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イヴァ―ライルの闇

 唐突に出会った、と言うか再会した友人を前にティンは困惑しかなかった。何故に国王の寝室と言うかベッドに寝込んでいるのか。と言うかどうやって入ったのか。

「リフィナ、何でまたここに。此処って何処だと思ってるの?」

「ん? さあ、私はぶらぶらしてたら術式の集合してる此処にどんな技術が入ってるのか気になったから入っただけだよ」

 ベッドから身を起こすと欠伸交じりに返すリフィナ。彼女は背伸びをすると周囲を見渡すと、ベッドから降りるとまず手始めに部屋の壁をなぞる。するとなぞった後が光となって何かの線が浮かぶ。

 しかし、エーヴィア達からすればそれより何よりも気になる事がある。この部屋には王族の魔力か専用のカギが無ければ入れない。なのに、此処に居ると言う事はどういうことなのか。

「ここには鍵がかかっていた筈だが」

「術式によるアンロック? あんなん、姫になるような魔導師なら余裕で解除できるわ。ま、相当魔法の研究熱心なオタク魔導師でもなきゃあれが魔力でロックが掛けられてる事も魔力で解除出来ることも気付かないだろうけど」

 リフィナは語りながら目にした壁に指を押し当てる。そしてそのまま壁をなぞり、踊るように部屋中を歩き回る。彼女が指を滑らせた後には光の線が浮かび、彼女の動きを追っていく。しかしその跡はやがて不思議な模様が浮かんでくる。

 だがもう一つ、エーヴィアには問い質したいことがあった。

「シャガーが此処に来ていた筈だ。貴様知らんのか?」

「いや?」

「と言うか何故、本当によくもまあ極自然に国王ご用達のベッドに寝れたな」

「え、これが所謂キングスベッド? うっわ初めて見た」

 エーヴィアの突っ込みに反応し、描き切った術式を切断して部屋の中央に鎮座するベッドに目を向ける。

「お前、これが何なのか知らずに寝てたのか」

「此処、客室じゃなかったの?」

「違うわ、王族専用の寝室だ阿呆」

「ああそうなんだ、知らなかったよ。多分、此処に来てたって人はあたしが光学迷彩の術式張ってたから気付かなかったんじゃない? あたし寝る時邪魔されるの嫌だからいっつも光の屈折で見えなくさせてるし」

 リフィナの暢気な返しにエーヴィアも流石に溜息を吐いて。

「全く……で、これは? 部屋中に描かれてるこの模様は何だ?」

「この部屋を覆っている術式の一部。これでもまだまだ、更に幾重にも術式が覆っているんだけど……これなんか変。よくある術式を幾つも重ねて術式を構築してるんだけど、これって効力からすると幾つか違う術式で全く同じ効果を、しかも複数でこなせるようになるんだよ」

