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祭りと言えば暴れるのが花

「はぁ……ティン君、君の人付き合いにどうのこうの言う気は皆無だがもう少し連む人間は選ぶべきだと思うぞ」

「久城さんはまず言葉の勉強するべきじゃないかな。主に皆無って言葉」

「大丈夫だ、彼女が何処の誰と……そう、例えレイプ魔だろうと殺人狂と付き合おうが愛し合おうが何も口出ししない。私に無害である限りな」

「黙って聞いてたらこいつ最低だ」

 結野と有栖は顔を合わせ早々にコント紛いの会話を始める。ティンは呆然と聞き、マリンは近くの出店でじゃがバタを購入していた。

「いや普通だろ、人間誰だって我が身が可愛いもんだ」

「しかも他人の心配じゃなくて自分の心配しかしてねえ清々しいほど自分中心だなおい」

「あのな、結野。お前だって知り合いがそう言う連中と一緒してたら即効で絶縁して知り合いであったことを忘却するだろ?」

「そこまで徹底しねえよ!? 一応一言くらい注意するわ!」

 因みにここまで流れるようにボケとツッコミを繰り返す二人だが、前回のラストで頭を踏みつけたままと言うか完全に足置き場と化して女を完全に無視しての会話である。二人に良心の呵責は微塵もないのであろうか。少なくとも、此処までの会話から考えて有栖にそんな考えも感情も無い事は分かるが。

 蛇足だが、そんな風に踏まれてる彼女は恍惚とした表情で己こそがこの世で最も幸福であり、満足を得ていると言わんばかりに穏やかな雰囲気のまま幸せを噛み締めている。

「全く、しかしティン君、結野はまあギリギリアウトとして林田とつるむのは良くないと思うぞ。こんな馬鹿と一緒にいては君まで悪影響を受けかねない」

「そこには同意するが、それお前が言えた事じゃねえよな?」

「なあ、二人とも。いい加減沖野解放した方が良くないか?」

「だヴぁればが、ヴぉおっでおげ」

 林田が引き気味に二人に対し、完全に無視されている沖野のことを指摘するが二人は白々しい様子で簡潔に。

「沖野? ああ、あいついたっけ……何処行った?」

「さあ、どっかその辺でナンパしてんだろ」

「いやいいんちょ、踏んでる、踏んでる」

 林田が指を下に向けて、向けると二人も下に目を向ける。そして視線を林田に戻して一言。

「おい林田、誰がいいんちょだ」

「ええっ!? 突っ込むのそこかよいいんちょ!?」

「まあ確かに久城さんって委員長って感じだし、それで問題ないっちゃないよね」

「良いの!?」

「良い訳あるか!」

 そこでマリンは買ってきた食べ物をティンに手渡す。それでも気が付かないティンに対してマリンは買ってきたサラダをティンの口に詰め込んで、顎を動かして租借させると漸く反応し。

「ふぁっ!? ふぁひんふぁん、ふぁふぃふぉ!?」

「食べながら喋るのはマナー違反ですよ?」

 言われてしまっては仕方ないのでティンはもぐもぐと口に詰め込まれた野菜を食してごっくんと飲み込んだ。

「って、マリンさん、これ如何収集つけるの?」

「付ける必要は無いのでは? 彼女達だけで楽しんでいるようですし、此処は置いていきましょう」

 そう提案するマリンにティンはふと思案し、そして出て来た答えは単純に。

「そだね、放って置こう」

「ん、じゃまあどっかで」

 と立去ろうとしたと同時に結野が別れの言葉を送っていた。そしてティンとマリンは再び人混みの中に紛れて行った。

「何故にサラダを……肉くらい混ぜたっていいじゃんか」

「ええ、ですから止めました」

「酷い」

「お肉ばかり食べすぎですよ、ティンさん」

 そんなやり取りの中、一行はやがてやけに人が集まっている所に突っ込んでしまった。出ようにもあまりにも激しい人の流れゆえに一体何事かと仕方無く中央に潜り込む事に。近付けば近付くほどお菊なる人々の歓声、そして何より特徴的とも思える音が聞こえる。そう、音――武器と武器をぶつけ合う金属音だ。

 これらが齎す意味とは、唯一つ。この先で戦闘が行われていると言う事であり、この人だかりは観客と言う事だ。

「すい、ませんっ!」

「失、礼っ、しますっ!」

 観客達の潜り抜けて突破した先に居たのは、美麗な金色の髪を肘が超える程度に伸ばした、今や各業界にその名を轟かす美しく若き女社長――その実態は多くの大物に振り回され続ける貧乏くじ引き続ける哀れな商人。

「ラル、シア。お前ここで何をして」

「今貴方、私の顔を見て何か非常に失礼なことを考えませんでしたか?」

「って、これ闘技場?」

 後ろからやって来たマリンとティンに対し、髪をかき上げながら半眼で睨みラルシアに対してティンはさらっと丸無視して一歩進み出た。

「無視かよこいつ。ええ、そう。此処はこの祭りの会場に幾つか作られた簡易コロシアムですわ」

「こんな所でも闘技場か」

 と話しているとティンは闘技場の方へと目を向ける。闘技場は折りたたみ式の柵を円形に並んでいるだけと言う物凄く簡易的なものだったが、ティンの目の前まで人が吹っ飛んできて柵の前に展開されているだろうガラスにぶつかって地に落ちた。

