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第21話 girls×girls。とある少女は妹の信頼を得る

 私、宇都宮綾姫は放課後いつもの日課をこなしていた。


 伊勢くんと鈴鹿ちゃんの跡を追っていると、二人は最近できたファミレスの前でピタリと脚を止めた。


 そして、鈴鹿ちゃんはファミレスの前で伊勢くんと別れると、正面にあるコーヒーショップに向かった。


「そういえば、お昼の時に伊勢くん言ってたっけ。放課後、偶然会った男の子とご飯を食べに行くって」


 私はそんな独り言を漏らしてから、今の時間と伊勢くんの行動を見開きのノートの右半分に書いていく。


 それから、私は昨日の伊勢くんの行動が書かれている左半分の16時05分から18時25分までの空白を見てため息を漏らす。


「まさか、鈴鹿ちゃんと一緒に電車からはじき出されるなんて思わなかったなぁ」


 昨日、伊勢くんが通学に使っている電車が緊急停止してしまい、電車が満員電車になってしまっていた。


 私ももちろん乗り合わせていたんだけど、途中の駅で鈴鹿ちゃんと一緒に外に押し出されてしまったのだ。


 そのせいで、昨日の数時間『伊勢くん観察日記』に空白ができてしまったし、伊勢くんのことを陰から守るということもできなかった。


 一体、伊勢くんの新しい男友達ってどんな子なんだろうか?


「伊勢くんの友人関係なら、私も知っておかないとだよね」


 私は自身にそう言い聞かせて、ファミレスに向かおうとした。


「……ん?」


 すると、鈴鹿ちゃんがコーヒーショップのカウンターから、ファミレスをじっと凝視しいていたことに気がついた。


 うまく伊勢くんを見つけられないのか、体を捻ったりしながらなんとかファミレスにいる伊勢くんを見つけようとしている。


 鈴鹿ちゃん、それじゃあ動きが完全に不審者だよ。


 私はそんなことを考えて、そっと『伊勢くん観察日記』を閉じた。


 それから、私は少し考えてからファミレスに向いていた足をコーヒーショップに向けることにした。


「もしかしたら、もしかするかも」


 それから、私は鈴鹿ちゃんにバレないようにそっとコーヒーショップに入店することにしたのだった。




 入店から五分後。私は飲み干したアイスコーヒーを片付け、コーヒーショップの出入り口に向かった。


「あれ?」


 それから、偶然を装ったように鈴鹿ちゃんを見て、そんな声を上げた。


「確か、毎日伊勢くんと一緒に帰ってる子、だよね?」


 すると、鈴鹿ちゃんは私の顔を見て『あっ』と声を漏らしてから、眉根を下げた。


「あなたは……いつも伴教くんと一緒にいる女の人」


 私は一気に警戒心を強められて様な気がして、慌てて手を横に振る。


「ただのクラスメイトだって。伊勢くんにはあなたみたいな大切な人がいるんだから、ちょっかい出したりしてないよ」


「ふぅん、そうですか。それならよかったです」


 私がそう言うと、鈴鹿ちゃんは下がっていた眉根を元の位置に戻してくれた。


 どうやら、私が伊勢くんを狙っていないと知って少しは安心してくれたみたいだ。


 それから、私は辺りをきょろきょろして口を開く。


「あれ? そういえば、伊勢くんは一緒じゃないの? 今日も一緒に帰ってなかった?」


「伴教くんは今友達と話してるのでここにはいません。私は二人のお話が終わるまで待ってるんです。本当は一緒に行きたかったですけど、相手の男の子が女の子苦手みたいで」


「なるほどね。だから今日は別なんだ。それにしても、伊勢くんこんな可愛い彼女を待たせてるんだ」


「か、彼女っ」


 鈴鹿ちゃんは私の言葉を聞いて、微かに頬を赤くさせた。


 あれ? なんか本当に嬉しそうな気がするんだけど。


 彼女のフリをしているから喜んだフリをしているってこと? それにしては、妙に上手過ぎる気がする。


 私はそんなことが一瞬頭によぎったが、目的を思い出して鈴鹿ちゃんに手を振る。


「それじゃあ、伊勢くんによろしくね。あっ、あそこがクラスの子が言ってたファミレスかぁ。確かに、ちょっと危ないかもね」


「危ない? それって、どういうことですか?」


 私が眉根を下げてそう言うと、鈴鹿ちゃんは体を前のめりにして食いついてきた。


 それから、私は腕を組んで深刻そうな表情をする。


「あそこって奥の方が外からも周りからも見えづらいんだよね。確か、そのせいで他のクラスの男子があの店の店員に言い寄られたって言ってたっけ」


「え、うそっ」


 すると、鈴鹿ちゃんはガタっと音を立てて椅子から立ち上がった。


 私はきょとんとした顔を鈴鹿ちゃんに向ける。


「どうしたの?」


「お兄……伴教くんが友達と会ってくるって言ったのが、あの店なんです!」


「そ、そうなの? 大丈夫かな、伊勢くん」


 おそらく、さっきの言い分から鈴鹿ちゃんは動くことができないのだろう。


 私はそう考えてから、名案が思い付いたかのようにぽんっと手を叩く。


「そうだ。私ご飯食べて帰るつもりだったから、ついでに見てこようか?」


「ほ、本当ですか⁉」


「うん、いいよ。でも、ご飯も食べてくるちょっと待たせちゃうことになるけど。そうだ。スマホ持ってたら、伊勢くんの状況を実況してあげようか? なんて、さすがにそれはーー」


「お、お願いします!」


 すると、鈴鹿ちゃんは私に深く頭を下げてきた。私が突然頭を下げられたことに驚いていると、鈴鹿ちゃんはちらっと顔を上げて涙目で私を見る。


「だめ、ですか?」


 この子……ちょっと可愛過ぎない? 


 ていうか、私が思ってる以上に本気で伊勢くんのことを心配してるんだ。


 私は同士を見つけて少し感動してから、首を横にブンブンッと振る。


「う、ううん! 任せてくれて平気だよ。じゃあ、連絡先交換しようか」


 それから、私は連絡先を交換してから、鈴鹿ちゃんの連絡先が書かれている画面を見て首を傾げる。


「鈴鹿ちゃんって言うんだね。あれ? 名字が『伊勢』? 伊勢くんと同じ名字?」


「あっ、えっと、それは……」


「もしかして、伊勢くんの妹?」


 私がそう言うと、鈴鹿ちゃんは少し考えてから渋々頷いた。


 それから、鈴鹿ちゃんは伊勢くんの安全のために偽装カップルのフリをしていたことを教えてくれたのだった。


 ……これで他の子たちよりも一歩リードかな?


 伊勢くんとより近づくためには、鈴鹿ちゃんに信頼されないとね。


 どうやら、私の考えていた作戦は思った以上にうまくはまったみたいだった。



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