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好きにしろ(仮)外伝:神剣の舞手  作者: やー
漢達の宴――謡え、野郎共の狂詩曲
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最大の誤算は何処から?

 互いにA-4とA-7と呼び合った少年達二人。一人は見上げ、一人は見下ろして。

「A-4にA-7……? 一体、どういうことだ?」

「格摩、んな事よりもあの小僧、如何にかなんねえか? これじゃああいつを」

 武旋がぼやいた直後、再びアサルトライフルの火が吹いた。面で圧される一階、ユージはその攻撃に漸く瓦礫の中に潜ってサブマシンガンで反撃するが。

「ハッハー! 無駄無駄ムダムダァッ! あ?」

 かち、かちとアサルトライフルから空しい音が鳴る。それを見てA-7は舌をうち。

「弾切れかよ……これだから支給品のもんは」

「手前は何時もそうだ」

 同時、ユージはボストンバッグに手を突っ込み、鉄の塊を引っ張り出して上の方へそれを向けた。

「そうやって武器の確認を怠るから」

 狙う先は悠々と崩れた二階に立つかつての戦友。それを見て格摩と武旋は思わず引きつった顔をする。何故ならば、それは。

「こういう目にあうんだよッ!」

 遠慮なく引き絞られるトリガー、飛び出る弾頭、それは真っ直ぐ飛翔して仁王立ちする少年目掛けて。

「え、な、は、なああああああ!?」

 目前に迫ったミサイル、A-7は瞬く間にアサルトライフルのリロードを済ませそのまま後ろへと飛ぶが、間にあわず着弾。

 轟く爆音、弾ける瓦礫、ユージは構えた鉄塊を下ろして呟いた。

「一兵士に一本、スティンガーミサイルってな」

 言って、スティンガーミサイルの発射台となるランチャーに一応次の弾薬を装填してボストンバッグにしまいこんで投げ捨てたもう一丁のサブマシンガンを回収して粉塵が舞う二階を睨む。

 だがそれに武旋が飛び出して跳躍する。そう、スティンガーミサイルの爆撃を受けてアサルトライフルの銃撃が止まっているこの今。

 ここが、反撃のとき。

 武旋は魔力を足に送り込み、半ば爆発させる勢いで跳躍して二階へととびうつり、直後に粉塵の中からアサルトライフルの銃撃が再開する。

「くっそ、行き成り、人に向けてスティンガーとか、まじであいつくせー!」

 言いながらまだ晴れぬ粉塵の先へとアサルトライフルを乱射する。受ける武旋は大剣を盾にしてその銃撃に抗うが、背後には一階。下がる道はなく、前からは銃撃。

 思わず歯を食い縛り、舌を打つ。だがその背後に軽い銃声と何かが岩に食い込む音がなる。激しい銃撃の中で武旋は何事かと思って後ろへと視線を向けると。

「な、ワイヤー、だと?」

 そこから下から吊るされて来る人間が一人、そうユージがワイヤーに吊るされて二階へと這い上がってきたのだ。そしてその両手に構えているのは、ショットガンが。

「お兄さん伏せろ!」

「お、おいおい、そいつは伏せっ!?」

 武旋は思わず悲鳴染みた言葉を吐きながら横に転がっていき、そこに間髪いれずにショットガンを発砲する。

 目標は今だ晴れぬ粉塵の向こう。だが構わずユージは引き金を絞って更にポンプアクションを行い、更にワイヤーにしがみ付きながら次の弾を入れてもう一度、その動作をワイヤーにしがみ付いた状態で4、5度同じように撃ち込む。

