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好きにしろ(仮)外伝:神剣の舞手  作者: やー
漢達の宴――謡え、野郎共の狂詩曲
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神剣と神剣

 鉱山の中へ向かって行く一行を見送ったティンはゆっくりと女剣士を見る。

「何で行かせた」

「行かせちゃいけない理由って?」

「は?」

「あたしが請け負ったのは見張りと足止め、行かせたらどうなるとかは聞いていねー」

 そら知らんと言わんばかりに手にした緑の太刀を弄んでいる。

「……良いのか、それで」

「良いんじゃね? めんどくせーし」

 言って、派手に音を立ててティンの背後に回りこんで叩きつけるような鍔鳴り音が響き、その音にティンは何かを探るように反応し。

(な、何でこんなばれるように派手な動きを)

「では」

 納刀から回り込んだ時に停止の為に踏み込んだ左足をそのままバネにして右足で更に踏み込み。

「幕にしましょうか――ッッ!!」

 踏み込んで居合い抜きの突進を。

「んなもん」

 乗るかと思って回避しようとティンが片足を上げたと同時に急に突風が吹いて体のバランスが急に崩れらかけ。

「やられると!」

 そこから更に軸足を捻り、上げた足を蹴って股を大きく開き体を寝かせて低空姿勢をとって迫る居合いの刃を避けるが、先程の突風より尚も攻撃的な風がティンを引きずるようになぎ払う。

「なんつう」

「この」

 風に煽られながら木の葉のように吹き飛ばされながらもそのまま空中で体勢を整えて風と共に舞って着地し、そこに。

「風輪断!」

 縦向きに抜き放たれた居合い抜きから風の刃がティンに向かって飛翔し、その場から直ぐに退避運動を取ると女剣士が距離詰めから踏み込み居合い抜き、ティンはそれも見てからリズミカルにステップを小気味に刻んで回避、そこに居合い抜きからティンを追って振りぬいて太刀を投げる。

「こいつ、踊り子か!?」

 叫びながらティンは両足を広げて頭を下げ、飛んで来た太刀を避け、開いた股をバネにし閉じて無手となった女剣士へと迫り、女剣士は左手に持っていた鞘でティンの剣とかち合う。

 剣と鞘、重ね合ったと同時にティンが感じたことは一つ。

「おっも!?」

 硬く、重い。まるで木の形をした鋼鉄のような感触と手応え、そこでティンは感じたことは。

「おま、鞘に鉄を」

「捕らえたよっとッ!!」

 直後、剣から伝わる重量が変化する。急激に加わる重量に相手が一気に力を込めて押し潰してきたと悟り、ティンは鞘の切断よりも回避を優先して鞘から剣を滑らせて力に乗ってそのまま吹き飛ばされるように一撃をかわす。

 女剣士はそのまま手を前にかざして自分で投げた太刀を手に戻して納刀し、ティンは木から気に飛び移って女剣士の首筋を狙って剣を向けるが、直ぐに緑の太刀で防いだ。

「ちっ……めんどくせぇ……」

 そこから太刀からティンを投げ、周囲の景色を見渡して再び死角からティンが切りつけ、女剣士は即座に反応して太刀を振るって切り結ぶ。

「なあ、()()

 それをもう一度薙ぐように振るい、ティンは再び森の中に潜んで移動する。

「森林伐採って」

 女剣士は太刀を納め、長い刀を引き抜き。

「如何思うッ!?」

 両手で柄を握りこんで、真横一直線に、円形に振るった。

 結果、森から約半径10mから、木が切り裂かれて剣圧によって吹き飛んだ。

「な、な、な、なああああああああああああああッッ!!?」

 あまりに常識はずれな状況に、ティンは驚愕の表情を見せ、女剣士は勝誇るような笑みを見せて。

「これでもうめんどーな事はしてこねえな。んじゃ一気におわらせっか、草薙」

 ――全く、無茶ばかりしますねマスター。

 女剣士の脳内に直接声が響き、今度はまた緑の太刀に武装を変える。それを見てティンは。

(なん、だ、あれは!?)

 この状況、周囲の森林がまるごと真っ二つになって斬り飛んでいるこのバトルフィールド。一体全体何が起きたのか、考慮していく。

(あの、刀。あれで、切った? まさか、両手で持って、一気に薙いで? 魔法? いや、魔力的な感覚は無い、じゃあ剣? 剣圧で周囲を一気に切り捌いた、とでも!? 一体何なんだ、あの刀?  いや、じゃあ何で急に緑の太刀に切り替えた? その理由は? まさか、使い易いとか? いやありえない、アレだけの技量を持っていながらあんなにも重い刀に持ちかえる、だって?)

