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剣術小町三人集

「いや、あのね皐さんやちょっと聞いてはくれないか? いやね、別に自分の胸に不満は無かったんだ、うん。ぎりCカップだし虐めとか無いし単純にぷるんぷるん揺れるおっぱいに憧れたりもする訳でしてね」

「そう言えばティンさん、イメージチェンジですか? 髪をばっさりと切りましたが」

「えっと……ちょっと、ね。似合う?」

「そうですね……ティンさんは何時も明るいので余計ボーイッシュに見えると思いますが、ああでも伸ばしたままの揉み上げが良い感じ出してると思いますよ」

「うん、私を無視するの止めてくれないか!? 結構心に響くんだけど!?」

 ガタッと音を立ててエグネイは席から立ち上がって宣言する。が、皐もティンも一瞬顔を向けるだけで。

「この海老シュウマイ美味しいですね」

「本当だねえ。あ、あたし焼き餃子もう一つ!」

「ふっ、この乳に劣等感を感じて無視しやがるぜ……」

 エグネイは不貞腐れた様にそっぽ向いて悟った様に語る。皐は溜息混じりに彼女に振向くと。

「あの、エグネイさん。正直見苦しいと思いますよ」

「ねえねえ、そう言う言葉がエグネイさんの心を引き裂くって知ってる?」

「へえ」

「ふーん。あ、焼き餃子来た来た! ご飯も欲しいね!」

「では炒飯も取りますか? 油物ばかりではあれですし、野菜の類も取りますか」

「だから無視は止めようよ! 私泣くよ!?」

 エグネイは涙目でオーバーリアクションを行う。皐は溜息混じりに。

「あのですね、別にエグネイさんがどんな巨乳になろうと私からすればどうでも良いのですよ」

「よくない! 良くないよちっとも!」

「ではどうしろと?」

「……気の済むように言わせて」

「どうぞ」

 皐は手の平を差し出して先を促す。エグネイは頷くと。

「そもそもの始まりはだね」

「長いのなら食事をしますが、宜しいですか?」

「聞く気ある!?」

「ティンさんは初めから無いようですが」

 そう言って掌の先をティンに向ける。そこにはもっしゃもっしゃと肉まんを頬張るティンが居た。

「そいつはいいよ。聞いても分かんないだろうし」

「ほむ?」

「ああ……剣路剣術道場って知ってます?」

 ティンはその言葉に何かが引っ掛かった。何処かで聞いた様な気がするなと、そう頭が判断する。しかし、一体何処で? 何故そんな言葉を見聞きしているんだ? と頭を回し始めた途端、何かが引っ掛かった。そう言えば。

(女王陛下に言われたな。えっと、ゆーこ、だっけか。あの真っ黒女が剣路剣術道場で決着を付けるだのどうだのって)

