第7回『下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ』大賞 投稿作品置き場
自転車で異世界行ってくる
「俺も元気になったら、世界を見て回りたい」
「いいじゃないか。その時は爺ちゃんの自転車をやろう」
翔は病弱な上に、両親を事故で無くしていた。
有名な画家だった祖父・総造は引退、翔と共に暮らしたのち亡くなった。
病を克服した翔は中三の頃、遺品の中から一台の自転車を見つけた。
総造は画家として活動する中、自転車で様々な国を旅したという。
その自転車は年代物だが乗り心地は最高。
加速していく間に、――眩い光に包まれた。
気がつくと西洋風の街並みの中、エルフやオーガなど明らかに人以外の種族が行き交っていた。
その自転車には異世界を行き来する力があったのだ。
「はぁ、はぁ、あと少し……」
翔はとある高台の頂上へと、自転車のペダルを漕ぐ。
週末になると翔は、異世界をサイクリングをするのにハマり、その中である真実を知る。
総造が描いてきた絵の多くは、この世界で見た風景を描いたものだった。
金色にきらめく湖。火の鳥が飛来する火山。雲の上に出現する城。あの絵は旅で見てきた風景から着想を得て描いたと思っていたが、全て実在したのだ。
いつしか翔は総造の描いた風景を探すことに夢中になっていた。
「はっ……、見つけたぞ!」
息を切らし、高台の頂上から見た風景、――他種族が行き交い、活気に満ち溢れた大都市。何よりも目を引くのは、ランドマークともいえる、夕日を受け色とりどりの光を乱反射させる【水晶の塔】だ。
「おい! その自転車、お前翔じゃないか?」
野太い声が翔を呼んだ。
声の主はずんぐりとした体形に、白い長髪と髭をモジャモジャ生やしたおじさん。おそらくドワーフだ。
翔は高台を降りた森にある家に招待される。
「その自転車、覚えてるよ。総造とは酒場で知り合ってな、何年も前だがな。預かってる物がある」
手渡されたのは総造が翔に宛てた手紙だ。
翔へ――、
この手紙を手にしたということは、もう体は治ったんだな。
お前と過ごした時間、充実していたよ。ありがとう。
――祖父より。
「爺ちゃん……ありがとう」
病気の自分のために、夢だった画家としての人生を手放した総造、翔は少しばかり負い目を感じていたが、――誤りだったようだ。
翔は涙が止まらなかった。
――数年後、翔は幻想小説作家として多くの人を感動させるのだった。
今年も始まりました!!
「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞
受賞したい欲もありますが、ひとまずは
一人でも多くの人に読んでもえるようがんばります!!




