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好きにしろ(仮)外伝:神剣の舞手  作者: やー
彼女が紡ぐ未来への物語
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世界を破壊する聖剣と神剣

 理性を投げたティンは本能の赴くまま、神剣を振るい聖剣と激突させる。激しく閃光が火花のように舞い飛び、アシェラはそれを笑顔で迎え己も負けられぬと切り返しティンもまた手にした完全状態の神剣を遠慮なく振り回した。

 極光の聖剣と黄昏の神剣、ふた振りの伝承にのみ伝えられる御伽噺の存在達がここに遠慮も何もなく担い手の持ちうる最高の技で以って世界さえ揺るがす剣戟が繰り広げられる。

 剣を振るっては避けられ捌かれ、切り返しては避けられ逃げられの応酬。振られる度に黄昏の閃光が、星空の輝きを迎え撃ち何度も何度も重なり混じり合い交差しぶつかり合う。

「ハ、ーーハハ、ハ。ッハハ、ハハハハハッ!」

 豪笑響かせ、あらん限りの声を出し神剣の担い手と切り結ぶアシェラ。一振り一振りが世界を揺るがし何かが食い違えば次元崩壊さえ起こしかねん程の魔力による大戦争。下手すれば、それこそこの一戦の後に創生神話すら誕生する程の衝撃だ。刹那を過ぎれば世界の亀裂が一つ一つ増幅し世界崩壊を引き寄せていく。

 見ていた剣王の従者達もそれを見ていた。アーヤは震え戦き腰を抜かして座り込み、アンナは壊れゆく世界を苦い表情で見ている。止めた方がいいのはわかっている、理解している。だが、割り込むことは出来ない。そんなことをすれば直後に暴力に飲まれて消えるのみだ、意味が無い。だから彼女に出来るのは最早。

「陛下! このままではこの一角が崩壊します、陛下はこのまま特異点に落ちるのが望みであらせられますか!?」

「煩いな、分かっている」

 激しく光を撒き、ふた振りの伝説と破顔の相で撃ち合う王はどうでもいいとばかりに返し。

「要は、世界が壊れなければ良いのだろう? 無論、対策ぐらい持っている」

 アシェラはそんなことを言うもののアンナの目のは一切頓着せず大暴れを繰り返す王の姿しか見えない。一体、何を本気で考えていると言うのだろうか、アンナはもしもを考え己が剣を引き抜いて構えを取る。

 抜剣するは王を止めるためではない、元々彼女ではそんなことさえ出来ない。それだけの実力を持ってはいない、がそれでも出来ることはある。

 だが彼女の王は部下の手を煩わす気など無いと。

「唵ーー我が身を今一度、真理に立ち返ろう。焔とは勇気の象徴たるのなら、その煌めきで破壊と創世を齎さん」

 紡がれるは剣族の宣誓。ひと時でいい、ここでは無いどこかで存分にぶつかり合うために。

「これこそ不死の証明、絢爛たる輝きが我等の栄光と共に不滅の栄誉を照し出す。ならば是非も無し、至高の泥を皆を表して喜び受け入れよう。偉大な母を、この手で斬り亡す」

 古より伝わる盟約において、守護星の理に則る誓いの言葉。世界を壊しながらアシェラは気高く謳い上げるのだ。

「天昇せよ、勇気の紋章。(ふるき)を焼き(あらた)をここに創造すーーさあ人々よ、恐れることなかれ。栄華は果てなき彼方に、輝ける新世界へと歩き出すのだ。これぞ剣の本懐、彼らのゆく道をこの手で切り開こう」

 刻一刻と激化する剣戟による光と光の大戦争、あちこちから走る亀裂が欠け落ちて次元の彼方が垣間見える。ここに落ちれば、何処に行くかまるでまるでわからない。特異点の彼方に溶け落ちるか、運が良ければ別世界に流れ着くか、それさえ落ちて見なければ不明なのだ。

