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好きにしろ(仮)外伝:神剣の舞手  作者: やー
彼女が紡ぐ未来への物語
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新しい朝

 現実へと帰還した彼女を歓迎するは、漆黒の瞳。知る喜びに満ちて植えた黒猫。耳に響く終わらないクラシックがいつまでも、いつまでもいつまでもティンの耳に脳にこびり付いて離れようとしない。

 そう言えば、意識が途絶えたのはこの辺りだったか、ティンはどれ程の間自分の意識が飛んでいたのか意識して前を見る。そこにはあいも変わらずに瑞穂がティンと向き合いただただ問いを投げた。

「ねえ教えてよ、貴方の未来を。って、ティンさん?」

「え」

 瑞穂の戸惑う問いかけ、ティンは思わず自分の声を出して気が付いた。今、自分は泣いている。声を出してみて、涙交じりの声に驚き今自分が泣いているのだと理解する。

「どうしたの、急に」

「あたし、さ」

 涙を拭おうとして体が動かないことに気付いて、涙を流しながら瑞穂をまっすぐみた。言うことは決まっていて。

「明日」

「ん?」

「明日、には決めてくるから。ちょっとだけ待っててくれる?」

 ティンの落涙と共に告げる言葉に、瑞穂は鼻で笑い飛ばそうかとも思うがティンの目から強い意志を感じた。これは、決めると言ったら必ず決める、荒野の果てを射抜く強い瞳。瑞穂は刹那の間に生まれ変わったとでも言うようなティンをみて。

「じゃあ明日」

 あっさりと瑞穂は手を離し、踵を返して立ち去った。ティンも、そう言えば風呂に入るんだったなと、汗ばむ体で気がつく。思い出して歩き、ふと目に入った時計を見た。最後に確認した時と比べ全く動いていないことを把握すると瑞穂の行動が少し異常だなと感想を胸に抱く。



(夢つっても、ぶっちゃけこの後って態々言う程のことかな)

 一晩じっくり考えた物の、答えは自殺を選んでもいいかと聞きたくなるほどに有り触れた人生の結末だった。傭兵にでもなって、金を稼いで、じーさまのモノマネして、結婚は成り行きで、捨て子を拾って育てて、剣を仕込んで、当たり前のように朽ちて死んでいく。

 何処にでもある、人生のピリオド。反吐が出そうだと呟くほどに退屈な死だった。

 久し振りに考えた断崖の先、だがそこにあったのはあいも変わらぬ絶望だった。見飽きすぎたエンドピリオド、今を謳歌するからこそ言える、定着し狭くなった未来。あまりの惨状にティンはこれの何処に希望があるのかと瑞穂に言いたくなったが。

「あ、ティンさん。陛下がお呼びです」

 突然、ルジュに声をかけられティンは朝っぱらに何の用だろと一先ず嫌な未来を10個ほどパッと考えつつ、更にどんなことを言われるんだろうと思いつつルジュの後ろについていく。行き先はいつもの玉座の間、ティンは一応女王へ頭を下げ。

「おはようございます女王陛下、昨日はお疲れ様で御座いました。それで、こんな早朝よりどのような御用件で御座いましょうか。私は今急いでいまして、あまり暇がないのですが」

「言葉選んではよしろとかお前も大概だなおい。まあいい、ティン」

 ティンは体裁を整えつつも遠回しに早く終わらせろと言ってきた。エーヴィアは乾いた笑いを浮かべては真っ直ぐに、そして真面目な表情で。

「貴公は此度の一連の行事において、我が国に多大な功績を残した。貴公の進言と尽力による、我がイヴァーライルもこうして王城を再建するまでに至った。貴公には非常に感謝している。例えそれが誰かの思惑であったとしても、逃げずまた腐らず我が国に対し尽力を尽くしてくれた。特にこれといって何も礼が出来ないにも関わらずだ」

