姫と騎士―砕けた絆―
注:嘔吐のシーンあり。食べながら読むのは止めよう。
リフィナと言う少女について語ろう。
彼女が幸せであったと胸を張って言えるのは三歳前後の頃だけである。理由を述べると、三歳前後の頃、彼女の人生に転機が訪れたのだ。
そう、小さい村で起きた戦闘行為により、彼女の家が吹っ飛ぶと言う。
村の中で起きた小さい戦争と言うべき戦闘であった。詳しくは述べないし、今は関係も無い。ただ言えるのは敵国同士の戦闘行為の結果村は壊滅し、家を失った彼らは戦争難民として教会に保護された、と言う事実のみ。
教会によって支給されたのは簡易テントと寝具、そして仕事が見つかるまでの食事の配給や衣服の提供などなど、いたせりつくせりの待遇であった。無論、最低限のものではあるが。それでも家を失った彼らには有難かった。しかし、最低限の食事。パンとスープ類だけの生活。別に栄養に不足は無かった。だが、リフィナの両親は娘にひもじい思いはさせたくないと色々と努力する。積極的に職を探し、自分達の食事を削ってまでリフィナに食事を与え続けた。
だから、だ。そうまでして自分を育ててくれた両親だ。何かしてやろうと、一桁の年齢の少女でも思うのが普通だろう。
実際リフィナもそうだった。両親を少しでも楽にしてやろう、と思って自分の一番得意なことを探した。結果、自分の才能――光の魔法を扱えると言う、それも他人を見下せるレベルのものを持っている事実を知るのはそう遅くは無かった。次に彼女が考えたのは無論、それがどう両親の役に立つか、立たせられるのか。考え続けた。
光属性の魔法で商売するのは難しかった。だから魔法の勉強して、研究の道に行くことに何の迷いも無く、同時に親元から離れて生活すると言う決心も早々につけた。両親の元に居たい、それは彼女の本音ではあったが、どうしても教会の保護下にいると奉仕活動の手伝いなどで魔法の勉強が出来ない。時間は作れても、一つの場所に留まっていて出来る勉強も研究も上手くいかない。
だから、彼女は、リフィナは旅に出る。親元を去り、遠い街へ、魔法の勉強をし、研究する為に。
遠い土地に向かうのに、両親を置いて行くことに少しも躊躇いはない、と言えば嘘になる。が、それでもリフィナは旅に出た。魔法の研究を行う為に。当時八歳の彼女は溜めたパンと支給された服だけを持って旅に出る。決して楽とは程遠い旅へ。
最初の困難は、冒険初心者への手痛い歓迎だった。攻撃用の魔法を習得していなかった訳ではないが、それでも彼女はゴロツキ紛いの冒険者達に虐待と呼んでも良いほどの暴力を受け続けた。
「い、痛い、やめてっ! やめてよ!?」
初めの内はこう言った。言い続けた。だが、それでも相手は言われれば言われるほど愉快そうにリフィナに攻撃を行い続ける。
剣で突き刺し、蹴り付け、斧を投げつけ、槍で払い、魔法を叩き付ける。幼子だって関係はない。これらの武器は非殺傷設定もあり、一切外傷は出来ないのだから。それが彼らから良心の呵責と言うものを奪い去る。
相手は旅を始めたばかりの剣士、格下の魔法使いだけを狙う魔導師、魔導師だけを狙う戦士。こういった者達はリフィナに対して一方的に勝負を仕掛け、踏み躙る様に攻撃を加え続けたのだ。中にはそんな彼女に手を差し伸べる者達だって存在したし、リフィナもそう言った優しさが本当にうれしい感じていた。いた、が。
ある日気付いた。それは優しさではなく、ただの同情であると。
そして気が付いた。誰も自分を人間として見ていない。哀れな仔犬か何かであると。
気付いた彼女は即座にその差し伸べられた手を跳ね除けた。
「何だよ、折角助けてやったのに」
その言葉がリフィナの背中を切り裂くように貫いた。ああ、誰も自分を人間ではなく、人間以下としか見ていないのだ。
「気持ち悪い」
リフィナはただそうもらす。
「気持ち悪い、きもちワルい」
気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ちワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルいキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイ――。
