第28話 girlsサイド:妹はゲームセンターで教える
土曜日。私はお兄ちゃんから穴埋めの対案をされ、お兄ちゃんと一緒にショッピングモールにやってきていた。
私はお兄ちゃんからのデートのお誘いということもあって、いつもよりもよりもおしゃれをしていた。
そして、そんな嬉しさから私はいつも以上にお兄ちゃんを感じたくなって、お兄ちゃんの腕に自分の腕を絡める。
「……な、なんかいつもよりも近くないか?」
すると、お兄ちゃんは私が腕を組んだだけで恥ずかしそうにしていた。私はそんなピュアなお兄ちゃんの反応に胸をきゅんっとさせる。
もっとくっついたら、お兄ちゃんはどんな反応をするのだろう。
そんなことが気になって、私は無邪気を装ってお兄ちゃんの腕にさらに体を寄せた。
「今日はここ数日の寂しさを埋めてくれるんでしょ? それなら、こうしないとっ」
「っ!」
お兄ちゃんは私に俺をぴたりと体をくっつけられて、体をビクンッとさせていた。
お兄ちゃんの腕に胸を押し付けるようにすると、お兄ちゃんは顔を真っ赤にさせて戸惑いを隠せずにいた。
……お兄ちゃん、私のことちゃんと女の子として見てるんだ。
私はそんなことを考えてしまって、自然と口元が緩んでしまった。
このままもっとすごいことをしたらどうなるんだろ?
私は一瞬そんなことを考えてから、慌ててその考えを振り払う。
お兄ちゃんを危ない女の人から守ろうとしているはずなのに、ここでそれ以上のことをしたら私が危ない人になっちゃう!
私は自制心を取り戻すためにお兄ちゃんから少しだけ体を離すことにした。
それから今日の行き先を決める中で、お兄ちゃんの男の子としての危機感がまだまだ足りないことを知った私は、お兄ちゃんを連れてゲームセンターに行くことになったのだった。
「さて、伴教くん。ゲームセンターには危険がいっぱいです。さて、どういうところが危険でしょうか?」
私は腕を組んでいるお兄ちゃんの顔を見上げる。
私はお兄ちゃんの子供の時の話を聞いて、少しだけご機嫌斜めになっていた。
小さい男の子が一人でゲームセンターに行くなんて、危険すぎるし信じられないことだからだ。
まだ子供の時なら間違えて入ってしまったで済むかもしれないけど、お兄ちゃんは何が危ないのか理解していないようだった。
なんかヤンキーに恐喝されるのが危ないとか言っていたけど、それ以上に危険な目にあってしまう恐れがあるのだ。
……危機感の足りないお兄ちゃんには私が色々教えてあげないと。
「ゲームセンターで危険なところ? そんなところあるのか?」
お兄ちゃんは難しい顔をしながら、ゲームセンター内を歩いていた。それから、何かにづいたように『あっ』と小さく声を漏らす。
「あ、あれとかのことかな?」
お兄ちゃんはそう言って、カーテンで外からは何をしているのか見えない箱型のゲームを指さした。
おそらく、中にある椅子に座ってシューティングするゲームなのだと思う。
私は頷いてからもったいぶるように口を開く。
「そうだね。音をかき消されて外から何してるのかわからないわけだしね。でも、こういうのは男の子も警戒するのでそこまでじゃないです」
「ほかに危険なもの? あっ」
「何か気づいた?」
「いや、関係ないんだけどプリクラって撮ったことないなって思ってな」
すると、お兄ちゃんはプリクラ期のほうを見てそんな言葉を口にした。それから、何でもないような口調でお兄ちゃんは続ける。
「そうだ。一回撮ってみないか?」
「え⁉ わ、私と?」
「え、うん。中がどうなってるのか気になるしな。まぁ、鈴鹿が嫌なら全然断ってくれてもいいんだけど」
私は思いもしなかった言葉に声を裏返させると、お兄ちゃんは気まずそうに私から視線を逸らした。
どうやら、お兄ちゃんは私がお兄ちゃんとプリクラを撮るのが嫌だが、声を裏返させたと思っているみたいだ。
「あのね、伴教くん。伴教くんは今ゲームセンターで一番危険なゲームに妹を誘ってるよ」
「ん? どういうことだ?」
「だから、プリクラが一番危険なんだってば」
「え⁉」
お兄ちゃんはよほど驚いたのか、目を見開いていた。
いや、こっちがびっくりだよ。
……お兄ちゃんが変なものに目覚めて、私をそれに誘っているのかと思っちゃったよ。
まぁ、前にどんなお兄ちゃんでも受け入れるって言った手前、拒否権はないのかもしれないけど。
私がそんなことを考えていると、お兄ちゃんが顔の前で手をぶんぶんっと振っていた。
「いやいや、ゲームっていうか、写真を撮るだけだぞ。それに、音だってうるさくないし、中で何かしたら外に聞こえるだろ?」
「そうだよ。外に聞こえちゃうから問題なんだよ」
「聞こえちゃうからダメ? いったいどういう意味だ?」
お兄ちゃんは眉根を下げてきょとんとした顔をしていた。
まさか、高校生にもなってプリクラを純粋に写真撮るためだけの機械だと思ってるなんて……ピュアすぎるよ!
私は本来注意する立場でありながら、そんなお兄ちゃんを少しだけ辱めたいという気持ちが強まってしまった。
「分からないなら、実際に入ってみればいいんじゃないかな?」
「うーん、それもそうだな」
「え、ほ、本当に?」
こうして、私はお兄ちゃんとプリクラを撮る流れになったのだった。
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