「ええ本当に、幾ら何でも逃げるんじゃと何度か思いました」

 ルジュまでも苦い笑みを浮かべてそんな事を口にした。手伝ってくれたりしてくれた割りに、とは思ったがあれも実は彼女達なりのフォローだったのだろう。尤も、そうでなければあんなハードスケジュールをこなしてくれるとは思ってなかったとも言えるが。

「それにより、貴公に褒美を取らせよう。好きな物を選べ」

 エーヴィア女王が指を弾き、急に出てきたマリンがティンに向けて書状を出した。

「これは、名誉国民賞ですか?」

「ああ、そいつは見ての通り国王から送るこの国に対し多大な貢献をした証だ。今後旅をするなら必ず役に立つはずだ」

「これを持ってると、国に対して大きな働きをしたんだってなって、国の依頼が受けやすくなります。冒サポに持っていけばライセンランクAクラスの待遇されるから便利なんですよ」

「何でも、冒険者間ではこれを三つ集めると好きな国に取り立ててもらえると言う曰く付きの品だ。まあ、三つ集めるってことは三つの国を救う程の功績を成したと言うことだ。そんな人物なら国としては懐にでも置いておきたくなるだろうな」

 マリンがウキウキと解説しエーヴィアが細くするも一切ティンに渡す気が見られなかった。と言うか説明し終えるとマリンは直ぐに丸めて懐に戻したところからもう一つあるようだ。

「で、個人的にはこちらが本命なんだが」

 エーヴィアの言葉に応じ、マリンは今度は勲章を取り出す。こっちは渡す気満々みたいで、ティンに向かってずずいっと近くまで突き出してくる。ティンはこれはなんなのかとエーヴィアへ目を向けると。


「お前、貴族やってみないか」


 唐突にかけられた言葉に、ティンは一瞬頭が真っ白になる。彼女は今、なんて言ったのだろうか。

「ティン、貴公の働きに敬意を払い土地と名を与えよう。この勲章を取るならば、貴公に騎士公爵の位を授ける。と言ってもこの国で与えられる程度の物だから高望みはするな、こんなボロボロの国家で良ければ、貴族になってくれ。正直、成り上がりの一人は公爵と言う前例がいないと格好が付かないし、他の連中も躍起になって自分も新生国家の貴族になろうってなってくれないんだ。実際、母さんが公爵やってくれたらこんな事しなくても良いんだが」

「えと、あの、つまり、あたしが、貴族になるの?」

 途中から普段の砕けた口調になり、徐々に母親への愚痴へと変化する女王を見てティンは深い闇を感じ取るもティンは一先ず言われた言葉の意味を女王に確認を取る。

「そうだよ、まあ流石に渡せるのはぶっちゃけ底辺だけどな。取り合えずお前に渡す土地はイヴァーライル王国領レディアンガーデ公国だ。この国じゃある意味公爵に統治して貰う必要は無いが、ティンに渡せるのはそこしかない。デルレオンは母さんが死んでも渡さないだろうし、アンヴェルダンとマウグストはそもそも統治云々以前の問題だ。で、残ったのはレディアンガーデという事だ」

「レディアンガーデ」

 それがティンが受け取る国名、だがティンは他にも色々言いたいが目を閉じて考える。自分が貴族になる。一国の、それも公爵位と言っていたがそれは恐らく王に変わって公国を治める立場となるだろう。そんな地位に、孤児の自分が就くと言うことだ。

