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そして世界が光になっていく

「でっ、ですがその事が一体何に繋がると?」

 今まで置いてけぼりを食らっていたラルシアが声を出すがティンは。

「全てさ。あの女は言った、自分はエーフィリス・デルレオン・イヴァ―ライルだと。そして今までの話が事実で」

「おい待てティン、結論を急ぐな。そいつがイヴァーライルの原点と」

「申し訳ございませんが陛下、あたしは既に決定的な一言を聞いています」

 ティンの返しにエーヴィアは目を見開いて驚き。

「彼女はイヴァーライルと言う人にかつて言われたそうです。君の為に国を作ろう、デルレオンと」

「デルレオンと二人でなら」

「君の国が作れる、と」

 口にした、婚約の誓出会った言葉。エーヴィアの返事は地面を殴る事だけ。

「今の言葉、近い言葉が?」

「建国の言葉、凱旋祭開始の決まり文句だ! くっそ、何で今の今まで、ずっと聞いていたあの言葉に疑問を抱かなかった!? 今更聞いて見れば、本当に違和感だらけだろうが!」

「陛下、実を言うと此処までの問答はただの茶番と言うか前座です」

 言われ、エーヴィアはハッと顔を上げる。ラルシアは身構え、リフィナはもようやく真剣な表情を見せる。

「さて、彼女の目的は?」

「勿体ぶらずに言いなさい、どうせ既に答えが分かっているのでしょう?」

「いや全然」

 ラルシアの苛立ちの混ざった台詞にティンは其れこそお手上げと言わんばかりに返す。

「ぶっちゃけ彼女の経歴は、陛下のおかげで分かった。で、彼女の目的は一体何だ?」

「貴方の超能力、未来予測と言うか正答者で見えているのではないのですか?」

 完全に人だよりだと言うのに、ラルシアは人を使うのを当然とばかりに見下ろしてティンにといかける。ティンは一周回って頼もしささえ出て来るこの親友に。

「あたしの能力は、あくまで計算さ。そう、計算。数式と数字が判明してなきゃ計算は出来ないんだ。まだ答えを導き出す材料が何処にも無い」

「はあ!? あれだけ質問しておいて収穫ゼロとか、ちょっと貴方本気ですか?」

「本気。いや、あの女のことが分かってないと、それを起点にありとあらゆる」

「ティン、あいつが魔王を自称するようになった理由を聞いたか?」

 ラルシアとティンの会話にエーヴィアが混ざって来る。彼女もまた何か、答えを探っているかのような調子だ。ティンは苦笑しながらも。

「闇の教主だか何だかにされたようで。彼女、世界が欲しかった」

「おいその辺りを詳しく聞かせろ」

 話の途中でティンを押し倒す程の勢いでエーヴィアがティンに迫り言葉を紡ぐ。

「えっと、何処を」

「闇の教主だ。そいつは一体どういう存在なんだ?」

「いや、どういうのかは知りませんが。ただ、そうですね。そいつに彼女の持っている願望を無理やり捻じ曲げて」

「違う、捻じ曲げたんじゃない。そう捉えたんだ」

 先程からティンの台詞に割り込んでくるエーヴィア。ティンは疑問ばかり増えるものの問いを重ね続けるしかなく。

「一体、どういう事ですか?」

「邪心降霊の儀式術式は、人の欲に反応する。その内容は関係なく、要は欲の大きさによってのみ関係する。例えば誰かの上に立ちたいとか、何かが欲しいとか、世界の全てが欲しいとか」

「世界の全てが、欲しい!?」

 疑問符ばかりを表情に張り付けるティンはその言葉にはっとなって立ち上がり、エーヴィアも同時に立ち上がる。彼女にとって、それよりも先にエーフィリスの言葉がリフレインする。

「そうだ、世界をこの世の全てを欲しがるような巨大な欲望に反応し、そこを起点として爆発させ負の感情を増幅させて邪神を降臨させる為の生贄にさせる」

「へ、陛下、お言葉ですが一体何の話を?」

 慌てる様に置いてけぼりを食らっていたラルシアが割り込んではいるが二人はほぼ無視して確認し合うように。

「つまり、邪神降臨に必要な生贄の条件は規模の大きな願いの持ち主だ。それこそ国一つ、世界一つ、中身は不問にただ願いの規模のみでだ!」

「陛下、あの女は言いました。自分の願いは誰もが幸せになれる世界を作ること、その為に世界が欲しいと。陛下、その話は何処で!?」

「かつて、デルレオンに存在した禁書庫だ。今は失われているがその中身は全て暗記している。他にする事も無かったからな、その内の書物によればまるで昔誰か生贄になって邪神降臨の儀式を行ったと言わんばかりにその記述があったぞ」

