夢のクリームソーダは、波乱の幕開けか
酷い目に遭った。エメラルド様のために、S.o.D.A、構成員たるヒョウリュウジャーの総意でお仕置きをする事になった。グリーン、君が悪いのだよ。ブルーのグリーンにだけ特化したGPSをつけたまま、懺悔室で罪をぶちまけたのだから。
面倒な事はやりたくないと言ってすみっこに逃げるブルーと、グリーンの事より、萌え萌え眺めていたい私はノリの良い同僚達に捕まった。ブルーはともかく、私は借金を取られているので逃げ場がない。S.o.D.Aを喜ばせると、自動で返済されていくので協力する事にした。
「なんか甘いものばかりは身体に悪いとか、ダイエットの敵なんだって」
パープルシャドウの新作のクリームソーダの開発は、チェリー嬢が中心だ。サファイア様は見ているだけで、私は眺めているだけ。
「文句言いながら、アップルパイを食べ、コーラに浮気するから悪くなるのよ」
サファイア様はブラックの開発したグッズで遊んでいる。グリーンのチェリー色のボールペンの先を、フデイレンジャーの頭部にグサグサしながら、相変わらずグリーンへは素っ気ない。
「ダイエット効果を考えるならこれね。レッド、味見してみて」
「⋯⋯ゴハァッ!!」
熱心なチェリー嬢はバーのマスターから仕入れた知識をもとに、ブラッドオレンジクリームソーダを創作した。デス・ソースシロップ入り、キャロライナ・リーパー乗せ。見た目は美味しそうだ。だがソーダを吸い上げ、チェリーを口にした瞬間、粘膜がやられた。涙と汗が噴き出して止まらない。
「甘いのばかりと、うるさいグリーンが咽び泣いて喜ぶクリームソーダよ。シルバー達に頼んで作ってあげてね。甘くないのだから、しっかり味わって汗をかくといいわ」
ソルティバブル・ホワイトクリームソーダに比べて、美味しく飲めるものになっている。これならグリーンも喜ぶはず。罰ゲームといいつつも、グリーンの身体を心配しているチェリー嬢特製のクリームソーダを味わえるんだ。
私は汗だくになりながら新作クリームソーダを飲み干した。アイスクリームの冷たさが舌に優しかったよ。チェリーとアイスクリームが必須な理由はこのためか。
チェリー嬢の愛情の詰まるブラッドオレンジのクリームソーダは、辛くて辛くても美味しいのだ。グリーンよ、残したら許さん。
イラスト提供:澳 加純さま
「甘いわね、チェリーさん。私ならヒョウリュウグリーンを氷漬けにして、余分な脂肪を自然に燃焼させてあげるわ」
サファイア様はグリーンをグリーンランドのように氷漬けにしたいようだ。温暖化で溶け出す氷のように、寒さに対抗するため脂肪が燃焼するのかな。
空のグラスにフデイレンジャーを入れ、氷の玩具を投入していく。てっぺんにはチェリーではなく、小ぶりのりんごのような実が乗っていた。
「これは作るのがイメージしづらいのでは」
「そう? それならホワイトにお魚を仕入れてもらいましょう。そうねピラニアでいいかしら」
サファイア様、それはリアルにグリーンが沈むプールに放つつもりですよね。海水なら大型の鯱でも放ちそうだ。
「駄目ですよ、サファイア姉さま。エメラルド姉さまが喜びつつ、仕留める方法を考えませんと」
あれ、まだ怒りは鎮まってなかったみたいだね。
「それなら山椒はどうです。違う辛味は痺れますよ」
「それはいいわね」
グリーンへ飲ませるブラッドオレンジのクリームソーダには、隠し味として赤い山椒が散らされた。チェリー嬢の痺れる美しさを味で表現したのだ。
熱いのと寒いのと、どちらにしてもダイエットには効果的なクリームソーダ。口直しに考えられたのはメチルセルロースを使ったホットアイスクリームソーダだったが、却下された。
「甘やかし過ぎではないかしら」
「サファイア姉さまがそう仰るのなら、これはどうかな」
イラスト提供:澳 加純さま
パープルシャドウ特製、ブラックアメジストのお仕置きクリームソーダ チェリー・ボム付き。
チェリー・ボム・アトミックを阻止出来ただけでもよいか。グリーン、すまないが安心して爆発してくれ────。
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