「陛下、恐れながら私はどこの生まれともわからぬ孤児です。いかにこの国で功を成そうと、そんな私が貴族になってもよろしいのですか?」

「はあ、どこの生まれとも分からぬ孤児ね」

 エーヴィアは腕を組み、一考し側に控える二人のメイド達に向けて。

「何処か問題があったか?」

「陛下がお選びになられた、その上でレディアンガーデなら、何も」

「同じく、その条件であればレディアンガーデ公国の方がよろしいかと。寧ろ皆も喜ぶでしょう」

 マリンもルジュもなぜか納得した様子で、寧ろベストな選択だと太鼓判を押す。一体どう言うことなのかとティンが混乱しているとエーヴィア女王は懐に手を入れながら。

「元々、レディアンガーデ公国初代公爵は何処の馬の骨とも分からぬ孤児だった。それこそ、貴公以上に得体の知れぬ者が信頼と忠義のみで貴族にまで至ったのだ。それを思えば寧ろ不思議どころか、皆伝承に伝わる初代レディアンガーデの再来だと諸手を挙げて歓迎するだろう。正に新生しこれから歩み始めるイヴァーライルにとってこれ程までにお膳立てされた舞台はあるまい。だから己の生まれなどこの際ドブにでも捨てて来い、その上で貴公が選びたい未来を取るがいい」

 携帯電話を弄りながらエーヴィアに諭され、ティンは改めてもう一度目の前の勲章を見る。紛れも無いイヴァーライルの騎士勲章だ、レディアンガーデの名も、公爵位の証も刻まれた傷一つない勲章。ティンは息を呑み、その勲章を手に取り。

「お受けします、エーヴィア女王陛下。私のような者で良ければ、どうぞお側の」

「ああ、今後とも頼むぞティン。いや、それを受け取った以上貴様はレディアンガーデ公爵と呼ぼうか。そうだな、貴様に新しい名を与えるか。今後貴様はティン・シュヴァリエ・ド・レディアンガーデと名乗るがいい、レディアンガーデ卿」

 エーヴィアの言葉にマリンが嬉しそうに拍手を送った。ティンは軽く気恥ずかしさに負けて顔を下に向けた、直後。

「よし、これで新公爵誕生の祝いという名目でレディアンガーデ公国に金を注ぎこめるな」

「ええ、これで新公爵館再建の大義名分が出来ましたね。それも公爵様の名義で」

 そんな会話にティンは即座に答えを出す。つまり、これでティンは、レディアンガーデ公国ないで起きた無茶な工事は全部、女王ではなく公国内最高責任者であるティンの指示、ないし責任ということになり。それは即ち、都合のいいスケープゴートと言うことを意味する訳で。

 どういうことかと問い質そうとティンは顔を上げるとエーヴィア女王陛下は先程取り出した携帯電話片手にルジュにしーっと指を立てていた。それで把握する、これは単純に誰でも良いから国民に認知される程に活躍した者を都合よく取り立て、今度はそいつを盾にと言う政策であるということに。

 ああ、確かに。これなら新生国家を手早く立て直すのであれば納得の行く話だ。しかも、それが御誂え向きとも言うべきお膳立てがされているのなら取り入れないと言う手はなく。

 理解すればするほどに何故自分なのか納得出来、と言うか何よりもさっきの感動を返せと叫びかけた所で。

「ネイル、いるか。お前に頼みがある」

「はい、女王陛下」

 誰かに電話する女王に怒鳴り付けようと息を吸った刹那、女王はネイルを呼び出した。ティンはネイルの方へと向き直ると彼女はスタスタとまるで予め用意していたと言わんばかりに魔導書を開き。

「早速すまない、レディアンガーデ公爵を自国に案内しろ」

「陛下、その前に」

「了解です、我らが女王陛下」

 ティンが文句を口にしようとした瞬間、エーヴィアは手早くネイルに命令し、かの宮廷魔導師殿は命令と同時に魔導書を起動させ、ティンと同時に転移を開始する。

 文句さえ言わせぬ早業にティンは眉をピクピクと動かしつつも眉間を抑えて揉み解す。つまりは嵌められたと言うことだ。あからさまな感動の場面を構築して誤魔化そうと思ったのか、最早ここに至れば突っ込む気力さえも浮かばず宮廷魔導師殿へと向き直ると、何故か深いため息が返された。それはこっちだと声を上げようとした時。

「はあ、かわいそうな潤」

「おう、それは騙されたあたしへの当て付けか」

 ティンは軽く殺意混じりの視線をネイルに送るとあっさりと縮こまるも声だけは立派なもので。

「ぼやかないで下さい。潤が地獄に落ちたのはあなたのせいですよ」

「どう考えても女王陛下だろうが」

「騎士位を受けた直後に女王への侮辱とは、幾ら何でも不敬ですよレディアンガーデ卿。貴方が騎士位を授与された影響で潤は今来週いっぱいまでに公爵館を立て直す必要があるんですから」