 もうリフィナは術式の知識に明るくない一行を置き去りにして次々に魔導師相手しか通じないであろう考察を口にしていく。多分口や足を動かさないと頭が動かないのだろう。

「そう、ちゃんと自分なりのオリジナル術式を1から構築すれば部屋にこんなに沢山、クモの糸を張り巡らせるような面倒な事をしなくてもいいんだ。確かに、そういった構築も悪くはない。何せ手っ取り早く作れるし建物自体に仕込むとき建築家との連携も取りやすくなる……でもそんな真似をするくらいなら何でこんな話に乗ったんだ? 魔導師に時間が無い、これは分かる。でも態々手抜きと言われても仕方ない仕事をしてまでこんなことを? 初めから蹴ればいいのに、少なくとも私ならそうするし大体の魔導師ならそうする筈だ。私達にとって外部の評価何て気にしないけど、でも取り繕う事を忘れるとそれはそれで周囲から嘗められる事にもつながる、それは結果として外部と付き合う時に面倒が起きる。私が無名の時代とか魔導師達の街の連中も外の連中もクソな奴らばかりで本当にめんどくさかった。例えば、人の研究が有用と思えば人の研究室に入り込んで家探し紛いの行動を平然と行い、部屋から人の研究レポートをくすねた挙句研究資料をぶっ壊して出て行った上、それを人に教えた挙句ちゃんと戸締りしないからこうなると言って警察にもあたかも私が自演だとでも言わんばかりに伝えて逆に警察に怒られて、とことん注意までされた。だから今度は術式でガッチガチに監視用術式で固めて以前と同じようにわざとそいつらが入り易いようにおぜん立てしてやって、そいつらがもう一度潜入した時にそれを全部撮って、頃合いを見計らって警察呼んでその映像をみせてあげたんだ。いやぁ見ものだったなぁ、そいつらが部屋出て来た時警察が待っていて青い顔してあれこれ言い訳するの。あーだーこーだって言い訳しまくって、でも動かぬ証拠見せられて連れて行かれて、それでもそいつら陰謀だ何だと喧しく叫んでてさ、面白くっておかしくって良い頃合いに私が出て行って全部茶番にして上げたんだよ。そんでね恩着せてね、次何かあったらどうなるかって一つ一つ教えてあげたの。いやぁ、楽しかったなぁあの青白い顔。悔しさと怒りと恐怖に満ちたあの表情。まあそう言ったこともあるからこういう手抜き工事は基本魔導師はし無い筈なんだ。何せめんどくさい、そもそも他所の人間の注文聞いてたら自分の研究が疎かになるしただでさえ短い人生が削れて自分の研究の歓声がより遠退いてしまうし、こんな雑な仕事してたんじゃスポンサーからもそっぽ向かれて研究に支障が出て来る。特にこの私が浮かばせた術式なんて、これは水道制御の術式だね。下の部屋に水道があったから多分それだね、連なるように熱発生の術式もあるからこれで水の温度調整してるんだろうけどそもそも水の温度を調整しつつ水の出力を制御する術式だって世の中ちゃんとあるし自作だって出来るし、自作した方がより細かくこの部屋に合った術式になる筈。それにこの部屋、術式で雁字搦めに固めているおかげかほぼ異界化までしてる。何で? 術式の重ね掛けは実際に起動させる際により負荷をかけるし、魔力の消費が嵩張るし運用が面倒にもなる。起動の際魔力が多くいるってことはそれだけかかる人件費も高くなる、幾らこの国女王様が魔力過多つっても光単一で起動する術式にも無理があり過ぎる。私がやるならそれこそ光属性単一でも如何にか出来る様に調整して見せるし何なら一工夫加えてこの城のライトアップまで出来るし。だけどそれ自体、術式の応用と魔力の運用で別に普通の魔導師でも出来るし、術式運用のちょっとした応用だから別に魔術師でなくともできる、なのにこの術式を構築しているのは魔術師と言うより一介の建築士。ただ魔法の知識を、自分の職業に合わせた専門知識を持っているだけの魔導師、だったら建築専門に術式を特化させることだって出来る筈。一体全体どんな意図でって……あんたらぼうっとしてどうしたの?」

 散々自分勝手に議論を展開しておいてこの台詞である。しかも途中相当な深い深い闇まで溢れてくるレベルである。ティンとラルシアとエーヴィアはあまりにも事態に度肝を抜かれそして正気を取り戻して逆にリラックスまで出来るレベルであった。

「人が解説してる間に何寛いでんだこら」

「あ、御免。あまりにも難解過ぎて何の呪文詠唱かと」

「ええ、ええ、ではそれで。ああ、終わっていましたか? 素晴らしい演説でしたわ、流石は姫の称号を持つ魔導師殿。我々の理解に及ばない素晴らしい叡智の数々で」

「ん。もう終わったか、ラルシア茶、あいつに」

「聞けよそこ。つうかそこの金髪剣士、賛辞を並べるなら人の話が終わる前に携帯切れよこら」

 リフィナは言うとラルシアから差し出されたペットボトルのお茶を奪い取るとそのまま一口飲み込み。

「ぬっる」

「さて、此処にはもう何もないようですし出ましょうか?」

「はぁ? 何阿呆な事言ってんの? これだから素人は」

 リフィナのあからさまな態度にラルシアはと言えばはよはよと言った態度で催促するのみだ。恐らく、今のはわざと言ったのだろう、勝手にくっちゃべって解説してくれるのなら適当に御膳立てした方が早いと思ったようだ。

