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第11話 妹からの挑戦状

「伴教くん、今日は学校どうだった?」


 放課後。俺は昨日と同じように鈴鹿と手を繋いで下校していた。


 周りからの視線も気になるが、それ以上に鈴鹿の手の感触が気になって仕方がない。これって、いつになったらなれるんだろうか?


 ていうか、慣れる日なんてくるのか?


「伴教くん、話聞いてる?」


「あ、ああ。聞いてる聞いてる。えっと、なんか一気にフラグをへし折ってしまったというか、ルート分岐地点を全て潰してしまったというか」


 俺はそう言ってから、今日の朝の出来事を鈴鹿に話した。


 クラスメイトに鈴鹿と一緒にいるところ見られて勘違いされていること、またそれを否定しなかったこと、宇都宮さんが事態を収拾してくれたことなど。


 俺が話終えると、鈴鹿は機嫌よさげにニコッとした笑みを浮かべる。


「そっか。うんうん、ちゃんとカップルに偽装しただけのかいはあったみたいだね! その宇都宮さん?って言う人にも感謝しないとね!」


 鈴鹿は満足げに数度頷く。


 しかし、そんな鈴鹿に対して俺は少し複雑な気持ちだったりした。


「まぁ、感謝はしないとだけど……このままだと悪い女子だけじゃなくて、良い女子も寄ってこないんだよな。早く女子慣れして、偽装カップルをやめれるようにしないとな。鈴鹿の時間を奪い続けるのも抵抗あるし」


 せっかく貞操逆転世界に来たのに、いつまで経っても女子に慣れないから彼女ができないなんて勿体なさ過ぎる。


 俺がそう考えていると、鈴鹿が俺の手を握る力を強めてきた。 


「伴教くんはそんなこと気にしないでいいの。私が好きでやってるんだから」


 鈴鹿はそう言うと、俺に体を寄せて不満そうにジトっと見てきた。


「伴教くんはそういうこと考えないでいいの。わかった?」


「いや、でも、こうして鈴鹿と手を繋いで普通にしていられるくらいには、俺も女子慣れしてきたわけだしーーっ!」


 俺が食い下がろうとすると、鈴鹿が俺の手の甲を繋いでいる手の親指で優しく撫でてきた。


 俺が体をぴくんっとさせると、鈴鹿はニヤッと笑みを浮かべる。


「へぇ。これで、女子慣れしてきたなんて言えるんだ」


「い、今のはあれだ。突然撫でられてびっくりしただけで、女子慣れとは別の話だろ」


 俺が苦し紛れにそう言うと、鈴鹿はにやにやしながら俺を見ていた。


 正直、全然別の話ではないし、軽く手の甲を撫でられただけで鼓動を速めているから、女子慣れしていないとは思う。


それでも、兄としてここで引いたら舐められてしまうような気がして、張り合ってしまっていた。


 すると、鈴鹿が『あっ』と小さく声を漏らしてどこかを見た。


「そこまで言うなら、テストしてみようか」


「て、テスト?」


 俺は思ってもいなかった言葉に足を止めてしまう。すると、鈴鹿が俺を煽るように口元を緩めた。


「そう。今日は放課後デートしてみようか。それで、伴教くんが女子慣れしてるか確かめてあげる」


「ほ、放課後デート、だと」


 俺はその甘美な響きに目を見開く。


 前の世界で陽キャたちが放課後デートなるものをしていると聞いたことがあったが、俺には全く縁がない話だった。


 まさか、俺がそんな陽キャたちがやっているようなイベントに誘われる日が来るなんて……。


 今後のことを考えたら、妹相手に練習しておくのも悪くないかもしれないな。


 俺はそんなふうに考えてから、咳ばらいを一つする。


「そ、そういうことなら、受けてたとうじゃないか。放課後デートと言えば映画か? それとも、ゲームセンターとかか?」


「あそこがいいんじゃないかな」


 鈴鹿はそう言って、斜め前にあるカラオケのチェーン店を指さした。


「なるほど、カラオケか」


「クラスの親睦会に誘われたんでしょ? 多分、大人数で行くならカラオケとかになってたんじゃないかな」


「確かに大人数でどこか行くとなると、カラオケかボーリングあたりになるかもな」


 入学式の後、俺はクラスの子に親睦会に誘われた。結局断ってしまったのでどこでやる予定だったのかは分からないが、大人数になると行く場所は限られるだろう。


「じゃあ、カラオケにするか」


「え⁉ 本当にカラオケでいいの⁉ ふ、二人でだけど?」


「あれ? ダメなのか?」


「ダメって訳じゃないけど、さ」


 すると、鈴鹿は頬を赤く染めて俺をちらちらっと見てきた。


 カラオケだよな? なんでそんな反応になるんだ?


 カラオケってただ歌を歌うだけの場所だよな?


 俺がそんなことを考えていると、鈴鹿が意を決したように俺の手を引いてカラオケに向かって歩き出した。


 なぜ鈴鹿がこんな反応をしているのか、俺はその意味を数分後に知ることになるのだった。


 それから少しして、俺は鈴鹿の言葉の意味を思い知らされるのだった。

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