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それでは宴会と行こう

「いや待て瑞穂、お前なんで此処に居る?」

「ティンさんが夜になっても戻ってこないし」

「と言うかルメアとどう言う関係だよ、隣に座っているけど」

「……どう言う関係?」

「知らないんかい!」

 瑞穂との問答にティンはとうとう頭を抱え始める。そう言えばこんな女だったな、と冷静な頭が告げてくる。そこへルメアが。

「私と瑞穂様はついさっき会ったばかりですわ。そこで、隣に座ってくれと言うので、分りましたと答えただけです」

「いや、それ答えてるつもりだろうけど答えなってないぞ!?」

「あ、ところでこのお料理箱詰めできますか?」

「スルーかい」

「あ、それこっちもお願い」

「瑞穂お前もか!」

 ルメアは堂々と大き目の弁当箱を取り出すと瑞穂もそれに習って同じ様に箱を出しては料理を詰めてもらっていく。その様子を見てラルシアは一息つくと。

「しかし、あの氷結瑞穂と交友をもてるとは思いもしませんでしたわ……ティンもたまには役に立ちますわね」

「いや、お前の為に連れて来た訳じゃねっつの」

「交友? 何を言ってるの、ラルシアさん」

 瑞穂はラルシアが何を言ってるのか分らないと返して。

「私達、そもそも初対面じゃないよ」

「……はい?」

 瑞穂の言葉にラルシアとティンは二人そろって首を捻る。一体何の事かと思っていると。

「ほら、二年前。貴方に黒曜石売ったでしょ?」

「へ? あの、何を」

「覚えてないの? モーントシティでのお店で黒曜石を売ったでしょう? 一つ9、999、999、999、999、999enで」

「あ」

 と、ラルシアは一瞬あっけに取られ、そして瑞穂を指差して。過ぎるは幾つかの記憶、自分がまだ支店長をしていた頃の失態。今でも時折夢でも見るほど悔しさに沈んだあの汚点とも言える瞬間。


「あ、あ、あ、あの時のちびじゃりぃぃぃーーーーーっ!?」


 ラルシアはあの時のすまし顔の少女と、今の瑞穂の顔が重なり、理解すると同時にあの時の悔しさを搾り出すように瑞穂を指差しながら叫び上げた。


「人のことを指差しながらチビじゃり呼ばわりとは随分だね」

「な、な、な、あの、新聞の時点で、一念足らずで、いやそれ以前に、僅か二年でその成長は……で、でもその顔は確かにあの時のくそ生意気なチビじゃりと瓜二つ」

「友好を持とうって人の台詞じゃないね、それ」

 ラルシアはプルプルと震えながら瑞穂を指差したまま静止して、ティンと瑞穂はその状況にあきれ果てて。

「ラルシア、それ失礼だよね?」

「ティンさんにまで指摘されてるよ」

「おいコラ手前それどう言う意味だ」

「黙りなさい!」

「因みにあの時持ってた黒曜石、まだ持ってるよ」

 そう言って瑞穂は一つだけ荷物から黒曜石を取り出して見せ、直後に宴会の時間が一瞬にして凍りつくが瑞穂がその石をしまうと同時に再び時間が動き出す。

「ぜ、全部売った訳ではなかったと」

「あれだけ値打ちが付くもの、ある程度片付いたら小売にするに決まってるじゃん」

 瑞穂はそう言って、どこか残念そうに。

「私、貴方のこと結構気に入ったのにな」

「は、はい? 何の話で?」

「あの後、貴方あの黒曜石が何処で採掘できるのか探し当てたでしょう。あれ見て黒曜石シリーズの充実を目指したうえでしかもあたかもあのドラゴンを自分が見つけたかのようにインタビューで答えて回った」

 一度切ると瑞穂はしっかりラルシアを見つめて。

「あの時思った。この人、本当に凄い商売人なんだなって。ただじゃ絶対におきない、転んだら何かを掴んで得をするまで決して起き上がらない、その精神を感じて感心したのに」

「え、ええ、どうも」

「ちなみにあのドラゴン倒したの私達だったりするよ」

「……は!? え、はあ!?」

「……まあ、それは冗談」

 そう言って瑞穂はぷいっと盆に目を向けて箱詰めを再開して。

「いや貴様何をしているんだ」

「あ、林檎。もう良いの?」

 見れば、この宴会場の中に林檎がいて。当の林檎があきれ返った様子で瑞穂を見下ろしている。

「何って、皆の夕飯稼ぎ。ほら、林檎も座りなよ。ラルシアさん太っ腹だからきっと奢ってくれるよ」

「奢りじゃねえよ会費払えや」

 ぼそっと、ドスの利いた声でラルシアは答える。だが瑞穂は流し、ティンも流し、聞こえてたはずの林檎でさえ、無視してルメアの横に座った。すると林檎の元にも料理が運ばれてくる。