 かくしてリフィナはラルシアの思惑にまんまと乗せられそのままペラペラと喋り出す。

「そもそもこの部屋、異界化されてるのには何か理由があるね。そこの理由はあまり見えないけど、扉に術式が集中してるからそこが関係しているのは間違いないね」

「そういや下の部屋、床が一つ変になってたけどそれも?」

 リフィナの語りに口を挟むティン、リフィナは特に気分を害した様子も無く。

「いや、そこは分からない。少なくとも私には何も感じなかったね、一先ずちょっとついて来て」

 言われた一行はそのまま一階へと降りて行った。リフィナは迷わずに扉の方へと向かい、術式を展開した。

「それは?」

「この辺りに張ってある術式の解析。一先ずこの辺に掛かっている術式がどういう並びになっているかだけでも調べる」

 リフィナが言うと今度はティンが扉の横についているスイッチ、いやダイヤルの方へと目を向ける。

「そういや、こんな所にダイヤルがあるね」

「確かに。何だこれ」

「成程、分かった」

「え、早」

 術式で調べ始めたリフィナは物の数秒で宣言して立上がり、その速さにエーヴィアもティンも驚いた。ラルシアだけは何処かのんびりした様子で構えているが。

「扉に集中している術式は全部そこのダイヤルと連動しているんだ。そして、異界化までされたこの部屋。答えは一つ、この部屋そこのダイヤル弄れば転移するよ」

「は、え、マジ!?」

 驚くエーヴィアはダイヤルを回転させる。すると外の窓が一気に真っ暗になり、しかし直ぐに明るくなる。部屋の変化が収まるとエーヴィアは部屋の外へと飛び出して周囲を見渡す。

 女王の目に飛び込む部屋の外は、先程の渡り廊下ではなく完全に室内だった。何処かの、見覚えのない廊下となっていて、このままでは拙いともう一度部屋に戻る。

「お、おい! 外が変わったぞ!?」

「だからそう言う術式だって言ったじゃん。でも、何でこんな入り組んだ突貫工事じみた術式の構築を? 時間が無かったの?」

「そう言えば陛下、この城って一か月半で作れと言われたんでしたっけ?」

「ああ、私はそう聞いている」

 ティンとエーヴィアの会話を聞いたとたん、リフィナの深い深いため息が漏れた。多分ずっと疑問だった謎が最悪な形で判明したからであろう。彼女は物凄いジト目で女王を見ると。

「ああ、そりゃこうなるわ。そら突貫工事になってもおかしくないわな。その人ら、よくたった一か月半で此処まで術式組めたね、逆に一周回って尊敬の念すら出て来るよ」

「それよりも、どうやったら元の部屋になるのか教えてくれ。このままじゃまた迷子だ」

「そこのダイヤルを動かせば? 多分最初は端っこに設定されてると思うから」

 言われるままにエーヴィアはダイヤルを操作して元の状態に戻す。するとまた部屋の窓が真っ暗になり、明るくなった。エーヴィアは外に出てみるとリフィナが言っていた通り、外は部屋に入って来たときと同じく渡り廊下となっていた。

 エーヴィアはゆっくりと扉を閉めて部屋に戻っていく。そこでティンが先ほど言っていた床が変色してるか所に行く。そこは基本的に椅子が置かれており、普通は気付き難くしているのだろうがエーヴィアが座った為か、少しずれて見えるようになっていた。

「ねえ、この装置動かしてみていいの?」

「よろしいと思いますわ。どうせですし、何処をどうすれば何が起きるのか、知っておくとよいでしょう。もしかすれば、陛下は一時的にでも此処に住まわれるかもしれませんですし……陛下、宜しいでしょうか」

