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もぬけの殻

〈風呂熱しロン毛が邪魔な夜迎ふ 涙次〉



【ⅰ】


テオです。前回永田さんが人の事ポン中みたいに云つてたが、その叛論、と云ふか補足。

フラーイの花は法律では禁じられてゐない。ブラックマーケットで出回つてゐるのは、飽くまでグレイゾーンだと云ふ事で、それを考へると、太宰のモルヒネ(パビナール)、安吾のアドルム、織田作のヒロポン等も当時は合法だつたんだよね。兎に角、フラーイはマリファナと同じで常習性はない。マリファナは我が國では違法と云ふ事になつてゐるが、オランダや米國の或る州などでは、普通に流通してゐて、誰もが樂しめる。ま、これ余談ですが。



【ⅱ】


尾崎一蝶齋が彼の* ELEMOs スーパーエレカーゴで出所して來た。杵くんなんかはバイカーなので、特定小型原付の事を莫迦にしてゐるが、その日みたいに雨降りの日には、流石に屋根付きのスーパーエレカーゴが羨ましさう。

で、尾崎さん、新聞のやうなものを拡げて、一味のみんなに見せた。** 上総さんが彼にくれたのだと云ふ。其処には、上総さんのコラムなんかよりずつと詳しくカンテラ一味とその敵、その係累の事が記載されてゐて、プライヴァシーに抵触するやうな事迄書かれてゐる。

「尾崎さん、これだうしたの?」とカンテラ兄貴。「上総が私に頒けてくれた。私はちと氣になつてね」-問題は一體何処のどいつが、こんな事を書いて、印刷してゐるかだ。



* 當該シリーズ第132話參照。

** 當該シリーズ第94話參照。




【ⅲ】


前回、人間界の惡党が、驚いた事に一味の行狀や魔界、石田先生の事を良く知つてゐて、詐欺行為を永田さんに仕掛けて來た事は、永田さんが自身、説明した。惡党がこのタブロイド誌を讀んでゐた事は、まづ間違ひない。繰り返すが、誰がこんな事迄知り得るのか。



※※※※


〈冬立つ日それは一つの憧れで黑が合ふなら黑を着る迄 平手みき〉



【ⅳ】


「折角結界を張り替へた(前々回參照)と云ふのに、これでは意味がない。恐らく強力な水晶玉の魔術だと思ふが、誰かが俺逹の事、覗いてゐる-」と兄貴。じろさん「一味、魔界に次ぐ第三の勢力の出現か」-兄貴「この新聞めいた物を賣り捌いた上がりを、資金源としてゐる、何者かゞ存在するつて事だ」



【ⅴ】


其処で僕は、得意の野良猫メイクをして、上総さんの新聞社に張り付いた。かう云ふ時、僕の片耳である事が役に立つ。眞に迫つてゐる、と云ふか何と云ふか。また、謎の人物が、情報リークの為に上総さんの許を訪ねて來るだらう。そしたら尾行して素性を知つてやらう、と云ふ試みである。


案の定、タブロイド誌の配逹人が現れた。僕はその男をぴつたりマーク、肝腎なのはこの怪情報の出どころである。



【ⅵ】


「 某業界」専門誌編輯發行、なる看板を掲げた事務所まで、その男は帰つて行つた。兄貴「でかしたぞ、テオ、その場處迄俺とじろさんを案内してくれ」-兄貴は大刀に物を云はせて、二人はその事務所内に押し入つた。だが、主要人物はをらず、アルバイトの學生が留守を守つてゐたのみ。じろさんが彼をぎゆうぎゆう締め上げて、やうやく眞相、らしきものが分かつた。

この事務所の主は、「はぐれ魔導士」とも呼べる男で、魔導士で同好の士である者を集めて、事に当たつてゐる-「はぐれ魔導士」と云へば、兄貴の造り主・鞍田文造を想起する。* 今は「猫nekoふれ愛ハウス」のマスターに収まつてゐる岩坂さんも、嘗てはさうだつた。



* 當該シリーズ第153話參照。



【ⅶ】


事務所のデスクには、確かに水晶玉が置かれてゐた。要件あり今は出拂つてゐる、と云ふ「はぐれ魔導士」逹。だが、もしかしたら、僕たちの追求を知つて逃亡したのかも知れない。さて、だうする、カンテラ・此井?



※※※※


〈木つ葉髪吾妹子は氣にするけれど 涙次〉



【ⅷ】


折角アジトを探し当てた、と思つたら、もぬけの殻では仕様がない。「やれやれ、またカネにならない仕事か」とぼやく兄貴に妙案は果たして浮かぶか。次回を待つとしやう。それでは。テオでした。續く。

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