 だがそんなことはどうだっていいと聖剣と神剣の激突は更に加速する。ラグナロックの剣からは理性が消え失せているにも関わらず正確無比、寧ろ理性が弾けているからこそ容赦と言うものが一切消失し世界への被害と言う考慮が何処かに流され、ヒビ割れた世界まで巻き込んだ次元崩壊剣技と化しているのだ。何でもありの、遠慮もクソも何も無い未来視からなる剣戟は世界の崩壊をより深く後押しすると言うことさえなければ究極の最善手。時空を断ち切る衝撃を利用する剣技はいくつも生んだが、流石に時空そのものを破壊しながらの奇襲は無いとさえ思える程に。と言うより、足場をぶっ壊してでも行う攻撃などただの自殺と相違ない。

 アシェラはそんな剣の応酬の中で詠唱を終えると魔力とはずれた何かが一気に広がり始める。

「神威太極」

 これぞ剣の一族にのみ許された特権、使い方を弄ればこうもなると言うのだ。そして妖精界の一角に小宇宙が構築される。



「神楽創世――劍刃曼荼羅・神滅之理ッッ!!」



 ティンとアシェラ、観ていたアーヤとアンナを巻き込んで生み出された一つの宇宙。ティンは飲み込まれた直後であろうとアシェラに向けて剣を振り下ろし、アシェラもまたそれを喜んで聖剣と共に受け入れた。

「本来の使い方とだいぶずれたが、守護界の為なら遠慮なく受け入れてくれたか。しかしまあ、ラグナロックとは凄いな」

 その一撃を弾き返しアシェラはティンと何度か撃ち合い、一層更に強く輝きを増す黄昏の十字剣を見て愉悦の相を見せる。

「確か、魔力付与公式はX乗のXか。ならば、見立てが正しいならあれはもう大陸規模を超えて既に惑星級の魔力か。末恐ろしいな、ラグナロック付きで世界一つにまで手が届くとは……だがな」

 アシェラはふっと笑みを消し、両手で握る聖剣に目を向ける。

「貴様の剣は凄いよ、しかしこのエクスカリバーの魔力質量はな」

 生み出された剣の曼荼羅を引き裂きながら振るわれる神剣、アシェラはその一撃を正面から見据え同じく破界の一閃で迎え撃ち。

「素で、惑星3つ分に至っているッ!」

 互いに全霊、互いに全力で振られた刃は激しく衝突し物の見事に作られた曼荼羅を完膚なきまでに破壊し尽くし、聖剣と神剣の激突は神剣の刃こぼれと言う結果が出された。

 ティンは唖然とした表情でソレを見つめた。刃こぼれを起こし、魔力が砕けて繊維となって露出するが直ぐに修復されていく。さらにその上、加えて注ぎ足された魔力が神剣の質量をさらに引き上げていく。

「更に上を行くか。だがな、それでこの剣の上を行くとでも? 笑止ッ!」

 咆哮を上げて曼荼羅を引き裂きアシェラに膨張する神剣を振るうが難もなく聖剣でそれを受け止める。展開された曼荼羅の崩壊さえ気にもせずアシェラは真っ向からティンの神剣を弾き更に何度も切り結び、何度目かにすら分からない激突を果たし。

「貴様に分かるか、この聖剣が如何なる方法で打ち鍛えられたものかを!」

 削り合う光と光、加速する世界の崩壊、曼荼羅が悲鳴じみた異音を響かせるもアシェラは知った事か投げ捨て、ティンと更に剣を剣の凌ぎを削り合う。

「かつて、平和だの何だのを謳い世界中を巻き込んだ戦争があった。恐ろしく大きな戦争に、我等トキヴァーリュも一騎当千の無双と言う話は無理だった。それを見かねた湖の妖精達は自分達に出来ないことはないだろうかと模索し、一つの答えに至ったのだ」

 獣じみた咆哮をあげるティンはアシェラに付き合えんと剣を弾くがそれさえ対応しきったアシェラはティンとまだ剣を合わせ。

「妖精とは、世界中に募った意思が世界に満ちる魔力との化学反応によって生み出される。が故にあの子らには元々魔力を生み出す機能自体が存在しない。だから魔力を無くせば死んでしまう、にも関わらずだ! 生まれて初めて、世界史上初の人と妖精の間に立ちその仲介を行なった存在がいた。誰もが妖精達を便利な道具とする中、ただ一人妖精達と対等の立場で向き合った史上最高の英雄」