「立て直す? そういやここ」

 ネイルとの話し合いによってティンは漸く周りを見渡すが、そこは簡単にで表現するとぐっチャリとした湿地草原が広がるのみだった。その光景にティンは真顔で自国の宮廷魔導師へ。

「これは、どこ?」

「言葉の使い方が変ですよ、公爵様。何処かと仰られても、貴方の国でございます」

「あたしの、国?」

 見渡す限り何もない湿地草原、一歩踏み出すと糸を引くほどに粘っこい何かが満ちた草原だ。少し息を吸うと、何とも言えない匂いが鼻孔をくすぐった。はっきり言おう、いい匂いではないどころか人体に悪影響と不快感を催すものであることは確実。と言うかこれ毒素含んでるとティンは心内で突っ込むとネイルに向き直り。

「おいどう言うことだ説明しろ」

「はぁ。レディアンガーデもアンヴェルダンもマウグストも呪いの汚染が残っているのですよ。その内でも呪いの侵食により魔獣の巣と化していたアンヴェルダン、諸々の討滅作戦の影響でただの廃墟になったマウグストはそもそも人の手を入れることさえ困難、であれば残っているのは何処であるか、もう説明は不要ですね?」

「まさかだがネイル卿、貴公はこの有様でこの国はまだまともである、だなどと言う世迷言を口にする気ではあるまいな?」

 流石のティンも渡された国の恐ろしさにいい加減眉がピクピクと痙攣を始める。ネイルは怒っちゃやだーとジェスチャーしつつも至極真面目な口調で。

「誠に遺憾ながら仰られる通りでございます。そして公爵閣下の名によりここの工事を任されたのが宮廷魔術師の水沢潤であります。潤卿は今、スケジュールをイヴァーライル本国でまとめて」

「おいこら待てやくそがああああ!? 貴公、まさかだがこの惨状の工事責任の全てを私の名で潤卿に託されたでも言う気か!?」

「その通りです。レディアンガーデ卿が爵位を賜った直後に陛下がメールでそう言った指示を送り、レディアンガーデ卿の指揮のもと貴殿にレディアンガーデ復興計画の責任が移譲されたとか、なんとか」

「おいこら女王陛下、幾ら何でも仕事早すぎだろ!? じゃあ何か、あたしが爵位授与と同時にいきなりその全権を陛下の手で執行されたと!? ふざけっ!? いきなり何してくれてんですかあの国家元首は!?」

 ティンはネイルから驚愕の真実を聞き、即座に術式を用いて女王へ連絡を取った。向こうもいい頃だと思ってたのかすぐさま通信が繋がり。

『すまん』

「すまんじゃありません! 今すぐ直行で、本国へと向かい女王への謁見いや国家会議を開きたいのですが!?」

『いやぁ流石に無理じゃないか? 行成そんな重鎮集めて会議など、第一どうやって戻ってくるつもり』

「必要な重鎮を述べてください。言えないならネイル卿を搾り上げて聞き出します」

「へ!? 女王はなんとおっしゃっておいででっ?」

 急に吐かれた不穏な台詞に問い質すネイル、だがティンは通信術式を使った際に同時併用で光子術式も起動し、魔力を回し光子同調を始める。脳に描くはイヴァーライルの地図、レディアンガーデの位置からイヴァーライル本国の位置を把握、そちらの方向へと向きなおる。