「ああ、私も問題はない」

 エーヴィアの許可を貰った事を良いことにティンはすぐさま椅子をどかして床を調べ始める。どうやらこの床は絨毯の上から操作できるようになっているらしく、ティンは絨毯の上から調、そして装置を起動させる。

 突如部屋全体が揺れ始め、窓から光が消える。そしてこの感触からして、部屋が落ちているのだと理解し、したと思ったら部屋が止まった。唐突に動き、止まった部屋。一行はどうしたものかと考え、そして言い出しっぺになるティンが。

「あたし、見てきます」

「頼んだぞ」

 あっさりと押し付けられ、やれやれとティンは扉を開けてその奥に行く。が、扉を開けただけでその先の安全性が実証されてしまっていた。その事実をティンは。

「陛下、大変です」

「何だ」

「外、普通に安全です」

「何故に」

「外、図書館です」

 ティンの言葉にエーヴィアはぬっと顔を出してみるとそこは確かに棚の群れと鎮座する本の壁。紛れもなく図書室がそこにあった。エーヴィアは突然無垢な表情でほうと息を漏らすとすぐさま外に出て本を探し始める。ティンも外に出てラルシアにリフィナも一緒に外へ出だす。

 エーヴィアが一番楽しそうに周囲を見渡し、そこへ唐突に溜息の様な声が。

「やれやれ、何故ここに居られるのですか。女王陛下」

「お前、ミルガか。貴様此処で何をしている」

 分厚い本を持って歩く老人、イヴァ―ライル王国大臣のミルガが姿を現す。

「ここは図書室、読書以外何をせよと。ところで女王陛下、貴方にこの部屋の存在を伝えた覚えが無いのですが。どうやってこの場所を? この地下図書館は早々簡単に見つかるようには出来てなかったと記憶しているのですが」

「貴様……私に内緒で大図書館を作ってどうする気だ」

「私は一人で静かに読書を嗜むのが趣味なのですよ。全く……ん?」

 ミルガは奥に見える扉が開いていることに気付くと諦めたように肩を竦めると。

「やれやれ、離れ塔の執務室からですか。あそこは私の部屋にしようと思って色々と仕掛けを施したと言うのに」

「まさか、ダイヤル捻るだけで部屋が動くようにしたのは」

「それはシャガーです。あの守銭奴、時は金なりとか申して転移術式を組み込んでとか無茶ぶりをしまして。結果ああなりました」

「で、貴様はその尻馬に乗ったのだろう? ならば糾弾する資格は無いな」

 エーヴィアの台詞の途中でミルガは立ち去って行く。エーヴィアもふんと踵を返すと。

「ああそうです、女王陛下。一つ頼みごとを宜しいですか?」



 ミルガの案内で向かった場所は図書館の一部、そこは何故か瓦礫の山が出来ていて。

「これが?」

「建設時、この先に妙な空洞があると判明しまして。何があるのか分からず、もう直ぐ祭りと言う事も相まって」

「で、明日には凱旋パレードに参加することになっている私に何をせよと?」

「聖剣女王とも比喩される女王陛下に、少々見て来てもらえないかと。何、陛下の手に負えないのであれば我々全員、誰にも手が負えません」

 睨む女王の視線をまるで意に介さず、この国最強は女王であると遠慮なく口にする大臣。だがこの程度で引くようではイヴァーライル王国女王は務まりはしないと。

「氷結瑞穂とかいるだろ」

「大和帝国を敵に回せと? それなら自国を生贄にする方がまだマシです。最悪、その時こそリク王子殿下に返り咲いていただくまで」

 エーヴィアは舌を打つとポシェットから剣を引き抜くと瓦礫を薙ぎ払い。

「行くぞティン、ラルシア、リフィナ」

「待てこら、勝手に人を混ぜるな」

「いやはや、星姫殿にはまるで頭が上がりません。そもそもこの城の術式構築にあたり、星姫殿より提供された術式が無ければそもそも実現するかも危うかった大改装でしたから」

