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黒猫との再会

「――無拍子なら、俺も切り札を出す所であった」

「あたしは切れて良いの?」

 ティンは顔に青筋を浮かべながら亮を睨む。

 あの時の交差の結果は――相打ち、と呼んで良いのだろうか? 亮がティンをたたっきり、ティンが亮を切り裂いた、が直後に吹っ飛んだのはティンの方である。で、彼女は木に叩き付けられて一瞬気絶したのであった。そして教えられのは更なる切り札があること、さっきのが自分にとっての最大の大技を使ったのにしかも相打ち。つまり、自分はどう足掻いても勝てなかったと言うことなのかも知れないのだから。

「何故だ? この俺に切り札を出させかけたのだ、十分スガードを驚かせられるぞ?」

「その言葉だけであんたがどんなぶっ飛んでいるのかよく分かった」

 ティンはそれだけ言うと立つと体中の彼方此方に付いた木屑等を払い落とす。

「では俺は行くが、貴様はどうする? 良ければ俺と共に行くか?」

「……嫌」

 ティンは物凄く嫌そうな顔ではっきり言った。

「そうか、ならば仕方ない。では、またいつか会おう」

「あまり会いたくない」

 そう言って二人は別々の方向へ歩き出す。



 ティンは森を抜けると荒野に出た。目的も無く、適当に歩いているとティンは何かを目にする。

 それは戦闘。ティンはそうと分かるとどうでもでいいと言わんばかりに目を反らす。が、その瞬間、何かが見えた。

 長い黒髪――それならどうでもいい。

 白と黒と紺の服――それでもどうでもいい。

 そして、ネコミミの様に頭の上で跳ねた揉み上げ――ティンは二度みする。そんな髪型の女性に見覚えがある気がした。

 最後に、細い体つき――完璧だ。完全に見覚えがある。そう、その女は――。

「瑞穂!?」

 何度か似た人を見た。だが、今度は違う、完全に一致だ。完全に瑞穂だ。しかし、何故だろう、彼女出会っている筈なのに彼女と感じられない。何故だろうか? 姿は一緒だが、こう手付きやポーズが非常に女性っぽい。いや、彼女は仕草から何から女性らしいとティンは思っている。だが、雰囲気は勇ましく、そこだけは女性らしくなかった。

 だが今の彼女を評するなら、完璧。見た目、仕草、正しく完璧な大和撫子と呼ぶべき人物だ。しかし何故だ? 何故?

 だがもうどうでもいい。ティンは弾ける様に瑞穂の元へと駆ける。

「瑞穂おおおおおおおッッ!!」

「っ、ティンさあああああああああああんッッ!!」

 さて、この瞬間、文脈だけではティンの混乱模様は伝わらないと思われる。何故なら、ティンの名を呼んだのは――瑞穂ではないからだ。そう、瑞穂ではなく、近くで戦ってた長い銀髪の女性の方だった。

「……えっと、誰?」

「こんの、馬鹿女あああああああああああああああああああああッッ!!」

 ティンが混乱してると銀髪ロングの女性がティンに向けて頭突きを送り込んだ。当然呆けてた所にやられてたので真っ向から受けた。

「瑞穂さん!? それ私の身体なんですからもっと大事にしてくださ~い!」

 とそこで泣きそうな声で瑞穂(・・)が叫ぶ。ティンは余計に分からない。一体何がどうなっているのか? 後、瑞穂の声にしてはやけに高いと言うか大人しい気がするのはきのせいだろうか。

「おーい、瑞穂ー、一応今戦闘中。後馬鹿女はお前の専売特許だ」

「おい火憐、そんな冗談を言ってる場合か!?」

 続く様に言ったのは黒紫のセミロングヘアの女と朱色のショートカットの女。これら二人もティンは初めて会う。そして戦闘相手は――。

「仮面の連中!? 何で、瑞穂を狙うの!?」

「知らない。取りあえず全員ぶっ潰す」

「いや、だからあんたじゃない」

 ティンは隣に立つ銀髪の女性にすっぱり言い切った。そう言えば、何故彼女は瑞穂と呼ぶと一々反応するんだろうか?

 それはおいとくとしてティンは近くに来た仮面Aを切裂く。その動きは間違いなく瑞穂を狙っており、完全に相手は自分ではない。

「……なあ有栖どうする」

「ふむ、彼女が瑞穂の話に聞いてた子か。まあ、現状の説明は面倒だからいいだろ」

「今、私は瑞穂さんじゃありませーん! 今、瑞穂さんと人格が入れ替わってるんですー!」

「……は?」

 ティンは一瞬頭の中が空になる。人格が入れ替わるって何? それどういうこと? あれ、そう言われたら確かにこの状況を一気に解説できるがあまりにもぶっ飛んでいる。とそこに。