 対戦者である男は幾つか毒づくと立ち上がりつつ己の武器である斧を手に取り立ち上がって己の敵に向っていく。

「ラルシアは参加しないの?」

「つまらないのでやりません。私にあんな泥臭くて汗臭い連中と100連戦もしろと?」

「いや100連戦もする必要は」

「あるみたいですよ?」

 ピッと指差すマリンの示す先を見ると、そこにはでかでかとこの闘技大会の概要が書いてある看板があった。内容は簡潔に語れば。

「ルール無用、賞金入手方法は一つ勝ち続ける、こと。最大100連勝で……賞金100万en!? え、ちょ、ま、なにこれ!? どっからでたの!?」

「闘技大会運営委員会と向こうでやってるトトカルチョですわ」

 ラルシアは顎をしゃくって看板の向こうで大盛況中の屋台を示す。今そこで大声で試合の実況などを行っている。

「闘技大会運営委員会?」

「闘技大会の運営を司る委員会で、私の大本会社ことノルメイアを初めとする多くの武器関連系会社が入会してる委員会ですわ。尤も、凱旋祭の闘技大会の繋がりは光栄社ですが」

「光栄って、まさか女王陛下はそのことを見越して光栄社を選んだの?」

「恐らく。剣術四天王としての名声や人脈だけで言えばあの会社はノルメイアの上を行きますから。尤も、それ」

「じゃあ優子もいるかな?」

 途中から挿入されたラルシアの実家自慢を華麗にキャンセルアンドスルーを決めたティンは知り合いを探して周囲を見渡す。がそこにマリンが。

「居るでしょうが此処にいる可能性は低いかと。幾らなんでも会社のご令嬢が此処で屯しているとは考え難いです」

「ふーん、にしても闘技大会か……マリンさん出る?」

「私、荒事は苦手ですので」

「貴方達、私を無視するとは良い度胸ですわね?」

 ラルシアの殺意の篭った視線をまるっと無視するとティンは闘技場の舞台に視線を向けると、砂煙と瓦礫吹き飛ばすほどの一撃を持って試合が終了したらしい。司会者の台詞から察するにどうやら連勝が止まったらしい。

「そう言うのならティンさんが出てみては?」

「ええー、あたしか……んーそこまでお金欲しいわけじゃないしな。後、100連勝って凄く、現実離れしてる気が」

「しているからこその条件でしょうに。こう言うのは手が届きそうで届かないくらいで丁度良いのです」

 言うラルシア、直に始まる試合。見ていてティンは。

「マリンさんは金銭的に余裕であると?」

「余裕も無ければ時間的余裕もありません」

「今、余裕があるんじゃ」

「と言うかあの公爵夫人、自分の部下に自由時間もやらないのですか? と言うより、あなたが使い方を知らないように見えますが」

「……はあ」

 と呟き返してマリンはしばし一考。

「では、たまにはいっそ暴れてみますか」



「今度のチャレンジャーは何と可憐な槍使いのお嬢……いや、えーっと、お姉さんです!」

 大会のMCはチャレンジャーに上がったマリンを見て一瞬お嬢さん扱い仕掛けてお姉さんと訂正する。どうやら彼もマリンの魔力年齢をみてから察したらしい。マリンの武装は槍、それも長いのを一本だけだ。以前、ティンの戦いに同行したように大きな盾は持っていない。

 マリンは長い槍を片手で構え、そっと沿え置くように左手を槍の柄に触らせる。

「ではいざ尋常に、試合開始!」

「わりぃな、姉さんよ!」

 対戦相手の男は言うや否や片腕に嵌めたアームガトリングを構えて乱射し始める。

「な、なにあれ!?」

「アームガトリング、腕に装着するタイプのガトリングですわ」

 ラルシアの解説と共に立ち上がる土、撃ち出された弾丸がマリンの方を蹂躙する。が。

「銃撃するなら、まずは相手の方を確認すると良いですよ。場合によっては対処されると大変ですから」

 上空からかけられる声、上を見上げるとマリンは槍を投げるポーズを取っていて、更に彼女の足下には魔法陣が展開されていて、足下から吹雪き始めている。男はそっちかと銃口を上に向けるが。

「僅かに遅いです。既に術式の展開は終わっていますよ」

 ガトリングから放たれる銃弾は全て魔法陣から吹雪く雪と氷によって弾かれていく。マリンは槍をくるくると回して構え直し。

「主神より放たれるは、必中と必勝の槍――撃ち砕け」

 一刺し、放たれる魔力は衝撃となって男を丸ごと氷付けにし、マリンはもう一度投擲の構えを取ると。


「秘儀、グングニル!」


 投げ出される必中必殺を謳う神威の槍、その名を持つ氷の一撃を叩き込んだ。

 マリンの必殺技集ー、マリンの必殺技は現在3つまで存在します。


 第一、氷魔槍ブリューナク。

 五連突きで相手を仕留める氷槍の技。空中で使うと範囲が広く、他人数の相手に有効。地上からだと打ち上げてから五連撃なので空中使用が一番安定。


 第二、氷魔槍グングニル。

 一刺しで対象を決めてから必殺の一突きと言うか投槍で相手を刺し穿つ大技。空中地上で締めは槍の投擲だが威力は地上が上である。

 空中版は本編で見たように一撃目で相手を凍らせてからの槍の投げ付け、地上は刺して打ち上げから至近距離から全力投槍で相手を打つ抜くというもの。なるべく地上で使いたい技。


 第三、氷魔壊槍トリシューラ。

 三連撃で相手を突き穿つ必殺の魔槍。一撃目で相手を薙ぎ、二撃目で相手を釘付けにし、止めの三撃目で相手をぶち貫くと言うもの。

 トリシューラと言うのはとある海の神が持っていたすると三又槍のこと、この技が三連撃なのもそういうことである。


 以上。氷の槍にブリューナク、グングニル、トリシューラと来ると一部の人は、1つ目でコスト払って対象を主人のもとに返したりとか2つ目で対象取って破壊とか3つ目で三ヶ所から個別に対象取らずに取り除くとかやらかしそうですが、そういうことはしないので大丈夫。

 ではまた。

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