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好きにしろ(仮)外伝:神剣の舞手  作者: やー
漢達の宴――謡え、野郎共の狂詩曲
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居合勝負

 翌日、一行は森中を奥へ奥へと進んで行く。

「そういやこの辺に古い砦があったっけな」

「言われてみれば地図ではこの辺だっけか」

 武旋の言葉に格摩が相槌をうち、地図を広げ始める。

「兄さん、それが?」

「いやよぉ、そう言えばこの辺で変な噂があってな。この近くの砦があるだろ?」

「そういや、そうだっけか。でもそれがどうかしました?」

「いやな、ちょっと面白い話を聞いてだな」

 そう言って周りを見渡し、辺りを確認してある箇所を見る。

「おお、あれあれ。あの辺りに炭鉱現場があるだろう?」

 指差し、その先にある炭鉱現場。森の奥に存在していてそこだけが切り開かれていた。

「あ」

 と、そこで緑の女剣士が彼らの近くに通りかかって固まる。互いが互いを見合って硬直し、そして眠気眼みたいな呆れた表情で。

「っちゃーみつかったかーじゃ」

 言って、やたら長い刀を握りしめて。

「悪いけど気絶してくれ、まー言った後で意識あるとは思わんが」

 ピッと一振り、同時に無数の斬撃が飛翔し彼らを蹂躙して――

「させるか!」

「なんっぐぁ!?」

「くっ」

 格摩が拳で応戦、関哉が防ごうとしてもろに直撃し、皐とティンと武旋が回避に成功する。しかし格摩の拳は重なり押し出しながらも舞う刃はそれる何処ろか寧ろ格摩の拳を切り裂いて突き進み、格摩は刃を受け流す。

「やめた方がいいよ。そいつは空間自体をぶった切ってっから。にしても拳で進行が遅れるってすっげーな」

「ッチ、手前何もんだ!? 何で俺達を襲う!?」

「傭兵。これでわかってくんねえかなあってよぉ!」

 言って、森の中でもう一度長刀を振るって刃を放つが同時に皐が木々を蹴り渡って女剣士に切り込んでくる。

「ちっ、はえーなおい」

 皐は空中から居合い抜きから叩きつけ、女剣士は長刀を構えて防ぎ、皐はそこから地上に着地すると納刀して一歩踏み込んで。

「月駆閃ッ!」

 居合い抜きと同時に駆け出し、長刀で防いで受け流す。

「得物が長いと、懐に潜られた時の対応が悪くなりますよ」

「うるせえよ」

 言うと構えからそのまま長刀を投げ捨てた。皐はそれがどうしたと嘯いて蹴りの構えをとった瞬間、目を見張る。

「え……木をすり抜けた!?」

 投げられた刀が、木々に当たってても問題なく回転運動が止まらずに突き進む。一体何が、と思ったと同時に木々にぶつかった後に木の枝が落ちていく。その様を見て、皐は何て鋭い刀と驚きながら回避を選んで踏み込んで。

「温い」

 そう断じて皐は柄を右手に添えて踏み込み、対する女剣士は左手で腰の刀を引き抜いて抜刀の構えを取って皐に相対する。

「ほう、居合い勝負ときますか。良いでしょう」

 言って皐は勝誇って踏み込んでいく。そして女剣士は一歩踏み込んで柄を右手で握りこみ皐に向けて居合いを叩き込んだ。

「タイミングが速い!」

 皐は言って踏み込んだ状態から真後ろに下がる。それで終わりと思っていた。事実、女剣士の居合いは見事に狙いがずれて空を切る。

 居合い抜きと言うのはその特製ゆえに避けられれば当然の如くそれ相応の隙が誕生する。だが。

「はい?」

 一瞬にして信じられない光景が目の前に広がる。居合いを抜いた直後、女剣士は一回転し、鞘を握り込んだ左手をそのまま右手で振り抜いた刀に持っていき、見事に納刀して一歩踏み込んで回避直後の硬直に囚われている皐の元に近寄る。

「なっ――」

「貰った」

 避ける事のできない、予想外の追撃に驚いて目を見開いて、あっけに取られて。

「皐ぃッ!?」

 直後、皐は何かに引っ張られて放たれる居合いを回避する。しかし相手が放つのは腐っても居合い、高速で撃たれた刃は皐の体を掠ってそこにティンが割って入ることで女剣士と斬り結ぶ。

「ぐえっ!?」

 皐は一気に引っ張られて急に停止すると同時にやっと自分が誰かに抱かれてると自覚する。振り返れば木に背中を打たれて苦しそうにしている関哉の顔が目に入る。

「な、んで」

「無事、か?」

「え、ええ……」

 皐はばつが悪そうにティンの方を見る。ティンと女剣士は互いに睨みあって硬直していた。

「ティン、さん!」

「皆、先に行って。こいつはあたしが相手する」

「な、んで……」

 言われ、皐の顔に複雑な感情で表情を歪ませる。悔しさと怒りと絶望、自分が勝てなかった相手を取られる事に、お前じゃ絶対に勝てないと言われたようで。

「私がッ! 私がやりますから、ティンさんが」

「入れ替わってる余裕は無い」

 ティンの鋭い声が響く。それによって関哉は皐を抱えて駆け出す。

「な、何を、してるんですか!? 私は」

「黙ってろ、あいつの言う事は正しい、お前がやれてもあいつがああして睨みあってる今じゃねえと誰も動けねえよ! それがわからねえお前じゃないだろ、皐!」

「……ぐっ、くぅぅッ!」

 苦しげに、皐は黙り込んだ。

「ティン、手前……」

「行くぞ格摩、見張りが居るってこったぁ此処の噂に信憑性が増した。しかも問答無用、それにこいつは事態が事態だ。急ぐ必要があるぞ!」

「……くそっ!」

 格摩は目を閉じ、悪態づいて拳を構えてティンの方に向かおうとして足を止める。

(数貴の話の通りだとしたら……こいつが、何かに巻き込まれてる以上目は離せねえ。こいつは何かに巻き込まれてる、何か途轍もない何かに……何でかそんな気がする。一体何にかはしらないでも絶対大きな何かだ! 俺は――そんなこいつを一人で放っておけってか?)

「何してんだ格摩、行くぞ!?」

「……ああ、今行く」

 格摩は何かを噛み締めたように駆け出す。

 じゃ、また。

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