「行ったと、言わんばかり? 断言されていない?」

 リフィナが怪訝な表情でエーヴィアの解説に口を挟む。エーヴィアは彼女の方へと首を向けると。

「ああ、断言はされてなかった。いや、より正確には歴史の中でそれを実行しようとして阻止された、みたいな話があった。二度と起こさぬよう起こらぬ様にと対策と内容が事細かく、な」

「成程。でもティン、聞きたいのはそこじゃあないんでしょ? それじゃあ、結局式は出来ない」

 ティンは非常に切羽詰まった表情でリフィナの言葉にうなずく。結局、蚊帳の外に放って置かれっぱなしのラルシアは困惑気味に。

「い、一体何がどうなっていますの!? もう少し分かり易く」

「幾らあの魔王の情報が集まろうと、此処から脱出する方法に繋がらないってことだよ。女王陛下、もしかしてヒントとか持ってます?」

 リフィナが向ける問い、ラルシアは答えが欲しいと、ティンは希望に縋りつくようにエーヴィアを見る。だが、エーヴィアが見せる表情はただただ苦い物でゆっくりとティンから手を離し。

「この世界自体、私は何もわからない。そもそも、此処が一体何の術式で出来ているのか見当もつかない。こんな世界なんて、日記を開いた途端別の世界に飛ばされる魔法何てあるのか?」

「うーん、転移系ならお手上げ。でも、転移系の魔法が動いたようには感じなかったよ。寧ろそこに箱庭の世界が一つあって、そこに飛び込んだと言うか飲み込まれたみたいな」

「日記が開くと同時に世界が一つ作り出された、と? そんな事があり得」

「ラルシア今お前なんて言ったぁッ!?」

 頭が、脳内の計算式が高速回転を始めた。世界一つ作る術式、世界の法則その物を飲み込む術式、それ自体確か何時か何処かで見聞きした。そうだ、多分浅美が使って居た術式がそうだったんじゃないか。

 ティンはラルシアの一言から頭が様々な仮説を刹那の間に1億は構築していく、だが怒鳴られたラルシアは不機嫌な態度を見せつけて。

「行き成りなんですか貴方! ただでさえイライラが募っている中で」

「お前の気分なんて聞いていない、日記が開いたと同時に世界創造って言ったか!?」

「ああもう、落ち着きなさいな! ええ、いいまし」

「おい待て、待てラルシア! 世界一つ創造だと!?」

「世界創造、そうかその手が」

 ラルシアの声を遮ってエーヴィアとリフィナの声が重なり二人は思考の海に、と言うか一人は記憶の掘り起こしに入った。またもや置いて行かれたラルシアは不機嫌極まって不貞腐れるように瓦礫の上に座り込む。

 そしてティンは遂に見えた糸口にエーヴィアとリフィナに。

「何か、心当たりでも?」

「あるよ。禁忌の大秘術、教会曰く世界の敵とすら言える旧世界の遺産。名前は創世術式、今なら天を創ると言う意味から創天術式と言われるもの。内容は単純、箱庭の世界を作る事」

「箱庭の世界?」

「そう、それは全ての属性の魔力を発生形成させる術式にこの」

 リフィナは一度着ると腰に巻いたポシェットを取り出してティンに見せる。それは四次元ポシェットだ、固定された異次元が展開されているポシェットで物を大量にしまえる道具だ。

「四次元ポシェットにみたいに巨大空間を展開維持する術式を混ぜた術式。言うのは簡単だけど、内容は恐ろしく別物で果てしない。要はもう一個宇宙を作る魔術だ」

「もう一個、宇宙を!?」

「そして、起動した者は創世者としてその世界の法則を自由に作れる」

 次に答えるのはエーヴィアだ。

「そうだ、生きとし生けるもの全て。世界の法則から何から何まで、正にお手軽な神様製造術だ。多分、教会はそれで簡単に自分だけの新世界、創世者を量産させない為に其れを禁忌としたんだと思う」

「陛下は存じていて?」

「デルレオンの禁書庫にあった知識だ。そして、邪神降臨にも使われていた術式でな。降臨した邪神は増幅させた負の思念を魔力エネルギーに変換させて創世術式を使い世界を己が物にしようと、した」