 撃ち込み、直ぐにポンプアクションで装填し、時折呻き声。ショットガンの射撃が始まると同時にアサルトライフルの銃撃がぴたりと止まり、武旋はそれを見て。

「散弾、じゃねえ?」

「そりゃ、味方の近くだからな。流石に散弾はうたねえよ」

「だから、って……」

 晴れた粉塵の先、A-7は壁に寄りかかって苦しそうな表情を見せていた。よく見ればその手には銃から飛び出た弾丸が握られていて。

「ふつう、あの状況で、スラッグ弾、何て、撃つかよ……っ!?」

「A-7……」

「くそ、その武器の選択、まじでA-4かよ……ッ! 本当に、古臭いもんばっか選びやがって」

「ロマンといいな、ロマンと」

「またそれかよ、手前! ワイヤーにしがみ付きながらポンプアクション式のショットだと!? 正気の沙汰じゃあ、ねえよ!」

 A-7は言ってから袋を投げて逃げ出す。ユージはそんな行動を許すはずも無く、即座に引き金を絞るが投げた袋の中身を知ると一瞬かたまり。

「な、手榴弾だとぉッ!?」

 中身を知った武旋は直ぐに一階へと戻り、ユージもワイヤーを切り離して一階へと再び舞い降り、直後に爆発の大合唱が巻き起こる。一斉に炸裂する手榴弾。結果として崩れかかった二階は瓦礫と砕け散って一階に落ちて、或いは吹き飛んでいく。

 爆風が収まり、武旋とユージは体にかかった砂埃を払って立ち上がって上を見る。二階の一室だった部分が完全に吹き飛んでいて二階の廊下が見えるようになっている。

「格摩、無事か?」

「え、ええ。ずっと壁作って篭っていましたから……」

 武旋は近くでずっと防御に集中していた格摩に声をかけ、格摩はひょいっと不自然に盛り上がった壁から顔を出して返事する。

「……これじゃあ、上にいけねえな」

「普通に階段使おうぜ」

「あの、之はどういう状況、なんですか?」

 そんな時、女性の声が聞こえた。振り返ってみれば、そこには皐がいた。



「此処、何処だ?」

 ティンはふとそんな事を思いながら周囲を見渡す。そこは、何と言おうか。石造りと言うか、レンガで組み立てられたとりでの中と言うべきか、妙に古臭い建物と思わされた。

 だが、そんな事は彼女にとってはあまり関係が無かった。絶える事無く続く仮面の襲撃にティンは変わらず首を跳ね飛ばすだけ。

 そんな中、一つ不思議なことがあった。それは何かと言うと。

「……鎧なんて、着る様になったのか」

 奇妙な事に、鎧に普通の軍服を着ている敵が増えている。何より、首が飛ばない敵が出てくるようになった。そこまで来てティンは動きを止めて。

「……敵に、人間が混ざってる? 何で?」

 だが止まったのは僅か数秒だけで、直ぐに次々と襲ってくる増援達にティンは即座に対応して切り捌いていく。

 考えるよりも先にすることがあるから、彼女はこの程度では止まらない。



「数貴、何処だあああああああああ!?」



 の、筈だった。だが途中で豪雷と共に砦の中に誰か突撃してきた。暴れる雷光に包まれ、一体誰が来たのか全くわからない。だがそこに。



「来たぞ数貴いいいいいいいいいいいい!!」



 同じく、砦の壁を突き破って誰かがやって来た。その、砦中に響かせるような絶叫と轟音に誰もが、驚いた。特に、先に潜入してた者は。

「……は?」

 そう、名指しされた当人である数貴本人である。思わず彼は携帯電話を手に取りある場所へと電話する。

「おいバクゥフ、一寸聞きたいんだが」

『旦那なら出かけましたよ。なにやら数貴さん、あんたの援護にって」

 数貴は思わず眉を顰める。電話に出た人間が求めていた人間ではなかっただけではなく、予想外の行動を取っている者までいると。

「……何で? つかいらねえし、どうしてそんな事に?」

『え、あんたが呼んだんじゃないんですか? 何かそう言うメールを格摩さんだかに貰ったと』

 そこまで聞いて携帯電話の通話を切った。そしてゆっくりと深呼吸して気持ちを落ち着かせる。冷静に、冷静に、心を穏やかにして、敵兵の前に出て。

「かああああああああく摩くうううううううううううんッッ! ちょっと、楽しいサプライズしてくれてんなあ……特製の硫酸奢ろうか……ッ!?」

 ニトロをばら撒いて、水の弾丸撃ちまくり、敵兵を文字通り洗い流していく。

 今此処に、文字通りに。数貴の計画が完全に破綻した瞬間である。

 ではまた。

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