「ぼけっとしてんじゃね」

「――え、何?」

 火憐がティンに殴りかかるが、直後に殴りかかった火憐はティンの手によりその勢いを利用して投げ飛ばされると同時に切裂かれる直前でその刃が止まる。

「あっぶね!? おまえなにしやが」

 と叫んだ所で火憐の背後から仮面Bが殴りかかるが。

「ぺしゃんこになれぇぇぇーーっっ!」

 同時に銀髪の女性――これが瑞穂らしい――がその仮面Bを氷のハンマーを振り下ろして凄い金属音を響かせながら叩き潰す。

「ティンさん、今の動きって相手を見ずに、意識せずに動いたよね。もしかして無意識の時に敵意を向けられると勝手に身体が動くの?」

「お前ほかに言うこと無いのかよ!?」

「火憐、無事で良かったね」

「お前はもう黙れぇぇぇっ!」

「……かれん?」

 ティンはふとその言葉に反応する。が、ティンの周囲が鉄の森にすげ代わった。突如地面から生えた鉄の森、いや刃の森と言うべきか。一体何がどうなっているのか。

「お前ら、人一人に働かせておいて楽しく閑談とは良い度胸だな」

 声に導かれて顔を向けてみると黒紫のセミロングの女性――有栖と呼ばれた女が立っている。彼女の体中から刃が突き出ており、見るからに痛そうだが直に刃が引っ込み、森も地中に帰っていく。そこには何も無く、居る筈の仮面人形達もいなかった。

「ああ、悪いな有栖」

「それだけかお前」

「あれ、有栖。何をしてるの?」

「お前らが漫才をしてるから片づけを一人でしてたんだ」

 銀髪瑞穂は有栖のほうへと振向いて問うとそう返す。

「あ、ごめん。有難う」

「いいさ、彼女がお前の探してた人なのだろう? ならば見つかった事自体を喜ぼう」

「うん、取りあえず」

 そう言って瑞穂は、握り拳を作るとティンを思いっきり殴りつける。突然の殴打にティンは反応しきれず殴り飛ばされる。ティンは荒野をごろごろと転がってやがて止まった。そこに朱色の髪の女が立つ。

「おまえ何やったんだ? あの瑞穂があそこまで切れるって早々無いぞ? 一体何をどうすればあいつがあそこまで怒るんだ?」

「え、えっと……浅美を、怪我させた」

「……は? 何それ? あいつんなことで怒らねえよ。お前他に怒られるようなことしてねーか?」

 ティンは彼女を怒らせるようなことを思い返して、言ってみるが目の前の女はあっさりと否定する。では、一体何をそこまで彼女を怒らせたのか。

「……思い、浮かばない」

「なわけ無いだろ。ほら、浅美に怪我させた後に謝るの忘れたーとか無いか?」

「……あ、うん。その後、これ以上、迷惑かけちゃいけないと思って、黙って、出て行った」

「――おい手前それ本当か」

 女の雰囲気が、表情が変わる。何かしらの表情があったが、それが一気に無に変わった。

「……ああ、そら切れるわあいつ。後さ、土産と言っちゃ何だけどさ」

 そう言ってから女は一度切るとティンの頭を掴み上げると。

「歯ぁ食い縛れ」

 今度は間違いなく、重い拳がティンの顔面に突き刺さってティンは更に遠くへとぶっ飛んで荒野をごろごろと転がり、今度こそ意識を失った。


「自己紹介が遅れたな、あたしは火憐だ」

「まあ、酷過ぎるファーストコンタクトだとは思うがな。後私は久城、久城有栖。そこの……あー今人格が入れ替わってるが氷結瑞穂の級友だ」

「……かれん? また?」

「またって何だまたって」

「言葉通りだろう。『かれん』なんて名前珍しくない」

 ティンの言葉にセミロングの女――有栖はそう言った。

 此処は近くの街の喫茶店。五人はそこでお茶を貰っていた。ちなみに銀髪瑞穂も黒髪瑞穂も一緒である。一応ティンに現状を教える為に、と言うか二人の今後についての相談である。

「えっと、シスターにもカレンってのが居たし、後あたしの幼馴染に華梨ってのがいるし」

「待て、華梨は流石に無いだろ、一文字違いだろ、区別は付くだろ、つーかシスターカレンって何だ!?」

「取り合えずどうでも良いから置いとこうよ」

 銀髪瑞穂の言葉に火憐は『全くよくないが』と返すがティンはいい加減解消するべき疑問をぶつけることにした。

「で、今黒い髪の瑞穂誰なの?」

「あ、はい。自己紹介が遅れて申し訳ありません。私は蒼末雪奈といいます。えっと、瑞穂さんの身体の持ち主です」

「……さて、所でティン君。一つ聞きたいことがあるんだが」

 と、苦しげに有栖が言い出した。それを察したのか、火憐も瑞穂も雪奈も顔をそらす。ティンは一体何のことか分からずに首を傾げる。酷く微妙で静かな空気。席に注文を取りに来た店員にティンは取り合えず手当たり次第に注文を頼もうとした瞬間に瑞穂が追い返し、有栖はとうとう言葉にする。

「――何処から、説明しようか」

「うん、要らないや」

 一先ず、説明されても一切理解出来ないのを分かってたティンは即答した。

 え、一体何がどうなってるのか分からないって? まあ今は置いておくとして次回にまたー。

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