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好きにしろ(仮)外伝:神剣の舞手  作者: やー
漢達の宴――謡え、野郎共の狂詩曲
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無法地帯での酒宴

 褐色肌の中年男が酒をぐいっと一飲みして。

「何じゃお主、亮をしっとったか。んで、何でまたこんな所に? あやつの居場所は此処から遠いとおもっとったが、何でまたこんな所に。おつかい何かか?」

「おい嬢ちゃん悪いことは言わんから一先ずいいえつっといてこいつを警察にでも突き出しちゃえ、その方がおもろい」

「お主は……これでもワシは副店長なんじゃが」

「で、おいそこのお前、テイル。じっくり嘗め回して味見して将来性を噛み締めるようにリフェルのパンツ覗いてたんならいっそ公表しろ。ファンサービスだ」

 と、店長の声にあわせて酒場の男達が大歓声を上げて一斉に静粛となる。

「いえ店長、そう言うのはひっそり胸に留めておくものでは……と言うかこれ以上新入りとの距離を壊さないで」

「リフェノだって平気だったろうが」

「いえあの子はちょっと例外過ぎる気が。いい子でしたがそのレベルをこの子に求めるのはちょっと無理があり過ぎるかと」

「おら聞きたい野郎共はコールしろうッ! ほれパーンツ! パーンーツ!」

 と、フェルラが態々率先してパンツコールを行った為静粛だった店内が一気にパンツコールでいっぱいとなり。

「もうやだこれえええええええええええッ!?」

 と言う悲鳴が奥から響いた。それでも帰るとか言わない辺り、彼女も根性が座っているともいえるが。

「あーえー、縞々でした」

「おいこら、色いわねえかタコ。模様言ったって誰も得しねえぞこら」

 店長は酒瓶を一口飲み、男店員を蹴りつける。相手は非常に困った様子で。

「あーとー……白と青でした。これで良いですか?」

「うん――もっとデカイ声で宣言。断るなら減俸でいいか?」

「お客サマー! 白と青のコントラストですよー! ご満足頂けましたかー!?」

 あがる歓声と拍手に包まれて男店員は溜息混じりに厨房の奥へと入って行った。

「よぉ、何かもりあがってんな」

「おお、武旋か。おぬしも来たか」

 続いてティン達の席に金髪の大男が割って入ってくる。それを見て格摩が何か反応するが、男の視線はティンに向いて止まった。

「ん? 何かどっか見た嬢ちゃんが居るなぁ?」

「お前さん、スガードから貰った絵葉書をもっとるか? この子、それに載ってた子だぞ」

「お、あれか!」

「って待てよお前ら」

 言って武旋はごそごそと懐を探り始めるが、それを無視してティンが突っ込んだ。更にそれを無視してがさごそと探して。

「おお、これだこれこれ、こいつか! えーと金髪金髪……あれ、いないぞ?」

「よく見ろ、この金髪の長い子じゃねえか? 今は短いけど」

「お、本当だ。こいつかー」

「あのー」

 皐が控えめな様子でそう言うと。

「スガードとは何方の事なのでしょう? いえ、あの孤児院で名称不明の殿方と言えばお一人思いつきますが、どう言った関係で、どう言う方なんでしょうか」

「スガードって、うちの師範代だよ皐」

「ああ、やはり」

「って、あのおっさんスガードって言うのか!?」

 と、やっと関哉が口を挟んだ。そこへ先程の下着を暴露された店員が涙目で手に料理を持ってやって来る。

「お待たせ、いたしました」

「おい手前、辛い事があっても笑顔忘れんなつったろうが」

 料理を並べているリフェルにそう言ってフェルラは彼女の尻を叩く。

「ご、ごめん……ちょっとお昼休憩とって来るね……」

 そう言って暗い表情を見せながらリフェルは店の厨房の奥に向かった。

「なんだなんだ? どうしたってんだ、あいつ」

「まあ気にすんな」

「とゆーかさ……あんたら何人居るんだよ……」

 ティンは辟易した様子でそう呟いて出された料理に手を出していく。

「それより、スガードとはやはり師範代だったんですか。で、どういった方なのでしょうか?」

「ああ、確かに。地味に謎だよな、あのおっさん」

「あやつのこと? んー、女好き」

「無口無愛想、アサシンもどき」