「って、通りでやたら大規模過ぎる魔力が使われてると思ったら、携帯型儀式補助術式使ってるの!? そんな風に使われるとか流石に想定外なんだけど!?」

「行くぞ、リフィナ」

 先行はティンに任せ、エーヴィアはラルシアと肩を並べてしんがりを務めていた為、エーヴィアはリフィナの腕をつかむとそのまま引っ張り。

「はい、星の光を拾ってチャージ出来ると言う特性を利用し、それを参考して王城のデザインなどをさせて頂かせてもらいましたので」

「うおおいこらぁ!」

 リフィナはミルガの言っていることに突っ込むがそれよりも強引にエーヴィアに引かれて行ったのである。

 さて、その奥。そこにある物とはなんなのか。一行が下りた先にあったのは。

「陛下、机があります」

「机? 怪物は?」

「いません、いたら既に切っています」

 ティンは周囲を見渡して言う。そこは今にも崩れそうな、瓦礫の中に出来た部屋と言った所。その部屋はおんぼろの本棚数個と、机が一つ。本棚の中には本が幾つかあるのみで。

 部屋に明かりは無い。と言うかティンが腕を発光させることでライト代わりにしていた。それを見たリフィナは思わず。

「フラッシュ使えば?」

「この部屋太陽に包まれるけど?」

 溜息を吐いたリフィナは部屋に光を撒き、明るく照らす。机の上、そこには大きな本が一冊置いてあるのみだ。ティンはエーヴィアに顔を向けて確認を取る。エーヴィアも頷いて催促し、ティンは本を開いた。

 本の中、それを見たティンは肯き中を一言口にする。

「文字が読めません!」

「待てこの野郎。おいラルシア」

 ティンの台詞にエーヴィアは肩を落としてラルシアに指示を出す。出されたラルシアは相手が女王だからか、素直に従って本に目を向けると。

「陛下、読めません」

「待てこら手前」

「あんたら、字が読めないってそれどんだけ古い文字なんって」

 ラルシアまでも即手を上げたその文字、リフィナが覗き込み一瞬の間が生まれた。そこでリフィナは神妙な面持ちでエーヴィアの方を見ると。

「これ、女王様じゃないと読めないかも」

「は?」

 リフィナの言葉に頸を捻るエーヴィア、女王陛下は疑問を顔に浮かべて本を読む。そして、なぜ三人が読めなかったのか。その事実をエーヴィアは思い知る。

「古代、イヴァ―ライル文字」

「やっぱり、この国のお祭りに使われてる文字に似てたからもしかしてと思ってね。読める?」

「ああ、読める。昔、父さんに教わった覚えがある。大丈夫だ」

 そう言ってエーヴィアは本に目を落とす。しかし直ぐに眉を顰めて本を撫でた。

「女王陛下?」

「何だこれ」

 エーヴィアは本を読み、その中にある文章を指でなぞりながら読み上げた。

「私は、魔王です。願いは、世界征服」

 その時、世界は反転する。



「――は?」

 ティンは瓦礫の上に立って居た。崩れかけた城の上に立って居て、何処かの宮殿にティンが立って居る事に気付く。周囲を見渡して、そこが見え覚えのない場所であることも今まで居た所でない事も、何よりあり得ない場所に立って居る事も把握する。

「女王、陛下?」

 人の気配を感じない。見上げる空は如何にもな終末感漂う灰色の空。世界が、廃墟になっていた。

「リフィナ! ラルシア!」

 ティンはマントを翻し、一歩歩き出して何かを踏み付けて転びそうになる。それを見て彼女は眼を見開いた。そこにあったのは、鎧を着た誰かの遺体で。まだ確かな血肉がある。

 日記の中には、終末の廃墟が広がっていた。そこでリフレインする女王の言葉。


 ――私は、魔王です。願いは、世界征服。

 今年中に最終回は無理だった! ならやるだけやるさ! 今紐解かれるイヴァ―ライルの闇の歴史!

 んじゃまた。

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