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羅刹をも超える

 木々を切り裂き、現れたものはまさかの。

「またあったな」

 つい二日ほど前に出会い、片腕と片足を切り落としたはずの。

「契約者!」

「こ、黄龍!?」

 黄龍はティンが切り裂いた先の空間に待ち構えており、ティンを視認するや否や両腕からブレードを展開して飛び込んでくるティンへ。

 そしてティンも向って来る黄龍へと飛び込むように剣を構えて切り結ぶ。

「お前、この前切ったばかりなのに」

「あの程度の負傷、一日で修復可能だ! よもや、貴様を討ち取れる機会がこんなに早く来るとは!」

 ティンは黄龍を蹴りつけて距離を取り、黄龍も距離をとる。

「ったく、今仕事中! お前らと遊んでる暇はないんだよ!」

 そして頭に手を置いて術式を起動させるとティンから先に踏み込んで距離を詰め。

「貴様の事情など知ったことではない、今日こそその命貰い受ける!」

「やなこった!」

 黄龍も同じく反応して二人の剣が交差し、更にティンは舞うように右に回り込みながら黄龍の腕を狙い、黄龍もまた吹っ飛ばされるようにその一刀を避けてティンに蹴りつけ。

 ティンはそれを見て膝を折って後ろに避けて、すぐに衝撃をバネにして黄龍に。

 黄龍は後ろに跳ぶとブースターをふかして無理やり方向転換して向うティンに突撃し。

 交差、直後に振り返り切り結ぶ交差、振り返り斬り結び、黄龍は両手より展開したブレードによる擬似的な二刀流でティンに切りかかる。

 しかし、右で斬るも弾かれ左で切るも流され戻して右で防がれ左はかわされ右は切りかわし左は逃げられ右は弾かれ左も弾かれ斬って弾かれ弾かれては斬って斬って斬って切り結んで斬りかわして刃を重ねて柄で弾いて。

 ティンは向う双刃を剣を回転させながら黄龍の攻撃を捌いて行く。一見してティンが防戦一方だが、実際のところ全てティンによって見切られては弾かれている為以前優勢は動かない。

 尤も、ティンの回避力を駆使したがゆえの優位ゆえに攻勢は一切動かない。

 だから。

 右の斬線を弾くとそのまま力の流れに乗せて自身の剣筋をそのまま黄龍の首筋へと滑らせるように切り裂き、振られた左の一撃を右肩に乗せた剣をそのまま軸に自分の体を持ち上げてそのまま宙へと跳躍し、直後空中で舞うように後ろ首へと剣を振るうが黄龍は強引にブースターを使って距離を取り。

「おのれ、小癪な!」

 そして黄龍は体中にオーラをまとい、ティンはそれを見て頭に指を載せて術式を起動させて。

「――光子同調(フォトン・シンクロ)! 光子加速(フォトンブースト)!」

 ティンは加速術式を用いることで黄龍の変化、つまり超加速へと食らいつく。が、しかしそれでも目で追うのがやっとと言う様子で。

 しかしそれでも構う事無く黄龍はティンへと強襲を仕掛け、二人の剣が見事に交差する。それでは終わらずに、黄龍の右から振るわれた刃がティンの剣とぶつかり、その刃が力を受け流して黄龍へと迫り無理やり右の刃を押し込んで力の向きを体から下に向わせ更に左の刃を振るうも黄龍の推進力を利用して後ろに飛ばされるもすぐに旋回して右から切りかかりそれを弾いて次に左を突き出すも剣の柄で弾かれて開いた隙間にティンの刃が飛び出してそれを避けようと強引に体の向きを捻ると黄龍の左肩が抉れる。

 その隙を狙ってティンに右の刃を振るうが素早く戻されたティンの剣がそれを下から叩き上げ、次に戻した左を振るうも叩き上げた剣を更に戻して上から叩き落し、突っ込む黄龍を後ろに流してティンは一歩踏み込んで足を狙うも旋回されては表面をかするだけに終わりその隙にティンの頬に黄龍の右が掠り続いて振り下ろされた左を横から弾き、鍔競りながら両者は距離を取り、更にもう一度距離を詰めあうとティンから切り込んで互いの剣線が交差する。

 両の斬線がティンの剣線と絡み合い、火花を散らしあう。

 その競り合いによって、互いに体がを徐々に削りあっていく。ティンの剣が黄龍の体の表面を削りそれによって内部の機械油が舞い飛び、黄龍の刃がティンの表面皮膚を削り取りそれに皮下脂肪と血が舞い飛ぶ。

