にたくないっ! だって、まだ俺、オトナになってないんだよッ!? オトナになって、オトナになって、俺の家族を、故郷を、町をめちゃくちゃにしたオトナドモを、ぶっ殺してやれるのにッ!?」

「あい、つ……」

 格摩はA-7の叫びに、絶叫に一歩下がる。だがユージはA-7の前に辿り着いて見下ろす。

「助けて欲しいか」

「え?」

 唐突に声をかけられたA-7は額を押さえながら顔を上げる。その表情は希望を見出したと言わんばかりに。

「助けて、くれるの?」

「ああ、助けてやるよ」

 A-7は喜びのあまり、純粋な笑顔を浮かべた。それに対してユージは笑顔で手に持っていた鉄塊を振り上げて。

「おい、まさか」

 格摩は思わず一歩踏み出して、ユージは額にその鉄塊を押し当てて。

「や、止めろおおおおおおおおおおおおお!?」

 格摩の声を塗りつぶすように、無慈悲な銃弾がA-7の頭を貫いて、銃弾が脳を突きぬけて地面に転がった。

「あ……」

 誰かに手を伸ばす格摩、しかしA-7は後ろに引かれる様にばったりと地面に倒れこみ後頭部から血だまりが広がっていく。

 それを見て、格摩に絶望に似た何かが広がる。だから、叫ばずにはいられなかった。

「ああああああああああああっ!? 何で、何で殺したッ!?」

「こいつが、結局殺人無しじゃ生きていけなかったからさ……」

 答えは明確で、真っ赤に染まった手を下ろしながらユージは格摩の絶叫に含み笑って返す。

「やっぱりこいつは、いや俺達は殺人が基本だからなんにしても殺人あり気で考えちまう。そんな連中、危険だろ?」

「でも、お前は」

「俺だって、こいつらと同じだよ。結局、俺も殺人が基本なんだよ。邪魔だと思った奴は、やっぱり殺した方が速いって思う考えちまう。だってよ、人殺しは俺らにとっちゃ常識だぜ? そう教えられた、そう育てられた。お遊び感覚で戦場にやって来て殺人やってる奴はやべーと思って一先ず殺しちまう。そう言う人間なんだよ、俺は」

言うだけ言うとユージはもう用は無いと言わんばかりにA-7の死体に背を向けて歩き出す。

「格摩手前、何ぼさっとしてやがっ……って、こいつはあのガキか!?」

 武旋も戦闘が終ったのか、格摩に怒鳴りながら部屋に入ってくるが部屋の中でひしゃげた顔で倒れているのを見て武旋は全ての状況を瞬時に悟った。つまり、ユージはA-7を。

「……見たのか?」

「ああ」

 武旋の問いに、格摩は項垂れて答える。

「気にするな、格摩。あいつらは、元々そう言う風に仕込まれている。例え、兄弟同然に育った奴だろうと敵として会ったなら問題なく殺せる。だから……気にすんな」

「……くっそッ!」

 武旋は言いながら、酒を取り出してA-7の顔にかけた。格摩は尻餅をついて、拳を振り上げて床を思いっきり殴りつけた。

「落ち着け……格摩、お前が殴るべきはこいつをこんなにした連中でも何でもねえ。未だに俺たちのする事はなに一つだって終っちゃいねえんだ。分かるな?」

「ああ……分かってる。だがよ、思っちまうんだ」

 格摩は顔を上げ、涙に滲みながらも怒りに満ちた表情で。

「こいつらをこんなにしちまったクソ野郎共は、絶対にゆるさねぇ……ッ!」

 言って、立ち上がると格摩はポケットからハンカチを取り出してそれをA-7の上に被せた。



「はあ……やる気でねえ」

「では何処かへと消えうせれば良いではないですか」

 関哉はそんな事をぼやきながら歩いていた。そんな彼を皐が厳しい言葉を叩き付ける。その対応に関哉は溜息を吐いて。

「皐はやる気あると? 何処の誰かも知れねえ奴を探し出して合流するの」

「やる気のうむを問わず、それが私達に課せられた任務です。やるのが当然でしょう」

「だからって、正直途方もねえぞ? 勢いよく飛び出したが良いものを、全く見あたらねえし」

「探索は貴方の担当です。さっさとやらず、当てずっぽうな事ばかりするからでしょう」

「当てずっぽうってお前……」

 皐の言葉に関哉は呆れた表情で返す。現状、彼らはあれから目的の人物たちと合流できず、途方にくれている真っ最中である。何故かと言えば。

「この砦の彼方此方で爆撃のお祭りだ、この振動の中戦いの仕方も知らない連中を探せってかなりの無茶振りだぞ!? 正直、此処までむずいと俺も知らなかったわ!」

「受けたのは貴方でしょう。自分の事くらい責任を取って下さい」

「しゃーない、じゃあ責任取るか」

 そう言って関哉は近くの扉を蹴りあける。その中は慌てて武装している真っ最中の兵士の群集が。

「え、ちょ、まさか知ってて」

「激戦区に向かってんだろ? ならこっちから作ってやりゃはなし速いだろーがッ!」

 剣と斧を構えて関哉は何時もの様に戦場のど真ん中に突っ込んで行った。

「貴方、病み上がりでしょうが!?」

「じゃあ援護、しっかり頼むぜぇっ! 俺の一人の面倒くらい余裕なんだろ!?」

 斧で叩き割り、剣で切り裂きながら関哉は前へ前へと突き進んでいく。皐はその後ろを蹴りを駆使してついていく。

「一体何処まで行くんですか!?」

「一先ず奥まで! 激戦区のど真ん中に行きゃ何とかなるだろ! 出し惜しみは」

 敵を蹴散らし、剣と斧をしまい関哉は地面に手をかざす。

「一切しねえッ!」

「な、地面に? 一体何を」

「地面には、俺の真の相棒が眠ってる……さあ出番だぜ!」

 地中から柄が飛び出し、それを掴んで握りって引っ張り上げる。それは、漆黒の刀身を持つ大剣。ふんだんに使用された黒曜石が刀身で輝く。

「行くぞ、グランディエール!」

んじゃ、また。

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