銃術士
一行は直ぐに鉱山洞窟の中へと入っていく。ティンと女剣士はそれを黙って見届けた。
それを確認せずに格摩達は鉱山の中を走っていく。そんな中、未だに担がれている皐が。
「……何時まで抱えてるんですか、この助平!」
言って皐は自分を抱えてる関哉に向かって蹴りつけ、脱出から着地して自分で走る。
「っつー……いいじゃねえかそんくらい、役得させろって!」
文句を言う関哉に対して皐はつんと無視をして。
「兄さん、噂って何ですか?」
格摩は先程武旋が言った噂とやらに気がかかって問いかける。武旋は非常に真剣な表情で。
「……この辺で何かをする為に人を集めてる組織があるって話しだ。最初はただの山賊だと言われてたが、もう一つ妙な噂がある」
「まさか、そいつって――!」
「魔王軍の残党、今現在刑務所に入れられてる魔王の解放を望んでいる連中だ」
「ま、魔王!? 魔王って、この間の!?」
「ああ。あの時、魔王三つ巴の時の一人だ。一人は激闘の末に肉体が崩壊して死亡、一人は氷結瑞穂とか言う女と戦って異次元の彼方に消え去った、だが最後の一人は――」
「世界中からかき集めた連合軍とぶつかって、敗北して刑務所送りになった……じゃあまさか!?」
格摩は武旋の話に驚きの表情を見せ、彼もまた射ぬくような視線で前を見つめ。
「ああ、もしかしたらここが連中の隠れ家なのかも知れねえ」
「マジ、ですか!?」
「それを今確かめる、お前ら気合入れろよ!」
武旋は後ろからついてくる彼らに告げると真っ直ぐ洞窟を駆け抜け、やがて見える光に向かいそこを抜けて。
「おっとそこまでだ」
そこで彼らに制止を呼びかける声が。それは目の前から響いてきて、洞窟の出口を塞ぐように立ちはだかっている。
「悪いが此処から先は通行止めだ、何故か……なんて質問には答えねえし答えられねえから気を付けな」
そんな言葉を紡ぐのは目の前に立ちはだかる少年だ。使い古したマントをまといニヤつきながら彼らを見下ろしている。そしてマントを展開し一行に持っているブツを見せびらかして。
「んじゃ、さいなら」
それを突きつけた。それは何かといえば、真っ黒い鉄の塊。あえて固有名をいうなら、銃。両手に握り締められたサブマシンガン、引き金を引いて、中身を思いっきり狭い洞窟の中にいる彼らにばら蒔いた。
「マジかよ!?」
いきなり火を吹くサブマシンガンを前に武旋は大剣で防御、格摩がまえに躍り出て洞窟の出口の間に岩の壁を展開する。
「っつぅぅ……ッ! 何発か貰ったか――くそ、鉛玉かよッ!?」
「おい如何すんだ、あれ銃だぞ、俺たちに」
「だからどうしたと」
「待て皐!」
武旋は突き刺した大剣を抜いて構えなおし、皐を静止する。
「銃ぐらいで」
「違う、奴は恐らく銃術士だ。下手な銃使いの兵士と一緒にすんな! 俺が行く、手前らは大人しくしてろ!」
「ガ、銃術士!? な、何が……っ、お前ら壁から離れろ!?」
格摩は武旋の言葉に驚くと同時に別の何かに驚く。地面から伝わる波動、それは壁の向こうにいる人物がサブマシンガンを撃ちながら何かを持ち替えた、振動。もっと重い何かに変えたが故の振動が格摩の手に伝わって、それを壁に突きつけられ。
直後、轟音と共に何かが壁を貫いてこちら側へと飛翔する。
「な、これは」
「な、んじゃ、こりゃ」
「なんつう、でっかい弾丸撃ってきやがるんだ……って兄さん!」
武旋は壁を飛び越え、少年の上から奇襲し。
「あ、はいはい」
と軽い調子で今度はサブマシンがを上に向けながら後退し、武旋は大剣を片手で振り回して飛び交う銃弾を薙ぎ払って着地し、そのまま。
「ちょいやっべ」
軽い調子で今度は両手にサブマシンガンに変えて再び乱射していく。その片手の向く先は。
「くそ、あいつ俺らを外に出す気はねえってかよ!」
