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魔獣の森で

 答えを得る者。

 答えを探す者。

 答えに至る者。

 己の能力を自覚して彼女は何を見たのか。何を思ったのか。



 答えが出る。黄龍の攻撃が、幾億幾万幾千の未来の中から、たった一つのみ選ぶ未来をとる。例え、答えが違っていたとしても、それを再修正すればいい。彼女が選んだ未来(こたえ)は。

 ――黄龍の正面(・・)からの攻撃により、タイミングを合わせ、上段(・・)からの攻撃を下に潜り抜けて剣を振る。切りに行く必要はない、高速移動(・・・・)している以上、この攻撃は避けようがないはず。

 これが読んだ答え。しかし、穴が無論存在する。

 あれほどにも高速で動いている黄龍が、方向転換出来ないと言う保障は? 上段とはいったが下段にも対応出来ない保障は? 

 故に穴があるし更に幾万の差分の未来が存在するが、それでもその上で行動を直せばいい訳だ。

 よって、未来は実現する。

 黄龍は上段と言うより中段の位置で斬撃を繰り出す。無論正面から、高速で。だが、問題ない、当たりそうなら当たる攻撃を切り落とすまで。いっそ、バラバラにして終わらせればいい。

 そう思ってティンは踏み込み、下段から黄龍に剣を当てようとして、何故か何処かからか現れた雑魚仮面と入れ替わり、それを十六のスクラップへと即時分解する。

 目の前でバラバラになり、見事に鉄のガラクタとなって魔獣化した草むらに落ちていくのを見届け、ティンは黄龍が吹き飛んだ位置を見る。

「お、おのれ! 何をする!」

「それ以上の戦闘行為を容認しない、御機は即刻戦線離脱せよ!」

「ふざけるな! 今のこいつは手傷を負っている、今なら」

「今なら?」

 底冷えする様な、刃に満ちた、氷のように冷たく、血に塗れた言葉が、切り裂くように貫くように仮面達を見る。

「弱っているなら好都合、大事を取って黄龍は」

「ならば一気に物量を持って」

「この場でか?」

 見れば、伸びた触手が彼らに巻き付こうと伸ばしていく。それを見て。

「第三勢力を確認、敵は手負いの獣、ここは一度撤退することを提案する。我等と共倒れにしてまで彼奴を仕留めるか?」

「……くっ、この勝負預けるぞ!」

 言うだけ言うと黄龍は宙へと舞い上がって消え去った。ティンはそれを見届けると周囲を確認する。

 そこには全員居なくなっていて、触手すらもいない。そこでティンは脚に刺さった黄龍の左腕を抜こうとして、そこに何も無い事に気がついた。

「……何時の間に。いや、思えばこいつら、自分たちがそこに居たって言う痕跡を残していない……ったく、一体何なんだ」

「ティンさーん!」

 そんな時、木々の狭間を突き破って兵士達一行が現れる。見た所、目が血走っており異臭放つ液体を被っている。

「落ち着いたら?」

「ひっ!?」

 そんな彼らの顔が一気に冷え切って青く変わる。それを見て、ティンは自分が何をしたのか、何をしているのか思い出す。

 血塗れで、ズタボロで、切れるほど鋭い声で、話しかけた。

「あ、貴方こそ、どうしたん、ですか?」

「……ごめん、私用で、襲撃にあった。一応平気」

「平気ってその出血で」

 一兵士は言いながらティンに近付くとしゃがみ込んで太股の傷の手当を始める。

「待っていて下さい、直に止血します」

「ティンさん、これ以上の進軍は無理です。一度本軍へと」

「戻れる? 無理でしょ」

 口にして、彼らの表情を見て頭を抑える。どうやらまだティンの言葉に鋭さが残っていたらしい。先程まで修羅場を経験していたとは言えども、彼らにまでそれを押し付けてはいけないと自分に言い聞かせつつ。

「取り合えず、体は動く。そこまで心配しなくていいよ。どうやら、こいつらあたしには手出しできないっぽいし」

「た、確かに……血中魔力だけでこれほどの威力とは」

 地面の魔獣を見て兵士たちは驚きの声を漏らす。実際、ティンの垂らした血の跡には溶けた魔獣があり、素の地面が垣間見えるほどだ。

 つまり、それほどの光の魔力を持っていると言うことに他ならない。

「ほら、一応弾除け程度にはなるでしょ? 連れ帰るこのまま行こうよ」

「……分かり、ました」

 

 ではまた。

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