 と、そこまで思い出すとティンは。

「えっと、ゆーこって女が待ってる道場だっけ?」

「……はい?」

 皐は素っ頓狂な声をあげ、エグネイは目を見開いて驚いたような表情を見せる。

「な、何でお前、優子ちゃんのこと知ってるんだよ?」

「え、っと。何か良く覚えてないけど、どっかであって、喧嘩売られて因縁付けられてそうそう、剣路剣術道場で決着を付けるから来いって」

「……優子さんらしいですね」

「優子ちゃん、暫くどっかへふらついてると思ったらそんな事してたのか……」

 皐は呆れた様な表情を見せ、エグネイは頭を抱えながらうなるようにいった。

「んで? 決着は剣路剣術道場でって? 相っ変わらず古風なのか硬いのか分からん人だなぁ」

「で、話を戻しますが」

 言いながら皐は焼売へと箸を伸ばし。

「エグネイさんは見苦しい空気の中、一体何が言いたいんですか?」

「……皐の毒舌は相変わらずだな、うん。と言うか堂々巡りになるからこのまんま行くけど、マリちゃんが豊胸グッズに手を出したがってたからさ、面白半分で」

「すみませーん、レタス炒飯とスタミナ炒飯を」

「聞こうか、人の話!?」

 エグネイの台詞を遮る様に皐は注文を行う。対するはエグネイはもういいやと無理矢理話を進めることにし。

「とりあえず、巨乳には興味もあったし一緒に買おうって通販頼んだんだよ」

「お金は何処で? 後水餃子をお願いします」

「あ、あたしでか焼売食べるー」

「注文、控えようか。まあね、お金は色々工面して買ってさ、大体一ヶ月くらいに効果出てさ、Dに成長しててびっくりしてさー」

 皐はエグネイに目もくれずに餃子を食しながら。

「胴体が太くなってバストサイズと勘違いしたのでは?」

「喧嘩売ってんのかお前は……まあ、優子ちゃんに言われるまで知らなかったから良いけど」

「……ん? カップサイズとバストサイズが違うのって普通皆知ってるんじゃないの?」

「ああ、山凪孤児院では健康測定ではカップサイズの計測もしてますからね」

「へえ、そうなんだ。でさ、そこでもういいやと思って使うの止めたんだがな……それから一週間後くらい、胸がきつくなったのを感じてさ。測ったら……Eになってた」

 エグネイはさも奇妙な話のように語る。対する二人は。

「この海老焼売美味しいねー」

「あ、炒飯来たようですよ」

「君達は人を怒らせる天才だなぁ、うん」

 エグネイは笑顔で額に青筋を浮かべながら人の話を全力スルーして食事を続ける二人組みに怒りの視線をぶつける。

「そう言われましても。一年ぶりに再会した友人が変わった理由があまりにも下らない理由ですし、そんなことを延々と語られる私の身にもなってください」

「おいこら、友人の真摯な願いを下らないと言ったか」

「あ、焼売一つ貰いますねー」

「食ってないで聞けええええええええええええっっ!」

「五月蝿いよ、エグネイ」

 と、エグネイが絶叫しているとティンから指摘される。

「ほら、何時もやかましいティンさんにまで言われてますよ」

「皐、喧嘩売るならもっとはっきり言おうか」

「え?」

「ああ、うん。皐のそれは天然だからスルーしたほうがいいぞ。」

 ティンはむっとした顔で皐の言葉に反応し、エグネイはそんなティンを諌める。

「でさ……それ以来、もうがんがん成長して今ではこうなってしまってさ」

「で、今のカップは?」

「……言わなきゃ、駄目?」

「さて、次何を注文しましょうかね」

 エグネイはばつが悪そうに視線をそらした瞬間だ。皐はもう終わったと言わんばかりにメニューを手に取り読みふける。

「いやぁ、皐は人の心折るの好きだねぇ。終いに切れていいかい?」

「あの、そっちから話し始めておきながらそれは理不尽と言うものでは」

「く、くそ! 今のカップサイズか? ……Lだよ」

「……エグネイさん、優子さんって確かカップサイズの測定方法知ってますよね?」

「うん、優子ちゃんも測ったとき十秒くらい絶句してた」

 エグネイは皐の如何でも良さげな言葉にそう笑って返す。そして次に絶句したのは皐だった。

「皐ー、肉まん貰うよー」

「皐、呆気に取られるのは良いが肉まん食われてるぞ」

 言われた皐は「あ」とだけ言ってティンの口に運ばれた肉まんを見詰める。

「……まあ、それで?」

「ん、私の方はこれで終わりだけど。っつか、お前ら遠慮なく食うなよ。私の分は?」

「ああすいません。追加で注文しますね。で、マリさんは? あの人も少しは膨らんだんですか?」

「……止めてやれよ。あいつだってあんな胸板でも元気に生きてんだぞ」

「ああ、変化無しですか」

 エグネイは涙ぐみながら残った海老焼売を頬張り、皐はスープを啜った。ティンはその様子を見ながらレタス炒飯を頬張る。

 と、此処でティンは目が覚めた様に周りを見渡す。

「どうかしましたか?」

「いや、別に……」

 ティンはそう言って付いてきたスープを飲む。

(何でだろ、紗羅が泣いてるようなきがした……なわけないか。あいつには華梨が付いてるし、十四人もあいつには妹がいるんだ。泣いてなんて、居ないよな……いない、よな?)

 では、今日はこんな所で。まったねー。

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