『あいや、待て落ち着け。確かに騙した形にはなったが、いや分かってる分かってる。えっと必要な奴は特に要らない。お前が話したいのはレディアンガーデの工事だろ? だったら平気だ、急遽私の頭の中で決めていたことを実行に移しただけだから、これから大臣にほぼ説明のみとなる会議をだな? ああ大丈夫だ、その席にお前は一応不要だ。貴様は寧ろレディアンガーデ公国に残り形だけの現場責任者としてだけいればいい。その為に態々有無も言わさず向こうに送ったんだよ、貴様が居ると此方にとって不都合なんじゃない、貴様が不在だと向こうにとって都合が悪く、こっちにとって都合がいいんだ。何せ此方としては新政権をこれから本格的に立ち上げるのに受勲した騎士公爵ががいつまでも本国で待機では形が悪い、ただでさえ急な仕事の依頼だ。せめて責任者が現地にいないと現場の士気が下がる。だから今は形だけのデコイでいいから向こうにいて欲しいんだ。お前をこんなふうに巻き込んだ上に押し付けたのは正直言おう、悪かったと思っている。だが、そもそもこの計画にはレディアンガーデ公爵の存在が二重の意味で必要不可欠、確かに誰でも良かったのは事実だし渡した国もはっきり言ってトカゲの尻尾だ。それは認める、だがそれでも正式な公爵が欲しかったんだ、先ず大々的に凱旋祭を行いその立役者を適当な功績を付けて取り立てるってのはぶっちゃけ凱旋祭を行うと言った時から予定してたんだよ、世界がイヴァーライルに注目してる今だからこそ出来るイベントは畳み掛けて行いこの国の安全性を保証する。その点において貴様は十二分以上の働きを見せてくれた、私の持ってない新しい雑誌記者を連れて来てくれたし更に有名人が何人もイヴァーライルの凱旋祭に訪れたのは間違いなくレディアンガーデ卿の功績だ本当に感謝している。と言うことで貴様にはすまんがしばらくレディアンガーデ公国で生活してくれ、大丈夫だ空気は悪いが潤がどうにかする。一応この王城の水源工事を一週間程で行なってくれる程の術者だ、今回もきっと期間内に立派なレディアンガーデに戻してくれると信じている。そう言うことだ、貴様には何度も、いや本当に何度も何度も悪いがレディアンガーデで待機してくれ。寝床なら用意もしてあるし、その為にわざわざ大臣の小言無視して国王に次ぐ位の公爵位を与えたんだからな。いやまあ確かに国家会議に貴様もいると今後が非常に捗るが今はそれよりも見た目を整える方が先だ、と言っても泥舟の見た目をどうこうなどとアレな話でもあるがな。それとも早速公爵としてレディアンガーデの政策方針を固めるのか? すまんがそれはまだ待ってくれ、時期が早いと幾ら何でも私では庇いきれない。お前の受勲については一部の貴族や文官以外納得してない奴が多いんだ、そういう連中を黙らせる為にも暫く大人しくしてくれないか。まあ確かに資金や工事の内容について話を固めたいのはわかるが一先ずそれは私に預けてくれ、何なら今ここで要望を聞こう。お前からしてどういうことを話し合ってほしいんだ? 言ってくれ、考えておこう。いや、だからさ。あー所でさっきから黙っているが何をしている?」

「陛下の背後にて、控えてさせておりますが何か?」

 ばっと、執務室で書類仕事をしていたエーヴィアが背後に振り向くと、窓の淵に立ったティンがそこにいた。顔は汗まみれで更に肩で息をするほどに荒れており、身体中煤ボケてはいるもののその佇まいは凛としており。

「あの、すまんが、その。いつからそこに」

「陛下が分かってる分かってると言ったあたりから出発、要望をとか言ったあたりで到着でございます」

「え、えっと光子化と光子加速? いや、確かに計算上、直線距離で車からレディアンガーデまで時速40kで、約10日程で、着けるけども」

「では時速100k以上なら1日でもいけるのですね。まあ私が今しがた時速何kで移動していたかなど、知りませんが」

 解説しながら窓から降りて室内へと入り込んだティンはゆっくりと女王の前に行くと、輝くライトイエローの瞳を輝かせて一言。

「さあ陛下、国家会議と参りましょう。会議室空いてますか?」

「いやお前怖なんでもない今すぐに用意させる!」

んじゃまた。

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