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第7回『下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ』大賞 投稿作品置き場

自転車で異世界行ってくる

掲載日:2025/12/07

「俺も元気になったら、世界を見て回りたい」

「いいじゃないか。その時は爺ちゃんの自転車をやろう」

 (かける)は病弱な上に、両親を事故で無くしていた。

 有名な画家だった祖父・総造(そうぞう)は引退、翔と共に暮らしたのち亡くなった。

 病を克服した翔は中三の頃、遺品の中から一台の自転車を見つけた。

 総造は画家として活動する中、自転車で様々な国を旅したという。

 その自転車は年代物だが乗り心地は最高。

 加速していく間に、――眩い光に包まれた。

 気がつくと西洋風の街並みの中、エルフやオーガなど明らかに人以外の種族が行き交っていた。

 その自転車には異世界を行き来する力があったのだ。


「はぁ、はぁ、あと少し……」

 翔はとある高台の頂上へと、自転車のペダルを漕ぐ。

 週末になると翔は、異世界をサイクリングをするのにハマり、その中である真実を知る。

 総造が描いてきた絵の多くは、この世界で見た風景を描いたものだった。

 金色にきらめく湖。火の鳥が飛来する火山。雲の上に出現する城。あの絵は旅で見てきた風景から着想を得て描いたと思っていたが、全て実在したのだ。

 いつしか翔は総造の描いた風景を探すことに夢中になっていた。

「はっ……、見つけたぞ!」

 息を切らし、高台の頂上から見た風景、――他種族が行き交い、活気に満ち溢れた大都市。何よりも目を引くのは、ランドマークともいえる、夕日を受け色とりどりの光を乱反射させる【水晶の塔】だ。

「おい! その自転車、お前翔じゃないか?」

 野太い声が翔を呼んだ。

 声の主はずんぐりとした体形に、白い長髪と髭をモジャモジャ生やしたおじさん。おそらくドワーフだ。


 翔は高台を降りた森にある家に招待される。

「その自転車、覚えてるよ。総造とは酒場で知り合ってな、何年も前だがな。預かってる物がある」

 手渡されたのは総造が翔に宛てた手紙だ。


 翔へ――、

 この手紙を手にしたということは、もう体は治ったんだな。

 お前と過ごした時間、充実していたよ。ありがとう。

 ――祖父より。


「爺ちゃん……ありがとう」

 病気の自分のために、夢だった画家としての人生を手放した総造、翔は少しばかり負い目を感じていたが、――誤りだったようだ。

 翔は涙が止まらなかった。

 ――数年後、翔は幻想小説作家として多くの人を感動させるのだった。


今年も始まりました!!

「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞

受賞したい欲もありますが、ひとまずは

一人でも多くの人に読んでもえるようがんばります!!

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― 新着の感想 ―
短いながらも、祖父と孫の絆がしっかりと感じられる、温かい短編作品でした。 ドワーフが翔だと気づく場面は少し早いようにも感じましたが、きっと総造さんの乗っていた自転車が、それほど特徴的で、彼にとっても印…
続きが読みたくなる作品でした。 家族は本当に素晴らしい 評価ブクマ入れさせていただきました。 宜しければ私も昨年からカキカキしています。 きていただければ幸いです。
こちらの作品も、楽しく、最後は少しホロリとなる、素敵なお話ですね(^^) こちらの作品も良かったです(^^)
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