 両者共に譲らず、ティンは黄龍から繰り出される両手の剣戟を見事に捌き続けている。そんな見事な命を削りあう剣舞は、よりにもよって。

「――何ッ!?」

 第三者、即ちこれを好機と見た魔獣達いや森によって阻まれる。

 突如として沈黙していた筈の触手が食人植物達が一斉に動き始めティン達を取り囲んでいくがすぐさまに細切れとなった。

「おのれ、オレの邪魔立てする気か!」

「くそ、だから黄龍の相手をしている暇は」

 言いかけた最中、触手がティンに触れたところで何かに弾かれたように吹き飛んでいくが、いやだからか黄龍の方へと触手が集中しあっさりと機体は飲み込まれた。

「……もう、邪魔すんな」

 言って背を周囲を見渡していると、目の前の触手が急に弾け飛び。

「これで、終わるとでも思ったか!?」

「いい加減に!」

 黄龍が、触手による拘束を切り裂き引き千切り弾き飛ばしてティンの前へと躍り出ていく。

「例え、貴様とオレの間に」

 オーラを纏い、瞬時に最高速度へと到達する黄龍は迷うことなくティンへと向かい、吸い込まれるようにティンの振るう一刀と右にブレードが重なり、更にその力を受け流して後ろに送り。

「どれほどの実力に差があろうとも……!」

 二人の周囲に触手が伸びていく。

 しかし、黄龍は速度でそれを避けそして絡んだものを引きちぎり、ティンは肘打ちで触手を攻撃する。

 その攻撃によって触手は音を立てて溶け落ちていく。どうやら光と身体が同調しているティン自身が触れるだけで致命傷となるようだ。

 触手が溶けていく光景に目を取られ、ティンは一瞬黄龍への対応が遅れる。

 意識を向けると同時に黄龍のブレードではなくその腕の関節へと剣線を描き、それに対応する黄龍は体勢を崩して強引にティンの剣と切り結ぶ形となり、それを弾き体勢を戻す勢いでティンに蹴りつける。

 ティンはその蹴りを素早く弾かれた勢いを利用してバック宙回避し。

「今のオレは」

 その回避へと黄龍は追いすがって左のブレードを突き出しティンの体を押さえつけるように剣を交える。

 まともに受け止めたティンは素早くその力の方向を受け流し、黄龍は無理矢理弾き飛ばして。

「悪鬼ッ、羅刹すら超越するッ!!」

 加速と共に右のブレードを突き出し。



「グァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!?」


 森中に響くほどの絶叫が轟く。



 鮮血が舞う。砂金のような、輝く黄金にような血が宙を舞う。黄龍の突き出した一刀が、ティンの左のおっぱいを掠りそのまま左の肩口に突き刺していた。裂かれたおっぱいと突き刺された肩口から血が噴出している。

「取ったぞ!」

 黄龍はこのまま右のブレードを胸へとうごかそうとして――何故か、彼の中で警報がなる。一体何なんだと黄龍は周囲のサーチを行い、黄龍はティンの目を視認する。

 ティンの目は一刀を受け、一瞬白目を向くがその黄昏の様に輝くそのライトイエローの瞳が、雄弁に語っているのだ。それは、既に知っていると。もういい、見飽きたと。何故、こんなにも、自分の体が切られて、血が出ていると言うのに、まるで。

 全て予定調和だと言わんばかりに。

 そして、有限実行するようにティンは左肩口の筋肉に力を込める。結果、黄龍の刃は一瞬動かなくなり。

「固定されただとっ!?」

 遊んでいたティンの剣が動かなくなった黄龍目掛けて剣を振り下ろし。

「おのれぇぇぇッ!」

 黄龍は左腕を防御に回し、ティンの剣が左腕に肘に直撃し、そのまま滑らせるように切り裂き、黄龍はそれを左腕の肘を逆に剣の固定具にして強引に剣線の筋をねじ変える。

 結果、黄龍の右腕のブレードが弾け飛び黄龍は更にティンへと追撃を加えようとして、しかしティンの剣が戻って、黄龍は弾ける様に跳び、ティンは黄龍から距離を取るように跳んだ。

 お互いに距離を取り合い、再び両者はにらみ合う。ティンは素早くポケットからスプレー型傷薬を取り出して斬られた肩口とおっぱいに吹きかけてスプレーを投げ捨てる。黄龍は黄龍で片腕が消えたのを確認し。

「向こうは手負い、このまま任務を続行する」

「――もういい、ぶった切る」

 ティンはティンで、完全に瞳が据わった表情でそう呟くと左腕に目を落とす。何度か左腕を動かすが、僅かに眉を潜め。

(使えない、か。内部の骨が切断、或いは砕かれていると判断……問題ない)

 それだけ確認すると左腕を遊ばせた状態で今度は自分から切り込むために踏み込み。

「ばかめ、オレのほうがまだ早い!」

 それに合わせて黄龍も動き、二人の剣が高速移動しながら交差し、上段で、下段で縦横無尽に駆け巡り、剣線が交わり火花が舞い散る。

 その最中、黄龍はティンに大振りに蹴りつけようとし、ティンは知ってると言わんばかりにかわし、直後に彼女の脚に切り落とした筈の左腕のブレードが突き刺さる。

「これで終わりだ!」

「何を言っている――ぶった切ると言ったろう」

 それがどうしたと血を噴出す自分の足を僅かに見落とすと。僅かに距離を詰め高速で向って来る黄龍を捉え。

「そう言った以上、その予告は絶対だ」

 まるで、全て知っていたと言うように、斬ると言った予告が現実化するように。ティンの振るった剣へ吸い込まれていくように。

 直後、何処から出てきたのか、いつもの雑魚仮面が黄龍を押しのけて、十六のガラクタに変わり果てていた。

 ではまた次回。

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