 その名は、ティンでも知っている。

「それが妖精王だ! 唯一の友人のために妖精達は出来ることはないかと湖に集まった妖精達はある禁忌に手を染める。自らを生け贄として一つの兵器を、最強無敵の武具を生み出すことだって! かくして、星々の光を一点に集め一つ一つの命が友への勝利だけを祈って作られた、純粋な祈りで打ち鍛えられた聖剣、それがエクスカリバー! 分かるか、この剣に一体どれほどの妖精達が命を捧げたと思っている!?」

 再び、亀裂の走る黄昏の神剣。だが、それも当然だ。思いも重さも、何もかも桁外れの聖剣を相手に。

「100、100もの命達。少ないと思うか? 取るに足りない命と思うか? それでも人間にッ! 友人にッ! 勝てと言う祈りと願いで鍛えられ、送られたセイなる剣! 如何なる存在よりも神聖で、何よりも生に溢れた友誼の剣ッ! それを貴様ら、取るに足りないニンゲン(ゴミクズ)共が、どの口で模倣できるだと!? 巫山戯るのも大概にしろぉッ!!」

 神を、創造主への憤りが丸ごと詰まった曼荼羅ごと、ついにティンの神剣が剣王の振るう聖剣に打ち砕かれた。元の次元に戻り地面を転がるティン、そこにアシェラは全長3mはある聖剣を突きつける。

 だがティンは直ぐに立ち上がるとまた魔力を流して混んで神剣を元に戻し。

「失せろ」

 一閃、それは見飽きたと言う王の剣がティンの修復され行く神剣を破壊し。

「その程度か、つまらん。魔力を深く知る者となれば楽しめると思ったがこんなものか。所詮、暴走はただの暴走か下らん。その芸は飽きたぞ、もういい」

「なん、で。何で、何で」

 砕かれた神剣を手にティンは震えながら。

「ナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデェェェッッ!!」

 更に魔力が吹き溢れ飛び、ラグナロックを一瞬で再生しきり元に戻して行く。そしてさらなる大きさへと神剣は膨張し黄昏も纏って。

「ヲオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオっりゃあああああああああッッ!!」

 遂には正気に戻ってしまうほどの魔力を放出しながらティンは残った闘争心を受け取り、手にした神剣を理性でもって手繰り。

「甘いな、もう少し修行して出直せ」

 その一撃でさえ、王の剣の前に虚しく打ち砕かれるのみだった。最早技でさえない、単なる王の一撃のみでティンの生み出される神剣は無残にも打ち砕かれる。ティンは急に正気を取り戻しながらも、状況の絶望感に最早気がもう一度どうにかなりそうだった。手にした神剣は、より強大な質量を持つ聖剣によって撃ち砕かれ、逃走は無意味。立ち向かう事は蹂躙されに行くも同然、此処から如何しろと言うのだとティンは唯々項垂れる。

「立て。まだ終わっていないぞ、誰が首を垂れる許可を出した」

 ティンは思考を深く、深く潜らせる。手持ちの取れる手段のみでどうやってこの怪物を撃滅せしめるのか、最早己が行う事はその一点に尽きる。あまりにも圧倒的な存在、最早勝負すら成立しない程の実力者。立ち向かう事さえただ死にに行くのも同然、如何に怪物を討つのは人間と相場が決まっていようと、これは最早バグの領域だ。

 そんな考察の途中、アシェラは一息吐くと。

『立て』

 気付けば、ティンは立ち上がりアシェラに向けて毅然と剣を突き向けていた。敵う筈の無い怪物に何をしているんだと言う疑問と、これこそが最適解であると言う謎の答え、一体この刹那に何が起きたのかとティンはあらゆる記憶を模索し。

「ほう、覇気を当てられ本能的に討たねばならぬと察し剣を向けるか。良かろう、であるなら聖剣(コレ)にもう用は無いな。それに、エクスカリバーを模倣できると妄信する輩には反吐が出るが正直このエクスカリバー事態好きじゃあないしな。物理干渉出来ないし」

