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第13話 お昼のお誘いは突然に

 高校に入学して数日が経過したある日のお昼休み。


俺はトイレを済ませてから教室に戻る途中、小さくため息を漏らしていた。


 それから、俺は数日前のことを思い出して体を熱くさせてしまった。


……まさか、男女がカラオケに行くことにあんな意味があるとは思わなかった。


どうやら、貞操逆転世界ともなると、俺の前にいた世界の常識と異なるところがあるらしい。


 鈴鹿に注意してもらえたからよかったが、鈴鹿に教わらなかったらいつか何食わぬ顔で女の子とカラオケに入っていたかもしれない。


 それに、妹に押し倒されて上に乗られただけで、あそこまで意識してしまうのも何とかしなくては。


 どうやら、女慣れして彼女ができるようになるのはまだまだ先になりそうだ。


「それにしても、たまには誰にも気を遣わせないで、ゆっくりぼけっと飯を食べたいな」


 俺はそんな誰にも言えない悩みをぽろっと漏らす。


「気を遣わないでって?」


「いや、ご飯を食べるときにみんな優しいから色々話しかけてくれるんだけどさ、女子慣れしてないから返答をするのにも気を使ったりーーん?」


 俺はいつのまにかつらつらと誰かと会話をしていた。


 一体だれと話しているのだろうと思って振り向くと、何でもないような顔をした宇都宮さんが俺の後ろに立っていた。


「うわっ、宇都宮さん! いつのまに俺の後ろに!」


 俺が驚いて大きな声を出してしまった。


 宇都宮さん、いつの間に俺の背後にいたんだろ?


俺がそんなことを考えていると、宇都宮さんは眉尻を下げて俺を見る。


「なんか疲れてそうだったから様子見にきたの。伊勢くん、そんなこと考えてくれてたんだね。やっぱり優しいね」


「そ、そうだったんだ。いや、俺がというか、みんなが優しいって感じなんだけど」


 俺がバクバクとうるさくなった胸を押えていると、宇都宮さんは『んー』っと可愛らしく唸ってから何かに気づいたような声を上げた。


「あっ。じゃあさ、今日は二人きりでゆっくりご飯を食べない? 私、誰も来ない静かな場所知ってるよ」


 宇都宮さんは可愛らしくこてんと首を傾げ、そんなことを提案してきた。


 俺は思いもしなかった言葉に思わず声を裏返させる。


「だ、誰も来ない静かな場所? ていうか、二人きり?」


「うん。伊勢くん、一日中女子からの視線を集めちゃってるし、お昼休みくらいはゆっくりしたいんじゃないかな?」


「一日中視線を集めてるってことはないとは思うけど……確かに、視線は感じはいるかな」


 クラスメイトに鈴鹿と一緒にいるところを見られてから、放課後に誘われたり話しかけられる回数は減ってきている。


 それでも、入学当初と向けられる視線の数は変わっていない気がする。


 まぁ、この世界は男が少ないし、珍しいから思わず見てしまうという気持ちは分からないことはない。


 それでも、見られると気を張らないとだから多少は疲れてしまうのだ。


 まさか、宇都宮さんがそこまで俺に気を遣ってくれているとは。きっと他のクラスメイトたちのことをよく見ていて、こうやって気を遣ってくれているのだろう。


 やっぱり、宇都宮さんは優しいな。


 ……それにしても、まさかこの俺が美少女からお弁当のお誘いを受ける日が来るなんて思いもしなかった。


 まだ宇都宮さん相手でも緊張するが、他の女子たちと比べると比較的話しやすいし、リラックスできると思う。


 俺はそう考えて、宇都宮さんの提案に頷いた。


「せっかくそう言ってくれるなら、お願いしようかな。その静かな場所ってところでご飯食べようか」


「うん。そうしようよ! それじゃあ、お弁当取りに行こうか!」


 こうして、俺は宇都宮さんと教室を出て、二人きりでお弁当を食べることになったのだった。


 ふふふっ、女の子と二人でご飯だなんて、ようやく貞操逆転世界に来たって感じがしてくるじゃないか。


 俺はそんなことを考えて、宇都宮さんに案内されてひとけのない旧校舎の非常階段へと向かうのだった。


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