格摩たちが居る洞窟の出口に弾幕をはり、その上で武旋と相対までこなす。しかし、武旋の方は少年のばら撒く銃弾にも臆さずに踏み込んでいく。
「くっそ、こんにゃろ!」
「うぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおらッ!」
銃弾をものともせずに距離をつめて大剣で上目掛けて思いっきり投げあげる。少年は懐から別の銃を取り出すと壁に向けて撃ち。
「フックショットかよ!」
「サブもおまけしとくてぜッ!」
サブマシンガンから弾丸をばら撒きながらフックを壁に撃ち込んで上のほうにある穴に入り込んでいき、武旋も大剣を地面に叩きつけて飛び上がっていき、同じ穴に入り込んで追撃するが穴に入り込んだと同時にサブマシンガン二丁による掃射を浴びせられ、それを大剣で防御する。
その隙に格摩達は外に出、その上から武旋が落ちてくる。
「って兄さん!? 何が」
「お前ら逃げろ! いや固まれ! 下手に離れんな、今あいつの持ってる銃は」
そう言って先に答えがやって来る。向こうから少年がショットガンを持って穴から下を覗いて引き金を引く。そこから出る答えは。
「散弾かよっ!? んにゃろなめんな!!」
言って格摩は地面を魔力を練って殴りつける。殴ると同時に地震が起き、少年の居る場所が罅割れ弾け上がる。結果として少年は宙を舞って落ちてくるが、同時にサブマシンガンとショットガンをおまけと言わんばかりに落ちていく。
着地と同時に今度はショットガンをサブマシンガンに変更し、二丁で乱射しながら後退していく。
「私が前に」
「いや待て! こいつはただの挑発だ、下手に乗ると撃ち抜かれるぞ!」
構える皐を武旋が制する。そんな中。
「お、おい、誰か来るぞ!」
「あ、ありゃぁ……!」
見れば、少年が向かっていた先の洞窟の入り口から大勢の人間がやって来る。その格好はどいつもこいつも正しくボロイ服を纏った賊と言う風貌で。
「後は頼んだ!」
「待てこらぁ!!」
それを見て、少年はすぐさま懐にサブマシンガンを仕舞い込み、背を向けて逃げ出し、それを見て格摩は重力で自分を押し出し、周囲の山賊を押し退けて少年を追いかけていく。
「おい、あんにゃろう深追いは」
「いやあれでいい! この網目模様の洞窟の中で下手に動かれたら上から援護射撃だ! 銃術士にそれをやられたらマジでやばい! 寧ろ……こっちがやれるか如何かって所だ」
言って、武旋は周囲を見渡す。増え続ける山賊団に彼らは身構える。
「へっ、こいつはすげえ」
「雑兵がいくら来ようとも!」
「ったく、めんどくせえ!」
襲い来る山賊団を前に立ち向かっていく。
格摩が洞窟の中を駆けて逃げる少年を追う。
「くっそしつけえなあのお兄さん」
笑うように、しかしやれやれと呆れるように少年は漏らしてサブマシンガンを背後に向けてばら撒いていく。格摩は歯を食いしばって自分に向かってくる鉛玉を蹴散らして前を駆ける。
「うわいたそ」
「やろう……ッ!」
格摩は思わず少年を睨み返してより加速して距離をつめるが、延々とばら撒かれる弾丸が行く手を遮り、距離を制限される。その内色んな分かれ道を経由し、洞窟内をぐるぐると動き回り、やがて明るいところに出た。
「追い詰めたぞ」
「追いつめたぞ、何て思ってるかい? 残念、此処どーこだ」
格摩は自分の言葉に重ねられ、言われて周囲を見渡し此処が何処なのかを確認し。
「まさか、ボスの部屋か?」
「せーかーい」
見渡して、後ろにいる山賊団のボスらしき男とその取り巻きがいて。
「さあて、飛んで火にいるってな。覚悟してもらおうか、お兄さん」
「覚悟? そりゃ手前らだ。俺を、この程度でやれると思ってんなら大間違いだと教えてやるよ!」
ではまた。