竹馬の友
夕方頃、一行の買い物も終わり頃にさしかかっていた。スーパーで保存食などを買い込む一行は一点に集まった。
「こんなもんか。約一か月分買い込みゃどうにかなるだろ」
「だろうな。買い過ぎても荷物がパンパンになるしな……おい、ティン。お前まだ買うのか?」
「んーどれだけ買えばいいの?」
格摩は未だに棚を眺め続けるティンに言葉を投げる。応じるかの騎士は逆に問いを返した。
「ま、そいつは自分の食う量と旅の行き先だな。行く当てがあるならそこへの道筋に沿った買い物が必要だしよ。一先ず、一カ月分買えば問題は特にねえよ」
「ふーん。じゃあこれくらいで丁度いいの?」
「大体はな。お、そーだ。調味料も買っとこうぜ、こいつがあるとないとじゃ食事の楽しさが変わっちまう」
そう言って格摩は目に付いた調味料売り場に向かっていく。
「お、良いなそれ。塩と胡椒がないと肉やいても上手くねえんだよな」
「……果物で十分だろ、お前ら」
「男には肉が必要なんだよ」
格摩が言うと満足気に関哉がうんうんと頷いている。林檎は呆れた顔で。
「……お前らは狩でもするのか?」
「動物と格闘するのだってたまには良い。あれこそ弱肉強食の心理ってもんだ」
「……あたしも、やっぱり肉が良い……」
ティンは瑞穂達共に過ごしてた頃を思い出しながらつぶやいた。面倒ではあったが、確かにああして倒した猪は結構美味かった。
「……はあ、猪を狩って回るような事はするなよ、お前ら」
「いや、んな事はしねえよ普通」
「しないよな、普通」
関哉の言葉に林檎は苦い思い出を思い返すように答える。と、そこに。
「お」
「あれって」
男二人組みがティン達の方へと向かってくる。片方は金髪のライトブルー、もう片方は蒼髪の紺目の男だ。
「おー格摩だー!」
と、近付くなり同時にそんな事を叫んだ。
「……今日は随分とダチに会うな」
「ん、こいつらもお前のダチか?」
関哉は格摩に問うと当人はやれやれと首を振ると肯定した。
「こいつらこそ、俺がお前らに紹介したいダチだよ。っつうか久しぶりだな、おい!」
「は? 何を言ってるんだ?」
「格摩と俺らが友達? おいおい、何言ってんだよ。んな訳ねえだろ」
と、軽く憤るように二人は返す。格摩は一瞬呆けると諦めたように笑い。
「そ、そうか。ま、そうだよな」
「大親友に決まってんじゃんか!」
と、店中に響く大音声で叫びあげた。言われた格摩は何処か嬉しそうに、恥ずかしそうに。
「そ、そっか、そっか。そうだよな、俺ら大冒険も乗り越えた大親友だもんな!」
「おう! 当然だぜ!」
「何あほな事言ってんだよ格摩!」
「お前ら、やかましい」
と、盛大に盛り上がっている所を林檎は冷静にぶった切る。
「わ、悪い。こいつらと居ると、つい」
「全く……で、こいつらか?」
「ん? 何がだ?」
「草叉への苦情を受けてつけてくれる対象」
言うと同時、林檎から驚くほどの殺気が溢れもれ、二人は思いっきり仰け反った。
「い、いや、俺等じゃない!」
「数貴! 数貴って奴!」
「……ほう? さっきの男か?」
「え、あいつ此処にいたの?」
「ん、まあな」
黄色い男の問いに格摩が答えた。とティンが格摩の方を小突き始める。それに格摩が気付くとティンに引っ張られて彼らと少し距離をおいた位置に立つ。
「おいおい、どうしたんだよ」
「いや、何で友達ってのを否定された時に悲しそうな顔したのかなって。何か言いたくなさそうだけど、なんかあったの?」
格摩はげっと顔をしかめ、困ったように頭をかいた。
「そいつは、その。ちょっと色々と、な。実を言うと、さ。俺、実はあいつらとの付き合い、ちょっと短いんだ」
「そうなのか?」
声が前ではなく後ろから飛んで来る。格摩は首を後ろに回すと関哉が立っている。
「めっちゃ仲良さそうだぞ、あれ。俺の見たとこ幼馴染と察するが」
「おう、あいつらは確か4歳からの付き合いだからな。16年も付き添った正真正銘の幼馴染だ。どっちも男だがな」
「……ん? 格摩は違うみたいな言い方するね」
「そうなんだよ、ティン」
格摩は言いながら、どこか乾いた悲しそうな顔を見せると。
「俺、あいつらとあったの10歳。おれとじゃ6年もブランクがあるんだぜ? 知ってるか? 大人の6年とガキの6年って、雲泥の差何だぜ……」
彼からもれる言葉は何処か寂しげで、消えそうだった。
「あいつらはたった6年の間に俺も知らねえ大冒険ばっかしてた。俺との思い出なんてあいつらの思い出の半分がやっとだ。だから、よ。たまに思っちまうんだ、俺はあいつらにとって仲間外れなんじゃないかって」
「そうか。じゃあむこうでも見て来い。あの愚者ども、あれで内緒話をしているつもりなのか?」
哀愁漂うその背中を蹴りつけるように声がする。振り向けば林檎が居て、その先には。
「ホントだ、何か格摩落ち込んでるっぽいけど何かあったのか?」
「あれじゃねえか? ほら、何んつったっけ、格摩やリーダーが好きな本。ほら、あのエロい奴」
