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電気と人格の関係性

「それで瑞穂、用事は何? まさかただ会いたいからってだけであたしを呼んだわけじゃないよね?」

「行き成りそう断言されるのも微妙だけど、まあそうだよ」

 と言うことで一向は電気街の一角にあるメイド喫茶に入った。有栖は席に座ってもなおそわそわと落ち着かない様子で周囲を見る。

「……なあ火憐、何故メイド喫茶に抵抗も無くは入れるんだ?」

「え、普通じゃね?」

「ふ、普通、か?」

 有栖は言いながら周りを見る。周りに居るお客さんはいかにも電気街のパソコンショップなどに行っていそうな人間が居るが、よく見てみると何故か武装した旅人は筋肉隆々の冒険者なども居る。

「……普通、なのか?」

「普通だろ。他の店と言い方違うだけで殆ど一緒だろうが」

「私、生まれて初めてお嬢様って言われました……」

「ねえねえ、メイド服ってあんなに派手だっけ? あんなに薄着だっけ?」

 雪奈(黒髪仕様)は感動してると言わんばかりにそう呟く。ティンは前に見た本職のメイド達に比べるとやたらと露出の多いメイド服に頭を捻る。そんな彼女達を放置して瑞穂と選れなの会話は続く。

「えーと……ま、漫画みたいな現象って本当にあるんだねぇ……」

「で、エレナさんを呼んだ理由ってのはね。人間の身体って電気が流れてるよね?」

 瑞穂(銀髪仕様)の言葉にエレナは直に表情を変化させる。それは眉を顰め、難しい顔をする。

「確かに、人間には電気信号が脳に走っているよ。もしかして、機械か何かでリンクさせて二人の人格を交換させる、何てこと言いはしないよね?」

「話が早くて助かる。そう言った機械や術式ってある?」

「待って、ちょっと待って。もしかして私にそういう技術や機械とかあると思ってる?」

「まあ、近いね。その言い方からすると無いみたいだけど」

 瑞穂の変わらぬ仏頂面に対してエレナは深い溜息を吐くと。

「……いやさ、幾らなんでもそんなものがあるわけ無いじゃない。あったとしてもそもそもあたしは分野が違いすぎる! 基本的にあたしは技術開発で、それも兵器開発、よくて家電製品開発だ! そんな人体を弄る様な術式はあたしも分からないよ」

「でも理論的には出来なくない?」

「ご免、それは本当に無理だ。何より人体の精神を弄り回す術式が無いとは言えないけど、あったにしても人の手によって作られた魔法が人の体に直接作用する効果を持った魔法があるとは」

「でも実際、命属性魔法で生み出された品種改良された果物はきちんと人体に影響するよ? 更に言えば電属性魔法で筋肉麻痺が起きたりするよね? そう言う事を考えると魔法が人体に干渉できないのはあくまで死に関してだけでそれ以外は干渉できるんじゃない?」

「いや、なら尚更だよ。人格を取り出し手入れ換えるなんてそれこそ死ぬかも知れない。それに人格に釣られて魂が連動して出て来る可能性だってある。そうなると下手をすれば魂が帰る場所を失って死んだも同然となる可能性もある」

 瑞穂とエレナの会話は隣で聞いてはいても真面目に聞き入っている人間は有栖だけだ。他の人達は適当に注文をとって適当な雑談を行っていた。

「なあ、エレナ君は電属性魔導師なのだろう? なら電属性魔法で人体の電気信号に作用したり、そう言った効果を持つ魔法に聞き覚えは無いのか?」

「それについては本当に疎いんだ。そもそもうちの村ではそう言った研究は行っていないし、しているにしてもそもそも基礎理論の時点で違う」

「だけどエレナさんは脳内通信できるよね?」

「それだって別に人体の電気信号を云々って言うより電気魔導師の電気信号を受け取って解析出来ると言う力を利用してのものだよ? 始まりそのものが違うんだ、人格交換とは程遠いよ」