 アシェラはティンの反応に満足しつつエクスカリバーを解除し、霧散させる。行き成り消え去った聖剣に戸惑いは抑えきれない、だが目の前の敵はあまりにも危険過ぎる。例え聖剣であろうと無かろうとその恐ろしさは変わりはしない。

「貴様は、私の存在に疑問に思ったことは無いか?」

「何を」

「私は妖精王だが、その名乗りはまず剣王と名乗った。では剣王とは何か?」

 そこらに転がっている剣を踏み付けるアシェラ、そのまま足で遊ぶように転がし。

「まず、剣術の王。それはお前が先程体験した通り、私はあらゆる剣士の剣術を凌駕していると自負している。もしも異を唱えるなら、遠慮せず私の下に来いとさえ思っているほどだ。次に剣士の王」

 転がしつつ足の上に乗せるとそのまま蹴り上げた。くるくると回転しながらアシェラの胸元まで飛び上がる朽ちた剣を、そのまま掴み取り。

「これも説明不要だ、アミを始めとしたトキヴァーリュ国民6000人弱の上に立つ王だ。トキヴァーリュ王国民は今や全員が王族であり全てが剣士、これらを統べる打倒しその上に立つ私は正に剣王と言っても差し支えないであろう。これについても問題ない」

 一振りし、ティンの方に突き向けた。ティンは手にしたのは瞬時に修復した神剣、対してアシェラが手に持っているのはボロボロの所々曲がって無理やり真っ直ぐとなった剣。それで一体どうすると言うのだろうか。

「さて、では最後に残った謎。剣の王とは何か? 万物の剣の上に立つとはどういうことか」

 口にして、アシェラは突き向けた剣を自分の体に引き寄せる。

「ところでお前は万物に魂が宿ると言う考え方を知っているか」

「話が長いぞ、一体何が」

「八百万と言ってな、全ての物には魂が宿っていると言う考え方だ。尤も真実は宿った魔力が物に思念と言う名の魂を与えると言うだけだ。さあて、かつて我ら古代人は言霊と呼ばれるようになった精霊言語で会話をしていた。この言葉は、万物に宿る魂その物に訴える事が出来る。それを利用と言うか、応用したのが先程貴様に送った覇気と言うものだが……さて、その言葉でこの剣に語り掛けたとしよう」

 アシェラは手にした剣に、聞きなれない言葉を語り掛ける。直後、手にした剣が更に圧力を増し鼓動を始めた。

「何を」

「剣に宿る魂に訴え、その本質を呼び覚ました。あらゆる剣には使い手や打ち手の魂が宿る、それ自体に言霊を使う事で覚醒させる。これこそ、我らが総ての剣を制すと謳う理由。即ち、我ら剣王はあらゆる剣に対し語り掛けその本懐を遂げさせる!」

 まるで剣が目を覚ましたと言うか、何かに打ち震えているかのように見えた。そして、アシェラは剣を振るい上げる。ティンは瞬間的に危険であると察知し、退避の構えを取る。

「逃げるなよ」

 悍ましいとさえ感じさせる苦笑と共にアシェラはこの場から逃げる事さえ瞬時に考察するティンから機先を制して告げて。

「避けるのはいいさ、選ぶ権利くらいお前にある。だがな、古来より私は女とは鞘であると考えている。己と言う鞘に、男をと言う剣を受け入れる。それこそ女の本懐であると思っている」

 下手な男よりも逸脱した女が、そんなことを語る様子に奇妙な光景だとさえ思いながら。

「だからこそ、女の主戦場は家の内であるとも思うし聖域にして独壇場であるとも思うのだ。故にこそ、逃げるなよ? 此処にあるのは曲がりなりにもお前に受け止めて欲しいと並んだ益荒男達だ。せめて見届けるくらいの度量は見せてみろ」

 ティンはハッとなり周囲に転がる朽ちた剣達に目を向ける。それらが一斉に鳴動し始める。その直後、次元さえ断裂するほどの斬撃がティンのいた場所を駆け抜けた。ギリギリのタイミングで回避運動を行ったティンはその常識外れの現象を目にして全身から冷や汗を吹き出しながらアシェラの方を見る。

