さみしがり屋のおばけさん
今回は、娘リクエストのホラーです
あるところに、それはそれは、さみしがりやの お化け が住んでいました。
そのお化けは、まっしろな布をかぶっていて、ふよふよと浮いていました。ふもとの村みんなに「おばけさん」と呼ばれていました。
本当は、みんなに遊んでほしかったのです。みんなとおしゃべりしたかったのです。
でも、おばけさんの姿を見ると、みんな「ひゃあ!」と叫んで逃げていってしまうので、おばけさんは、いつもひとりぼっちでした。
ある日、おばけさんは考えました。
「どうしたら、みんなと仲良くなれるだろう」
おばけさんは、人間の真似をしてみることにしました。
おばけさんが、人間のまねっこをするたび、町の中はどんどんさわがしくなっていきました。
「窓ガラスが、おばけさんの顔になってたんだって!」
「いえいえ、お皿がぜんぶ、おばけさんの顔にへんしんしたんだよ!」
「おばけさんが、わたしのパンを食べてたの!」
おばけさんは、こっそり見守っていました。みんなが、自分のことで楽しそうに話しているのが、うれしかったのです。
でも、町の人たちの声は、だんだんと変わっていきました。
「どうして、あのおばけは、いなくなってくれないんだ」
「あいつのせいで、もう、安心して眠れないじゃないか」
「きっと、おばけのいたずらだよ。犯人を見つけ出して、こらしめてやろう!」
おばけさんは、ふるえました。
自分は、ただ、みんなと仲良くなりたかっただけなのに。
どうして、みんな、そんなに怒っているんだろう。
ある日の夜、おばけさんが森の中でしょんぼりしていると、町から、たいまつを持った人たちがやってきました。
「おばけは、どこだ! 早く出てきなさい!」
「見つけたら、みんなで、やっつけてやる!」
みんなの顔は、怒りでぐにゃりとゆがんでいました。その顔は、おばけさんが、いままで見たどんな怖い顔よりも、ずっと、ずっと恐ろしいものでした。
おばけさんは、ひと目散に、森の奥へと逃げました。
もう、町の人たちと、仲良くなりたいなんて思いませんでした。
ただ、静かに、ひとりになりたかったのです。
おばけさんは、だれにも見つからない場所まで逃げると、もう、人間には、絶対、近づかないと誓いました。
それから、おばけさんの姿を見た者は、誰もいませんでした。
ただ、町の人たちが、いなくなったおばけさんを、いつまでも探していたそうです。
「きっと、どこかに、まだいるはずだ!」
「もう一度、見つけて、今度こそ、本当にこらしめてやろう!」
誰よりも“おばけ”をこわがっているはずのその人たちは、いつのまにか、だれよりも こわい顔 をするようになっていたのです。
誰が一番怖いんでしょうね?