「他にはエレナさんの体の魔力回路を弄ったりとかは?」

 瑞穂は以前エレナとあった時の事を思い出し、彼女の体のことについて指摘する。

「あれも違うよ。あれは人間の才能を強引に抉じ開けたような物だからね。理論そのものから違う」

「うーん。じゃあ電属性魔法で人格に影響があるものとかは?」

「残念だけどそれも。そもそも分野が違うんだよ瑞穂。君の氷魔法で例えると氷と冷気を一緒くたにされて納得できる?」

「……確かに違うね」

 瑞穂は眉を顰めると呻く様に応える。

「でしょう? だから正直あたしには分からないんだ。寧ろ瑞穂たちのほうが知ってるんじゃない?」

「……と、言うと?」

「あたし達は正直狭い範囲を深く掘り下げる研究をしてたからね。広く浅く勉強していた瑞穂達の方が知ってるんじゃない?」

「……ご免、こっちにもそれについては不鮮明。余程の上級魔法なのかな? 有栖は知ってる?」

 瑞穂に話を振られた有栖はふむと顎に手を当てて考えるが。

「悪い、私も分からない。確かにそんな魔法は聞いた事が無いな」

「それにそう言った魔法があるなら、寧ろ闇属性の方だよ」

 エレナがそう言うと有栖は不意を付かれたと言わんばかりの表情を見せる。

「どう、いう?」

「ん? 闇の魔法の特長には恐怖と言うものがあるでしょう? あるんだよ、中には」

 そう一度切ってエレナは言った。

「精神、人格に影響を及ぼす様な魔法」



 所変わって図書館入り口。有栖は図書館の中から出て来ると幾つか本を手にしている。どうやら幾つか借りたらしい。

「驚いたな……私は闇属性魔法の研究をしていたが、こんな種類があったとは……」

「どういうものがあったの?」

「ああ……直球に言うと、あるぞ。人格交換魔法」

 有栖の言葉に一同はざわつく。

「だが、これは一時的なものだな。相手の表層意識を魔法でリンクさせて混乱させると言う類のものらしい。だが、最上級クラス。それも禁呪魔法ともなると本当に人格を交換する魔法がある様だ」

「本当? 直に出来る?」

「出来ん。これはあれだな、自身の体を生贄に捧げて相手の体を奪うと言う、不老不死の類らしい。他には、それの劣化版とも言えるものもあるが、これも術者と対象の交換……つまり私との交換になるな」

「ならローテーションを組めば」

「大掛かりな儀式術式を用意する必要があるぞ? 更に数年単位での準備も要る、昔からそう言った研究をしていたなら兎も角、今からやるには時間がかかり過ぎる。しかし前例なら幾らでもあるようだ」

 そういうと有栖は得意げににやりと笑った。

「用は、これを他者に、自身を仲介人としてやれるようになれば良いのだろう? 任せろ、解析と研究なら私の十八番だ」

「ああやって得意げでいるがな、あいつが外出するときまで女として最低ランクのクォリティだったぞ」

「うん、アレは酷い。今でこそ年齢相応だけどアレは実年齢に+二十はされていたと思う。人間って凄い」

 そんな得意げな有栖を尻目に火憐と瑞穂は荷物から一枚の写真を取り出した。その中の人間は黒紫の長い髪の女性が白衣にスーツと言う出で立ちであった。目の下にはくまがあり、やたらとやつれた表情をしていて歳は四十近くはあると思える女性の写真だ。

「……これ、が?」

「うん。ビフォー」

 恐る恐る指差すエレナに応える様に瑞穂は頷くと写真を指差し。

「アフター」

 言いながら次には有栖を指差す。つまり、このジェスチャーが正しいのならこの写真の中の人物は久城有栖本人であり同一人物と言うことになる。

「……任せて大丈夫?」

「多分」

 ティンの心配そうな言葉に瑞穂はそう返した。

 じゃ、また

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