そう思うとリフィナはどうしようもない吐き気が訪れた。そして、今まで優しくしてくれた分を吐き出す様に嘔吐し続けた。草の根掻き分ける様に探して見つけて食べた物から終いには胃酸まで。
大凡吐けるものを吐き出した後、彼女は歩き出す。体中に刻まれた屈辱の証を引きずって。
折れる訳にはいかない。何故なら――。
「絶……対、あいつら、見返して……踏み砕いて、やるッッ……! 馬鹿に、しやがって……ッ!」
もう、この時点で当初の目的を忘れていた。
旅歩いていた彼女はある日、魔法の研究を行っている者達が集まっている町にやって来た。当時リフィナ十一歳。
「ようこそ、リフィナ君。この町は君と言う存在を歓迎しよう」
「今まで魔法使いだからと虐められたのだろう? 此処なら大丈夫さ。一緒に心行くまで研究しようじゃないか。共に魔導師の地位向上をしよう。大丈夫、此処にいるのは、君の同志達だ。君を虐める者は誰もいないよ、リフィナ君」
「ほん、と?」
「ああ本当さ。だから一緒に行こう――」
町の住民は、十を超えた少女の旅人である彼女を同志として受け入れた。この時、リフィナは三年近く久しぶりに純粋な人の温かさに触れ、思わず涙を流す。
しかし、これは直ぐに裏切られる。
「や、やめてッ! ノート、返して!」
「五月蝿いな、天才様にこんなもの必要ないだろう?」
「な、なんで、どうして? やめて、返して、返してよ!?」
二年。
研究都市に流れてからこの間。この僅かな間だけで多くの人間が彼女に対して陰湿な虐めを始める。なぜか? 単純だ。それほどに、彼女の魔導師としての素質があったからだ。誰が見ても同業の者なら畏怖さえ通り越して神々しくさえ見えるほどにリフィナは優秀、かつ天才的な才能を持っており、誰もがその才能に嫉妬した。彼女が研究室を留守にすれば荒れに荒らされ、研究資料として借りた本は盗まれ、その影響で図書館から資料さえ借りれなくなるどころか、出入り禁止まで言われる始末だ。
「く、そ……ッ! 何が、同志だ……ッ! あの、嘘吐き共……ッ!」
分かり易いほど、彼女の瞳には憎しみと怒りが宿っていた。
誰もが、リフィナの持つ才能に劣等感を抱いた。彼女が抱かせ、周囲からの虐待によってその研究はより加速して行くと言う皮肉な結果を生む。
これが、彼女の歩み。彼女が味わい続けた屈辱と恥辱と苦しみに満ちた人生。まあ、幼い少女が旅に出れば大体こうなるだろう。
ティンが目を開けて最初に目に入って来たのは、白い双丘であった。
「……大福、食べたい」
「ええっと、大福は持っていませんね」
『おい、後で誰か大福を買って来い』
『おいヨハン、今のはどう見てもセクハラ発言だぞ』
「アルバート、貴方は黙りなさい」
水穂は浮かんでいる魔法陣を一つデコピンで消し飛ばす。が、直ぐに新しいものが生み出される。
「……何それ」
「ああ、教会で製作された専用の通信術式です。市場に出ている物より優れているのですよ」
『水穂様、そもそも市販の術式は軍隊で使いませんから、そもそも維持魔力の時点で雲泥の差かと』
「ヨハン、貴方はもう帰って良いわ」
魔法陣の向うでため息が漏れた。ティンは取り合えずと。
「えっと、家族?」
「似た何かです」
『血が繋がっていらならもう少しお淑やかに育てます』
『右に同じく』
「貴方達は……」
水穂は頭を抑えて溜息をつく。ティンはその様子を見て肩を落として凄い微妙な空気を感じる。
「……ねえ、どういう状況?」
「えっと、今はお夕飯時です」
ああとティンはやっと空腹な事に気付いた。と言うか。
「って、もうそんな時間なの!?」
「え、あ、はい。実を言うとティンさんは地味に凄いことしていたんですよ? 半日間、貴方は神剣を召喚し続けていたのです。本来、神剣を人間界に存在させるには高位ランクの魔導師でも一時間も持てば凄い方なのに、十時間以上も限界し続けられるとは……凄まじい魔力量ですね」
「……へ、へえ……」
水穂は解説すると懐から幾重にも重なった箱――見ただけで分かる、弁当箱だ――を取り出す。
「では食事にしましょう。地下教会では時間の概念が忘れがちですから、休める時に確り休みましょう」
「え、えっと、食べて良いの?」
「どうぞどうぞ。私が作った物ですが、料理の腕は保障しますよ」