 答えが出た。ティンの頭脳は、一気に冷却し彼女の中で展開されていた式と仮説が一掃され、たった一つに揺るがない答えが生まれる。そして、構築された式と当てはめた数字に基づけば、出される答え()はただ一つ。

 ティンは、答えを告げる役を女王へと移す。もう彼女も分かったのだろう、あまりにも恐ろしい事実に。

「そいつは、世界の上から世界を塗り潰し、上書きする事も出来る。これは、邪神と言うか、世界再生教とか言う大昔に居た、今は殲滅された信仰団体が思いついた計画だそうで。世界を飲み込むほどの大きな欲望を持った者を基盤に、邪神を呼んで、創世術式を使って世界の塗り潰しを」

「行って、世界を彼女の、いや仮初の邪神だかにさせて自分達の良いように世界を作り替えようと」

「違うぞ、ティン」

 思わず口をはさんだティンに、エーヴィアは否定の言葉を紡ぐ。

「奴等はあくまで、現状世界の法則破壊のみを望んでいた。そしてその上で箱庭世界を展開して箱庭世界であると言うことそのものを誤認させてその事実を忘却させる。それが連中の計画だ」

「女王陛下、それ本当?」

 エーヴィアに鋭く問いかけるのはリフィナ、気付けば臨戦態勢を整えているティンに続き彼女も答えに至ったようだ。星姫は手持ちの術式を確認し、更に追加で術式の構築を始めている。

 そして女王は確たる表情でしっかりと肯き、リフィナは大きなため息を吐いた。ラルシアだけが状況を飲み込めない。

「事実だ」

「え、えっと、それが事実だとどうなるのですか?」

「落ち着けラルシア。だから、此処から出るにはあの魔王を倒すしかなく、多分奴の目的は」

 直後世界が、瓦礫が輝き始める。そして終わりを告げる様に魔王が光となって表れた。

「イヴァーライル、やっと始まるよ。私達の婚姻の儀が」

「すまんが、私にはフィアンセが居る。同性の愛に興味は無い」

 剣を抜き、女王は魔王の鼻先に切っ先を突きつける。

「ああ、貴方に言ってないよ。どうせ、私はもう魂以前の存在であなたの肉体に興味は無いの。ただ、私は会いたい人に会うだけ」

 魔王は剣何て気にせず一歩前に出る。

「ねえ、兄さん」

「私はお前の兄じゃないぞ」

「でも、魂はあの二人の面影を感じる。そっか、兄さんはイヴァーライルの血族を番わせたんだ」

 まるで剣を弾くように魔王がさらに一歩前に出る。エーヴィアは決して力を緩めていたつもりも無いのに剣がずれていったことに動揺しつつも真っ直ぐ睨むがそれすら無視して魔王はエーヴィア身を寄せると一言。

「お願い、リーク。私を殺して」

「何?」

 魔王は、確かな意思を瞳に宿して己の殺害を懇願する。エーヴィアは困惑の表情を浮かべるも。

「このままだと、私は兄さんとリークが作った国を潰してしまう。此処はリークの作った、残してしまった公開の生んだ世界。そこに恐ろしい悪意が混ざり私と言う存在が、土地の歴史が再現してしまった」

「まさか、呪いの影響が!? じゃあお前は」

「私は、リークと兄さんの血統とその遺志を継ぐ貴方に、貴方を通してリークと兄さんにお願いするわ。このままだと、リークの理想が。兄さんが自身の願いを押し殺してまで騎士として生きた一生も無に帰してしまう」

 そこに居るのは魔王ではない、かつて存在しただろう姫君のそれだった。

「私もこうして、二人の魂と血統と遺志を継ぐ貴方の側に居るからまだ正気でいられる。でも、それももう持たない。だから早く!」

「分かった」

 エーヴィアはあまりにもあっさりと剣を振り上げて姫君の肉体を押し飛ばし剣を振るい、その肉体を切り裂く。

「これで終わり」

「駄目、駄目だよ。光で私は」

 だが、切り裂かれた彼女の肉体は傷一つ付かず遂に周囲の瓦礫は光に代わって哀れな姫君の体へと。

「リーク、兄さん、お願い。私を滅ぼして」

 ちなみに今回の話は大凡4時間で書き上げました。うん、突貫作業!

 んじゃまた次回。

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