漂着の先に現れた女神様達、レッドは灰燼に帰すのか
ブルーの作ったヒョウリュウジャースーツの耐性は、物理的なものにしか効かない。たとえ致死に到る毒霧の中や、無酸素な罠の中でも、ヒョウリュウジャー達は飄々と動く。
パープルシャドウ特製、ブラックアメジストのお仕置きクリームソーダの威力は凄まじかった。しかし、グリーンが身体を張って罰を受け入れたおかげで、本部の被害は免れた。
ありがとう、グリーン。メンテナンスは忘れずに。
「はぁ〜、面白かったわね」
「ドッキリ大成功で、グリーンがいい表情だったね」
ドッキリで建物一つ爆砕しかねない威力のチェリー・ボムを爆発させるヒョウリュウジャー達。
サファイア様とチェリー嬢のご満悦な顔。それは演劇が楽しかったのか、グリーンのお仕置きが楽しかっのか‥‥どっちでもいいか。
みんなの笑顔が見られることが、ヒョウリュウジャーの本当の仕事なのだから。私の仕事は女神達の微笑みを守り眺める事。漂流者が漂流しようと爆発しようと、私は萌え萌えキューーーンが一番なのだ。任務? そんなもの私の知る事ではない!
────赤い蛙の夢占いは、恋に盲目なんて言うけれど、赤い毒蛙には夢がない。井の中の赤い蛙、大海を知り、情熱に踊る。
夢の舞台は華やかで、私を夢中にさせた。夢の終わりが近い。何故なら──おめかしした女神様達が、お祝いの踊りを見せに『メイド喫茶 愛しのチェリー』 に集合したのだ。
ここにいるヒョウリュウジャーは私だけ。つまり‥‥ご褒美だ。料金は四倍。十倍払ったって、見れないものもいるのだ。安すぎて失礼なくらいだ。⋯⋯借金だけど。
ただ気がかりがある。女神様が集まって、私の心の耐久値が持つのかどうかだ。チェリー嬢が踊るだけでも心が締め付けられ破裂しかねないというのに。全員揃ってキューーーンってされて生きていられる自信はないぞ。
「こちらレッド。ブルー、頼みがある。応答せよ」
「⋯⋯⋯⋯」
しまった。チェリー・ボムの爆発で得たグリーンの魔改造に夢中で連絡が通じん。
期待と昇天の時間がせまる中、容赦ないシルバーの「イラスト召喚」 が発動する────。
待って、シルバー。心の準備を整える時間を────。
気まぐれな神の心を宿すシルバーが、聞く耳など持つはずなかった。いやね、嬉しいの、幸せなの。でもこんな愛らしい姿を見せられては私の心は萌え尽きてしまうではないか────!!
イラスト提供:澳 加純さま
無理。こんなの絶対無理だ。メロンクリームソーダが舞い踊り、女神様方はみんな美しくて、愛らしくて、色っぽくて、眩しすぎる───涙で女神様のお姿が霞む。
私が見たかった光景、それが今ここにある。
私がメイド喫茶に漂流し続けて、ようやく辿り着いた女神達の饗宴。
もう何もいらない。
私の心はアトミック・チェリー・ボムのような破壊力を持つ、女神様達の萌え萌えキューーーンな『アートミックス・ミステリアスダンス』により灰燼と化した。
────萌え尽きたチェリーレッドのヒョウリュウスーツが、女神様達の前で静かに崩れ落ちた。
ヒョウリュウジャーの物語は中の人々により語り続けられるだろう。
チェリーレッドが女神達の萌えキュンを見るために、最後まで精神を保てていたのかは定かではない。
ブルーの天才的な魔改造技術により、チェリーレッドは記憶をもとに中の人ごと復活するはずだ。
しかし⋯⋯それはチェリーレッドであってチェリーレッドではない。ただの残滓かもしれない。
⋯⋯
⋯⋯⋯⋯
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯
「レッド、灰になってないで一緒に踊るわよ♪」
────!!
「なに抜け殻になってるの? まだ新ダンスの、『萌えキュン・ラブストリーム・アタック』だって見せてないわよ?」
────うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
不死鳥の如く灰から蘇った私は、追加料金を払って席に着く。女神様のお力が私にキュンキュンパワーをくれるように、ブルーとシルバーが改造していたのだろう。
「えっ何言ってるのこの人? そんな機能知らないよ」
どちらが呟いた言葉なのかはわからないが、レッドの萌え萌えキューーーン生活は終わらないようだ。
私の生き様を見よ!!
────レッドの中の人 談
お読みいただきありがとうございました。
友情出演していただいたグリーンと、ヒョウリュウジャーの皆様、ご協力ありがとうございました。
チェリーレッドの裏話はこれにて終了です。あとはグリーンや皆さまがヒョウリュウジャーの日常を面白可笑しく語ってくれるでしょう。
グリーン様、最後まで頑張って下さいね♪
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