『それについては私からも』
「アルバートは黙りなさい。副神官長として命じます」
アルバートはやれやれと肩を竦め、水穂は弁当を展開する。中身は色取り取り、さまざまな食材がある。取り合えずティンはから揚げやミニハンバーグに手を出していく。
「ああティンさん、お野菜も食べないと」
「ん、うん」
「お肉が好きなんですか? あ、お握りもどうぞ。ハムサンドもございますよ?」
「む、ん」
ティンはこくこくと頷いて水穂の言葉に応えていく。そうしていいる内に食事を済ませ、今後について考える。
「ティンさんは、これからどうするのですか?」
「……あたし、どうすればいいんだろう」
「……私から言えることは特にはありません。ティンさんがしたい様にすれば良いかと思います、が……」
水穂は途中で切ってからティンを見つめる。と、そこでアルバートが。
『水穂様、転移魔導師部隊の編成が完了したので此方へ送るとのことです』
「漸く、ですか」
『はい。向うもやっと魔導師部隊の編成が終わった様で直ぐにでも此方に――と、来たようです』
アルバートの台詞の途中で新たに魔法陣が展開され、その中からフードを被った人が表示される。
『水穂様、お待たせしてしまって申しわけありません。何分色々と立て込んでいて……』
「いえ、お気になさらず。来て頂けただけもありがたいです」
『そう言えば、先程から姫連合より氷結瑞穂を出せと」
「天束水穂なら居ると言いなさい」
水穂は即座に繋げる様に言った。気圧される様に。
『は、はい、只今――あ、メール送ったら直ぐに『なら要らん』と言うメールが。一応、原文ままでしたが……』
「少しは体裁を繕えと返しなさい。と言うか、相変わらずあそこは小娘達の集りですかっ!
……後、もう一つあるのですが」
『はい、同時に姫連合へ援軍要請も行ったのですが、反応がありません』
「リフィナさんのことは?」
『無論、その件で要請したのですが……反応がありません。返答は水穂様のことについてのみです……一体、何があったと言うのでしょうか?』
水穂はふむと顎に手を当てて思考を巡らせる。
「おかしいですね……姫連合がリフィナさんを見捨てる……? 彼女達とリフィナさんは同盟と記憶していたのですが……」
『もしや、彼女達はリフィナ殿を消したがっている、とか?』
「理由が見えません。どちらにせよ、主の名において彼女も救い出すのみです。転移についてはアルバートの指示に従ってください」
『了解です』
そう言うとフードの人の魔法陣が消え、水穂はティンに振向いた。
「私達はこれからリフィナさんを保護し、犯人グループを逮捕して来ます。ティンさん、貴方はどうするんですか?」
ティンは食事に集中してたらしく突然声をかけられて驚きながらお握りを飲み込んで苦しそうに胸を叩く。
「ああ、今お茶を出しますね」
そう言って懐から水筒を取り出し、ティンにお茶を飲ませる。
「プッハァ……で、何の話?」
「聞いてないのですか」
水穂はこめかみを押さえながら溜息を吐いてティンと向き合う。
「私達はリフィナさんを追います。貴方はどうしますか?」
「……あたし、は」
ティンは俯いたまま呟き、顔を上げて確りと。
「行く」
「……何故?」
「あいつの本当の意思を聞きたい」
「その意思が、残酷であったとしても?」
「……あいつはさ、こんなあたしでも、騎士にしてくれるって言ったんだよ。
そりゃあさ、他にも友達ならいるよ。瑞穂、浅美、ラルシア、エーヴィア陛下、皐……でもさ、皆あたしが居なくても大丈夫なんだよ。皆、あたしなんかいなくてもきっと大丈夫、でもあいつにそういう奴居る?」
ティンの言葉に水穂は顎に手を当てて考える。
「――いえ、私は知りません」
「なら……あたしは、あいつの友達になりたい」
ティンは言いながら真っ直ぐな目線で水穂を見る。水穂は汗をダラダラ流して。
「は、い。とても素晴らしいことだと、思いますよ」
そう、笑顔で言い切った。
『水穂様、今の突っ込むところでは』
「黙りなさいアルバート、いっそ黙れ」
『水穂様、彼女って実は』
「黙りなさい、ヨハン。今なんか財政界でも注目の敏腕女社長とか聖剣女王とかの名前が聞こえたとしても幻聴か同名異人です!」
ティンは何か出したらいけない名前なのかなと頭を捻ったが忘れておく事にする。
