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第38話 男の子臭くない女の子

「なぁ、俺って実は結構スパイシーな臭いがするのかな?」


「スパイシー? どうしたの急に?」


 とある日の放課後、俺はまた高崎とファミレスに来ていた。


 俺のテーブルにはドリンクバーの飲み物と大盛りのポテトがあり、高崎のテーブルの方にはドリンクバー飲み物とパンケーキが置かれていた。


 代り映えしない景色と言われればその通りだが、男同士で集まるとどうしてもこうなってしまうものなのだ。


「いや、最近匂い関係のことをよく言われる気がしてさ。もしかしたら、みんな遠回しに臭いと言っているのではないかと考えるようになって」


 この前、俺が体操着を濡らして帰ってきたとき、鈴鹿は俺の匂いがあまりしないと言っていた。


 そして、その翌日には宇都宮さんにも体操着から俺の匂いがあまりしないといわれた。


 ……それって、元々の俺の匂いが強いってことだよな?


 俺は内心そんなことを考えてしまっていた。


 いや、可愛い女の子に指摘されれば誰でも気になるだろう。


 多分、二人に俺の匂いのことを聞いても誤魔化されてしまう気がする。そうなると、やはり同性である高崎の力を借りる必要があるのだ。


「高崎。正直に言って欲しいんだが、俺って結構臭ってるのか?」


「いや、僕は感じたことないけど」


 すると、高崎はこてんと首をかしげてそう言った。


 嘘を言っていないか気になってじっと見つめてみると、高崎は暑そうに体操着の襟をつかんで服をパタパタとしていた。


 今日の高崎は学校のジャージの下と、上は体操着の半袖姿だった。


 半袖から伸びる白くて細い腕を見ると、どうして高崎が女の子なんじゃないかと勘違いをしそうになる。


 こんなに可愛いのに男の子なんだもんな。なんというか、高崎は男臭さとは遠い存在のような気がする。


 俺はそんなことを考えながら、高崎の体操着の動きに合わせて匂いを嗅ぐ。


「すんすんっ……高崎からは少し甘い匂いがするな」


「ちょっ、きゅ、急に何言ってんの⁉」


 俺が軽い気持ちでそう言うと、高崎はバッと胸元を隠しながら顔を真っ赤にさせた。


 その反応があまりにも女子らしく、俺は慌てながら手を横に振る。


「い、いや、同じ男子としてどのくらい匂いが違うのかと思って。そ、そんなに恥ずかしがることなのか?」


「男同士? あっ、うん、そうだよね。別に、恥ずかしがってなんかないよ」


「そ、そうか? それならよかったけど」


 高崎はそう言いながら、落ち着きなく髪を耳にかけたり視線をきょろきょろとさせていたりした。


 そして、恥じらうようにして赤くなった頬の熱を冷まそうと、また襟の部分をパタパタと動かしている。


 どうしても恥じらう乙女にしか見えない。


 そんなことを考えていたせいか、自然と言葉がぽろっと漏れた。


「それにしても……マジで男っぽい感じがしないなぁ」


「へ?」


 すると、高崎は間の抜けたよう声を漏らしてから、さっき上に慌てだして目をぐるぐるとさせた。


「そ、そんなことないよ。僕、めちゃくちゃ男臭いし!」


「いや、今のは匂いとかじゃなくてーー」


「そうだ! 多分、甘い匂いってこのパンケーキのことじゃないのかな?」


 高崎はそう言って、フォークでシロップとアイスがかかっているパンケーキを指さした。


 俺はなぜか焦っている高崎を見て小さく笑う。


「さすがにパンケーキの匂いと体操着の匂いの違いくらい分かるって」


「でも人間って何かの判断をするとき、視覚情報の割合が大きいって聞いたことあるよ。だから、男臭い僕の匂いを嗅いでも甘い香りって勘違いしちゃったんだよ!」


「それは、聞いたことあるけど。でも、今回は状況が状況だしなぁ」


 高崎の反応が面白かったので、俺はからかうような目を高崎に向けた。


 すると、高崎は名案を思いついたかのように『あっ』と声を漏らした。


「そ、そんなに疑うのなら試してみようよ!」


「試す? 試すって何を?」


「ちょっとしたゲームだよ。ほら、伊勢くん目を閉じて!」


「お、おう」


 こうして、俺はひょんなことから高崎の考えたゲームとやらをすることになったのだった。


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