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おまけ その後のはなし

 キースの顔が迫ってきて、ばり、と展開された雷撃に分かっていても緊張が走る。


「ほおおおお!」


 興奮したようなキースに若干引く。

 引きながら、難しい顔をした護衛の男に大丈夫だからと手を振った。


「なんだい、なんだこの仕組みは!」


「いや、俺が考えたものじゃないんで。」


 じりじりと後退しながら、まずいと思う。

 

 今日は体調が悪くて少しふらつく。

 朝から少し熱っぽかったから、それが原因かもしれない。

 顔を出してからも態度の変わらなかったこの教師が、魔道具にしか興味がないと分かっていても近づかれるのは嫌だった。

 

「指輪は渡すのでそれで解析してもらって。」

「いやあ、何をしたらどう反応するのか気になって。」


 そうだ、そう言う人物だ。

 俺にも興味がない分面倒臭い。

 どうしたものかと思っていたところに、研究室の扉が開いた。ラウェルだ。


「……早くない?」


 キースの接触から三分も経っていない。

 何かの反応があったら通達がいく仕組みなのだとは思うが、それにしても早すぎる。


「帰りますよ。」


 つかつかと歩み寄られて、抱き上げられる。


「先生、無駄に入部したがるクソどもを排除して下さって助かりました。」


「ああ、全然いいよ。最近多かったね。一人も試験に合格しなかったけど。」


 のほほんと笑うキースは意外と厳しい。

 入部をしようと思えば、まずは一番好きな魔道具を詳細に語れと言ったのち、自己作品を提示するように求められる。

 子供のように「なんで?どうして?どこが?」を繰り返すキースは正直面倒臭い。

 

「お礼として指輪の構造はレポートにして渡すので、それで満足してください、」

「ほんとう!」


 ラウェルの言葉に気色ばむキースをぼんやり眺める。

 こういった扱いも上手いのは、尊敬する。


「先輩、気づいてないかもしれませんが、朝から体温が普段より2.5度高いです。」

「ん?」


 予想外の言葉に一瞬思考が冷静になった。


 なったが。


 脈拍さえ把握している男なら、平熱も把握しているだろう。

 妙に納得して、まあいいかと身体を預けた。


「ぼうっとする。」

「熱がありますからね。」


 なんでもない事のように言いながら、馬車の中でゆっくり頭を撫でてくれる。

 寝かされて、ごとごとした振動は夢見心地にさせてくれた。


「……なあ。」

「はい。」


「キスして。」


 途端、自分で何を言ったのかと疑った。

 まるで欲求不満のようだ。

 

「ごめん、風邪がうつる。忘れて……」


 恥ずかしくなって目元を腕で覆うと、取り払われて熱い瞳と向き合った。


「こっちが我慢してるのに、まったく……」


 冷たい舌が唇に入り込む。

 何度も舌を吸われて快感がはしった。


「……やっぱり、熱が高いですね。」


 不遜気にぺろりと拭った口元から目が離せない。


「……ラウェル。」


「うん?」


「今のお前の顔、結構好き。」


 感情に任せて言うと、ラウェルはこちらを見下ろしながら熱の籠った瞳を向けてきた。

 それだけで、ぞくりと背中に何かが走る。


「僥倖です。」


 笑って落とされた唇は同じ温度だった。

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