「……有料を謳う割には随分サービスが良いな、おい」

「森林のお嬢様ならこの程度の出費、おつりが来ますわ」

「ああ、そう」

 林檎は短く返して用意された食事に手を出していく。

「林檎、食べ過ぎちゃだめだよ」

「瑞穂、この料理を見て何処をどう見たら保存が効く料理に見えるんだ?」

 目の前に用意されたのは刺身に寿司、お吸い物に煮物や釜飯と言った感じの料理が出されている。確かに、誰の目から見ても冒険者が持つ食料には見えない。

「有栖達に持っていく分には十分」

「……ふむ。それは確かに言えているな。では私もあの愚者どもの分ぐらい残すか」

 言って林檎は少なめに料理を摘んで頬張った。

「そう言えば火憐は? 一緒じゃないの?」

「ああ、まだ見てると言っていたぞ。当人は闇の武器市場など行きたく無さそうにしていたが」

「ふぅん。まあ良いけど」

「燃焼のお嬢様もご同行とは恐れ入る展開ですわね……」

 ぼやくラルシアは完全にふてくされており、もはや完全にそっぽ向いている。

「あらあら、ラルシアったら随分不貞腐れましたわね……それの何処がエレガントなのですか? ――あ、この釜飯も包んでくださる?」

「言ったそばからきったねえ真似してる女が何ほざきやがるのですか!?」

「あら、私は流浪の冒険家。得られる食料を確保して何が悪いと?」

「それ、保存効かないものが多い」

「うふふ」

 瑞穂の指摘を受けたルメアは不適に笑うと。

「なら、保存が効くようにすればいいだけですわ。世の中、TCボックスと言うアイテムもありますし」

「……え、ナニソレオシイノ」

 瑞穂と林檎は絶望を瞳に宿しながら返した。



 説明しよう! TCボックスことタイムクールボックスとは、最新鋭の魔法技術によって作られた内部時間を凍結させる便利ボックスなのであるッ!

 中には異次元空間を展開する特殊術式を展開、更に目玉の時間凍結術式を用いることにより、中の経過時間を密閉時のみ時間を凍結させ、常に荷物の中身を新鮮な状態で保つ事が出来る様になり、そして物質の温度を下げることなく凍結させることを可能とし、熱いものを熱々なまま持ち運ぶことが出来るのであるッ!

(以下中略)

 なお、最新型の術式を用いて作られたこのボックスのお値段は大凡5万は軽く超える為(以下中略)



「あら、持っていませんの? まあ、私はとある人脈から手に入れたのですが、あれ便利ですわよね」

「瑞穂、人脈だとよ」

「自力で買ったといったら滅べと言える自信があるけど、林檎は?」

「……コメントは無しで頼めるか?」

 と言った感じで宴は流れていった。ちなみにティンは完全に沈黙している。

「……瑞穂は本気で何をしに来たんだ」

「いや、ティンさんを回収しに」

「あたしを何だと思って」

「あ、瑞穂さん」

「写真よろしくて?」

 言われて瑞穂が振り返ると同時に二人は携帯電話で瑞穂の写真をパシャリと撮った。

「いや、許可してない」

「で、写真撮影は?」

「よろしいのでしょうか?」

「……まあ別に良いけど」

 瑞穂が呆れ気味に返すと二人は言われんでもと言わんばかりに何故か撮影会を始めてしまう。

「何で瑞穂の写真を?」

「高値で売れいやなんでもありません」

「今何言いかけたお前ら二人」

 ルメアとラルシアは同時に不穏当なことを言いかけて誤魔化すが、ティンは何故か既知感を感じて更に突っ込みを返すが、その返答は華麗なるスルーであった。

「で、瑞穂はあたしに何か用?」

「特に用事はないけど、でも一日近くも帰ってこないと不安になる。ただでさえろくに帰ってこないし、しかも行方不明率高いし」

「あのな……まあ、言いたくなる理由も分かるけど」

「まあ、この後彼女には仕事に行ってもらいますが」

 ラルシアはそんなことを言いながら携帯電話の画像を確認していく。

「……寝かせろよ」

 ティンは、今までの経緯を思い出してそんな突込みを返した。

 ではまた。

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