 ティンは剣を構えながら相手の出方を伺い、構えなおす。

 ――にしてもマスター、あの剣士妙ですよ。

「妙って、何が」

 ――懐かしい感じがします。何処かであったものを持っている……でも何処で?

「しらねえよ。何だって良い、斬るだけだ」

 ――後マスター、声出てます。

(うるせえよ黙れてめえ!)

 そう良いながら女剣士は太刀を握り、抜き放つ構えを取りながら柄を握らず、開いた手だけを添える。ティンはそれを見てか見ずにか。

(あれだけ重い鞘に豪腕、となると太刀は軽いのか? 風で引き寄せてたけど、太刀のほうは軽い? 確かに、あれだけ重い鞘を持ちながら太刀も重いなら振るう何て、居合い抜きさえ出来ない筈。でも太刀はそんなに軽く出来るのか?)

 思い、ティンは構える女剣士を見る。左手に持った太刀を腰にあてながら居合い抜きの構えを取る彼女。それを見てあの太刀はそう重くないと予想しながらも女剣士の逞しい腕を観察しながらそれさえも鍛錬の末に生み出したブラフと言う線もある。

(風属性を付与してるとか? それとも純粋に腕力か? くそ、考えてもきりが無い、まずは――)

 ティンは地面がしっかりしてるか、地面を軽く蹴りつけてたしかめてから踏み構えて。

「ぐだぐだ時間かけても仕方ない、まずは――」

「――は?」

 踏み出して、舞踊のステップで女剣士との距離をつめ。

「切り結ぶッ!」

「え、お前、何言ってんだ、考えるって」

 ――来てますよ、マスター!

 不思議な声が脳に直接響いたかと思えばティンは光の魔力で生み出した足場で空中剣舞を行い、女剣士の死角へ回りながら切りかかり、女剣士は直ぐに風を纏ってその一撃を回避する。

「くそっ」

 ――マスターぼうっとしすぎです!

「だって、あいつ考えるも何も、直ぐに動いてきたんだぞ!? 何を考えて」

 ――まだ来ますよ! ったく、ありゃ並みの踊り子じゃあききませんよあれは!?

 響く声に導かれ、女剣士は空中でマントを翻しながら襲い掛かるティンへ居合い抜きを放ちながら応戦する。

 ――ほう、お前らだったか。

「ああ!?」

 ティンは急に抜いた太刀に語りかける女剣士に驚きながら次々に舞踊の動きで剣戟を繰出す。女剣士は切り結びながらも。

「お前らって何だよ手前!」

 ――久しいな、黄昏殿。今世の宿主はそいつかい?

「ッ!? おい、お前、誰だ?」

 ティンは急に目つきを変えて女剣士を、いや太刀を見る。女剣士は舌をうってティンと距離を取る。

「おい、あれ何。しってんの?」

 ――ええ。と言っても剣の、それもあの小娘が体に宿っている、ね。

「……おい、何だ、その太刀。さっき、頭に響いた声はそいつか?」

 言って、ティンは女剣士の持つ緑の太刀に指先を向ける。

「……ああ。こいつは草薙。邪神剣・草薙、まあ、精神体なら神だって食らうもんだよ。で、なにあっち」

 ――黄昏の十字神剣、ラグナロック。かの神々の終焉の物語、その集大成っす。まさに、神の終わりを謳い、終焉を与える黄昏の炎。その輝きはかのヴァルハラをも消し去るでしょう。

「……え、おまえの天敵?」

 ――さあ、どうでしょうか? 私としてはぜひとも喰ってみたいものですが。

「あ、そ。じゃあ、やるか」

 そう言って太刀の刀身に手を添えて。

「術式開放ッ! さあ、見せてやれよ草薙、八幡の大蛇の体から出来た手前の力、見せてやれッ!」

 緑の太刀が禍々しいほどの光を放つ。その刀身、いや女剣士まき付く長いひもが見える。だが、それは紐などではなく。

「蛇……?」

 八本の首を持った蛇が、彼女の体に巻き付いて、その首総てがティンに向かって睨んでいた。

 じゃ、また。

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