「目が鋭い、顔が怖い、顔はいいのに生かし方を知らない馬鹿」

「ちょっと待ってください、誰の事ですか!?」

「昔の師範代だよ。あの人素はイケメンなんだって」

「なん、だと……」

 ティンと武旋達の会話で約二名が絶句していた。しかし皐は復帰して。

「って、無愛想で無口で目が鋭くて顔が怖くてアサシンもどきの素はイケメン!? イメージが崩れたのですが!?」

「ほんと、誰だよそれ!?」

「ほんとうにだよね……」

 関哉とティンと皐は口々に信じられないと漏らしあう。

「つっても、俺らの知ってるスガードってそう言う奴だしよ……って、お前格摩か!?」

「あー、まー、うっす、にいさん。お久しぶりっす」

 武旋に見つかった格摩は潔く顔を上げて返事をし、その反応にティンが。

「え、兄弟?」

「いやいや、俺のダチの兄貴なんだよ、この人。それで知ってるってだけ」

「そうそう。あ、そうだ。飛風のやつとあったか?」

「リーダーっすか? まあ、一応。でもあのひとたびしてますし俺とぜんぜん会いませんよ」

 そう言ってははっと笑いながらビールを飲み干した。

「そうなのか? ったく、あいつときたら……まいいか。んで、他の面子は如何したよ?」

「それについては、まあ。つっても俺一人旅ですし、あいつらとはもう絶縁に近いもんでして」

「何言ってやがる」

 そう言ってぐびぐびと喉を鳴らして手元に置かれたビールを飲み込み。

「俺の弟がそんなもんで済ますタマかよ。あいつはな、俺らの中じゃ英雄とまで言われてる“漢”だ。大丈夫、あいつがあつまれっつったらおめえらは嫌でも集まるさ。それが、所謂あいつの漢道ってやつさ」

「ははは……リーダーが聞いたら暑苦しくて柄じゃねえっていいそうっすね」

「あの、格摩さん」

 そう言いながら皐はお淑やかな風靡で手を上げると。

「貴方の言う、リーダーとは一体何方で? 英雄などと言う渾名を持っているとは、少々一筋縄では行かない気がするのですが」

「ん、おう。まあ、俺らのガキん頃から付き合ってる連中のまとめ役でな。昔から彼方此方で大暴れしていてよ、そのせいか、その武勇伝を聞いた奴は誇張して英雄とまで呼ばれる始末になっちまってんだ。当人は柄じゃねえって言ってんだけどよ、ま俺がきにとっちゃ完璧な英雄だわな」

「なるほど」

「にしてもよう」

 武旋は席を移動してティンの側によるとわしゃわしゃと頭を撫で回す。

「スガードもこんな面白そうなガキに自分の事師範代なんて呼ばせてんのか、いいなあ師範代。俺も弟子の一人でも持ってみてえもんだ」

「ん、別にそいつでいいんじゃねえか?」

「あん? そりゃゲイルのとっつぁんどういうこったよ」

「おいやめろ!」

 ティンは鬱陶しそうにその手を強引どけさせると。

「そいつぁスガードの弟子だろ? ならそいつは俺らの子分でもあるって訳だ。なんせ、スガードの子分みたいなもんだしよ」

「お、おお! そうかそういやそうだな! ようし嬢ちゃんお前名前なんてんだ!?」

「……ティンだよ、やかましいな」

「よし、ティン! 今日から俺を師範代……じゃああいつと一緒か。えーと、武旋師範と呼べ!」

「絶~っ対やだ!」

 舌をべーっと出してティンは拒絶と嫌悪の意思を示す。

「な、何でだよ? お前、あいつの無茶苦茶理論で剣教わったんだろ? だったら、俺が正しい漢の剣ってのを教えてやる!」

「いるかそんなもん! 大体お前ら無茶苦茶すぎて付いていけないんだよ!」

「いえ、物は試しですよティンさん」

 ティンの明らかな拒絶の意思に皐はそうではないと否定と同時に助言を。

「ティンさん自身、彼らを無茶苦茶だと思っているのならその無茶苦茶に付き合うのも吉だと思いますよ。本当に荒唐無稽な無茶苦茶か、はてまては筋が取った理論なのか。見極めてみるのも一興かと」

「……まあ、確かにね」

 皐の言っている事は確かに間違っていない。ティンが使ってる剣術理論の基礎はスガードの指導によるものだ。間違っているとか云々以前の問題なのは当然だが、だからと言って彼らもその技術について知っている、いや寧ろそれと肩を並べて戦ったことさえあるのだろう。ならば。

「じゃあ……まあ、一応、いいよ」

じゃ、また。

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