「まあ、貴方が騎士を目指すと言うのなら構いません。ですが、一つ言って置きます」
水穂は言葉を一旦切り、ティンを確り見つめ直す。
「もし、貴方の言う騎士がただ守れば良いだけのものと思って居るのなら、それは違います。瑞穂さんを知っているなら、知っているでしょう? 火憐さんのことを」
「……はい?」
ティンは今耳を疑った。何故今、シスター・カレンのことを言い出すのだろうか。
「……待って、貴方火憐さんを知らないんですか!? 瑞穂さんと一緒に居たでしょう!?」
「え、知ってるよ? シスターの……へ、瑞穂? あいつ、瑞穂と一緒に居たの?」
「な、誰ですか……? かれん? そんなシスター、居たかしら……? と言うか、知らないんですか!? 燃焼火憐さん、瑞穂さんの傍に何時も居る朱色の髪の剣士ですよ!?」
水穂は戸惑いながらもティンに詰め寄っていく。彼女も物怖じしながら。
「えっと、そんな人、いなかったけど……?」
「なっ!? 瑞穂さんの傍に、火憐さんが居ない……? 一体どういうことですか?」
「いや、聞かれても困るよ。と言うか、ねんしょーかれんって言うの、その人? あたしは知らないよ」
なんのこっちゃと返すティンに対し、水穂はふと考え込む姿勢を見せるも直ぐにティンと向き直る。
「いや、今はどうでも良いことです。本来姫の騎士と言うのは、姫の隣に立つ友人の事を指します。決して、そのことを忘れないで下さい」
「友人……? 友達って、こと?」
「はい。姫の称号を得た魔導師は総じて年が若い。故に傍で道を間違えぬよう、力の使い方を間違えぬようにと傍に誰かが、信頼出来る友人が必要です。彼女達の心を守る者こそが、真に姫の騎士と呼べるでしょう」
「……分かった。覚えておく」
ティンはそう言うと最後のお握りを口に放り込んで立ち上がる。水穂は食べ散らかされた弁当をしまいこみ、先に行くティンの後についていく。
「あ、ティンさん、地図がこちらにあるので、私の後について来て下さい」
締まらない。誰かが何処かで思った。
ティンは水穂の後ろについていく。しかし、真っ暗な教会地下を歩いているとどうにも不安がくる。一体どこに向かって歩いているのか、皆目として検討がつかない。淡い光が水穂だけを照らすが、それだけだ。以上のことは一切ない。壁も見えないし足下もよくみえない。踏んでいる地面は本当に石の床だろうか、罠とか踏まないか、などなどの不安が過る。
が。
(面倒くさいなぁ……)
ティンはそう思いながら歩いていた。やがて、水穂が指を弾いて鳴らす。すると光が弾け、周囲を明るく照らす。ティンはそこで照らしだされた人間を見て驚きの声を上げる。
「リ、フィナ?」
「ちっ、流出している魔力を追って来たのか。小賢しい真似を……」
リフィナだ。水穂は無表情で見つけた彼女を見つめ、ティンが一歩前に出る。
「リフィナ、聞いて」
「お前と話すことは何も無い」
「あたしね、リフィナの」
「五月蝿いッ! お前なんかと口なんか利きたくない!」
リフィナは強くティンを拒絶する。だが、それでもティンは食い入る様に前へでる。
「良いから聞いてよッ! あたしは――」
「五月蝿いッッ! この裏切り者ッッ!」
ティンは物怖じして一歩下がる。彼女は今何と言った?
う、ら、ぎ、り、も、の。裏切り者。
「……ンク……ったくせに」
リフィナはぼそりと呟く。
「私とのリンク、切ったくせにッ!」
「え……? リン、ク、って……? 何? あたし、何も切って」
気が付いた。リフィナの言ってる言葉の意味に。物分りの悪いティンでも気が付いた。
ラグナロックの召喚。あれを召喚する為の魔力自体はティンが出していたが――そもそもその魔力を動かしていたのは? 彼女の術式を動かし、ラグナロックを呼び出したのは誰だ? そう、答えは彼女。リフィナだ。
「何が、守らせてだ。何が信じろだ! 私を拒絶したお前が、どの口でその言葉を言う気だ、この」
ティンはどうしようもない絶望を覚える。目の前が暗くなる感覚が来る。如何すればいい? 彼女の信頼を得るには如何すれば良い? 今はもう届かない。彼女に自分の言葉がもう届かない。
それを示すように、止めの言葉が降りて来る。
「裏切り者ッッ!」
じゃ、次回で姫と騎士編終わるよー。多分。