「うむ、良い剣だ。凡夫の身でありながら天晴ぞ」

 その太刀筋に納得し、崩れ落ち行く剣を讃えて見送る剣の覇王。

「これが、剣王。あらゆる剣を束ねるとはこういう事だ。さあ行くぞ、貴様らの思いの丈をこの王が見届けてくれる!」

 遍く剣という剣を統べる英雄の覇者が凛として次の従者をその手に掴み命を下す。感激に打ち震えながら生みの親の信念を果さんと剣はその身を砕きながらも本領を解き放つ。

 そして振るわれる剣王の一閃。妨害など出来ない、王を止めるには王以外にあり得ない。であるが故にティンは切り結ぶ事も古代語を呟く隙に切り込むことさえ出来ないでいる。動作一つ一つとって見ても何ひとつ隙がなく動きに無駄が無い。頭がおかしいとしか言いようがない、ただ落ちている剣を手につかんで言葉を発し振るう。たったこれだけの動作を邪魔さえさせずにかの王はやってのけているのだ、ティンは相手をしていてあまりにも常軌を逸脱し過ぎている絵面に一周回って冷静になる程だ。

 いくぶか落ち着きは取り戻しはした、がそれは結局のところ諦観故の脱力に他ならずこの窮地を脱する術など思い付く余裕もない。この怪物相手にどうすれば良いかなど答えは。

(いや待て、じゃあ何故勝敗が決しない?)

 敵うという次元にさえ到達しない実力の差、であるにも関わらず己がこうして弄ばれているのは何故であるか。遊ばれてる手加減されている、と言えば聞こえは良いだろうがにしては動きが些か完璧過ぎる。

 隙もなく、振るう剣速は常にギリギリ、つけ込む隙はない、だが何故か避けられる。この思考の間に思わず情報が欲しいという欲が出たティンは諦めを前提に王の剣を避けることに集中する。そして二度三度、王の剣を全霊で対処を試みて全て回避が行えた。ギリギリではあるが故に次にかわせる保証は皆無、だが避けることは出来るのだ。

 ならば、距離を詰めて切り結ぶことは出来るかという疑問が浮かぶ。しかしその疑問が浮かぶ刹那、アシェラが空間転移といっても良い速度で距離を詰めティンと直接切り結ぶ。

「なっ!?」

「この剣の真価は切ることではなく丈夫性らしい。剣客との実力勝負が望みだそうだ!」

 ティンは直ぐに頭を冷やして対応、神剣で以って王と切り結ぶがいとも容易く弾かれ王の剣がティンに食い込む、が剣がその直前で砕けた。恐らくは限界、以下の丈夫性に富んでいようと神剣と剣戟勝負を行えること自体が奇跡なのだ。

 が、アシェラは直ぐに落ちてた剣を手に取り言葉を告げティンと切り結ぶ。だがそれも出来て二度三度、いかに王命で剣の真価を引き出そうが所詮は凡夫。神剣という規格外と打ち合える筈がないのだ。

 それでもアシェラは恐ろしい技量を駆使してティンを追い込む。食い下がり、切り込み、剣を失ってもまた次の、次の次の剣を、ティンは剣を失った王であれば切れる気が起き始めるが、彼女にエクスカリバーがある以上無手は決してあり得ない。

 だが、アシェラがティンに嬉々として剣を振るった瞬間に一度も打ち合わずに剣が砕け散る。一体何がと思うも周囲の剣も全て砕けて粉微塵と消えていく。

「限界か。少しやり過ぎたか」

 アシェラはつまらんと態度に表しその場に立ち尽くす。同時にティンの持つ神剣が重みを増すのを感じた。おそらく魔力の限界か、派手に魔力の椀飯振舞いをしたために神剣の維持はきつくなったのだろう。ティンは神剣に帰れと念じ、あっさりと神剣が砕けて媒体となった剣となる。

 そこで、ティンは気づいた。というより理解した。この王の弱点を。この王はおぞましい化け物に相違ないが倒せない訳ではない。そう、この王を切る手段が、無いわけでは無いのだとティンは理解した。

んじゃ次回

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