「ああ、スケベ本? もしかして良いやつなくて落ち込んでるのか? 仕方ねえ、俺らが買ってやるか。あいつどんなのが好きだっけ?」
「ええっと……確か金髪のおっぱいおっきい姉ちゃんの奴じゃなかった? よっしゃ俺がいっちょ買って来てやっか」
「手前ら何話してんだこらああああああああああああ!? つうかもうちっと小さい声でしゃべろや!? 後変な気を回してんじゃねえよ!?」
一先ず格摩は全速力で二人の肩をつかむと大絶叫を響かせる。
「お前等、デカイ声出すなよ。格摩君の好きなエロ本はロリ系だ」
「数貴手前はどっから出てくんだよ!?」
「だから店の中で暴れんなつってるだろうが」
と、後ろから数貴の声が飛んできた。格摩はバっと店の棚を動かさないように蹴りを繰り出すが数貴はひょいっとお辞儀をして避けた。
「あの先生、いきなり授業が終わるや否や『誰かが俺を呼んでいる』とかいって此処に来ましたが一体なんだって言うんですか?」
「水純、説明ありがとさん。いやあ便利だなあ君は」
「行き成りあほな事言い出して人を連れ回す人が何を言いますか。人が何を言っても聞かないまま連れ回されたこっちの気持ちを考えて下さい」
水純は呆れ顔で数貴の側に立っていた。言った何時の間にそこに居たのか。
しかし、数貴と言う名に一番反応した女がいた。彼女――林檎は殺気と共に魔力を練り上げていく。
「で、貴様が数貴か?」
「草叉について俺は一切の責任は持てん。つうか、俺はあいつに色々やってはやったがそれでも全く懐かれていないし。あいつの電話番号やるから本人に言え」
「……は?」
林檎は唐突に返された言葉に頭が真っ白になった。ワンテンポ遅れて格摩が驚いて。
「っておいこらちょっと待て!? あいつ携帯電話なんて持ってるのか!?」
「持たせた。ちょっと待て」
そう言って数貴は折り畳み式の携帯を取り出し、たんたんと叩き始め、耳に押し当てる。
「ああ、草叉? 俺俺。え? 誰かって? 数貴だよ数貴。え? 何で電話があるのか番号知ってるのかって? だってそれ仕込んだのも契約したのも俺だしあ、切りやがった」
と、数貴は電話を耳から離して画面を見る。そして林檎の方へ向き直り。
「んで、あんた電話持ってる? あいつへの番号知りたいなら送るけど」
「……え、あ、うん。頼む」
「じゃあ貸しな。直ぐにやっとく」
「お前そう言うのだけは本当に手が早いな、おい」
「こうでもしなきゃ捕まらんあいつに文句を言え。あと」
と言って数貴は格摩と肩を組むとすぐに腕を離し。
「お前、盗聴器と発信機を取り付けられた事くらい気付け。結局俺がばらすはめになったじゃねえかどうしてくれる」
「死ねえッ!」
格摩の構えさえ見えないほどの速度で繰り出されるその拳を前に数貴は首を横に倒してかわし、また水飛沫を上げる。
「手前何してんだ!?」
「いやあ、格摩君がまさかあんな事を気にしてたなんて……つい苦笑しちゃったじゃないかどうしてくれる俺の中の格摩君像」
「本気で死ねよ!?」
「だから店で暴れんなって」
「行くか、ティン」
一通りコントを見ていた関哉はそう言った。
「えーもうちょっと見てたいかも。結構面白いし、孤児院の子達とはまた違ったからみだね」
「そりゃ、野郎と女子じゃ雲泥の差だろ。と言うかあいつらと一緒に居ると乱闘騒ぎの犯人扱いされかねん」
そう言って関哉はそそくさとその場を離れていく。数貴はひょいひょいと繰り出される攻撃を避けると蒼髪男の背後に回り。
「おいこら、みせん中で暴れんなって言ってんだろ。おい氷牙ちょっと押さえて来い」
「え、俺? でもそれこそ大暴れになるんじゃ」
「んじゃビリーって……おい、あいつ何処だ?」
「待ってらんねーってどっか行った」
「さらば友よ、お前の事は忘れ――あれ、もう一人いたような気がするけどまいっか」
数貴はそう言って飛んで来た格摩の拳をひょいっと避け、氷牙はその拳を受け止めた。
「止めんな手前!」
「いい加減にしろって。ここ店の中だぞ」
「そいつ、ひょいひょい避けるからむかつくんだよ!」
「受けたら大惨事だろ」
「おい格摩、もう買い物済ませるぞ。随分と人も集まったし、警備員も来ると思うぞ」
と、そこに林檎が割ってはいる。気付けば周囲を色んな人々が取り囲んでいた。
「……手前は後で必ず殴る」
「へいへい」
そう言って格摩達はこの場から立ち去った。
ティンの影が薄いが、まあ気にすんな。あと、いい加減50を超えたので適度かつテキトーに設定及び解説でも置いていきます。
今回のでいうと特にはありませんね。強いて言うなら格摩君は実は8歳の頃から修行として冒険家をやってるベテラン冒険家で実は世界中にあらゆる意味での知り合いがいますし、こう見えて世界の一つも救ったことがある英雄達の一人です。
そして、林檎の言う猪を狩って回るというのは説明する必要性を感じませんが、瑞穂と同行してたときに散々やったからです。おかげで林檎は覚えたくもないのに効率のいい野生動物の狩り方を習得してしまうことに。
じゃ、また。




