ブルーアイズ 〜 紺碧の瞳に映るのはエメラルドの微笑みだけなのか 〜
私とチェリー嬢の萌え萌えタイムに現れたのは、サファイア様だった。
澳 加純さま提供・サファイア様
「サファイア姉さま、どうしてこちらに??」
萌え萌えキューー‥‥途中の大事なチェリーがサファイア様のお口へ吸い込まれてしまった。きっとまた特別料金は割り増しだ。
何故ならチェリーにチュッと口吻する、貴重で希少なサファイア様のお姿を特別席で見ることが出来たのだから。百万ドルの夜景も、この一瞬の美には敵うまい。
「あら、百万ドルも払ってくださるのかしら」
「さすがレッドね。姉さまのチェリーキッスの価値をわかってる」
ひと目千両出す価値はある。価値は認めても、払えるのかどうかは別の問題だ。
「ツケでお願いします」
「あら、払うのね。冗談なのに」
「レッドに二言はありません!」
心では泣きながら断言する。借金の桁が三つばかり加算された。サファイア様に価値をつけるのがそもそも間違いなのだが、私の表現不足もサラッと流すサファイア様。
「サファイア姉さまの価値はお金に表せない‥‥それも真理ね」
チェリー嬢の一言で百万ドルの借金は、通常の特別指名料金へと戻された。二人分。そこは徹底しているようだ。でも助けてくれてありがとう、チェリー嬢様。
「遊びはそれくらいにして、本題に入るわね。私も漂流者には迷惑しているのよ」
そう言えばグリーンは、ブルーの呪いがどうこう騒いでいたような。
「迷惑だよね、運のないのをサファイア姉さまのせいにして。だいたいエメラルド姉さまを差し置いて、サファイア姉さまに浮気するから、悪いのよ」
サファイア様の顕現は、クリームソーダ界に衝撃をもたらした。グリーンの気持ちが、サファイアブルーに靡いても仕方ない事だった。しかし、サファイア様は揺るがない。
「漂流者なんかどうでもいいのよ。私はエメラルド姉様が心配なだけ」
チェリー嬢以上に熱愛されていたメロンクリームソーダのエメラルド様。ヒョウリュウジャーも彼女を守護するかのように誕生した。知らんけど、たぶんそう。
「エメラルド姉さまは優しいからね。多少の浮つきくらい許しちゃうもの」
サファイア様に散々貢いだ所で、グリーンが報われる事はない。サファイア様にとって、エメラルド様が大切な存在だからだろう。
サファイア様の考えはシンプルだ。エメラルド様を困らせたくない。それに可愛がっているチェリー嬢が傷心して落ち込んでいるのを、誰よりも心配していたのだ。
「それでね、姉様と貴方達のために、ヒョウリュウジャーの司令官さんを味方に引き入れておいたわ」
はぁっ、司令官様を? サファイア様はどんな人脈をお持ちなのだ? 辻⋯⋯グリーンは、知ってるのか?
グリーンの漂流記や手記を読んでみる。今日も司令官様を放置し、漂流と称し羽根を伸ばし遊んでいる様子が伺えた。解放され自由を満喫し楽しんでいる。
グリーンの隙間時間は司令官様の息抜きタイムでもある。機密事項の取り扱いに、心の声がダダ漏れなグリーンは邪魔だろう。
「あぁ⋯⋯なるほど。普段からそうやって泳がされていたのか」
「レッドも知らなかったの? 全国各地にいるクリームソーダ愛好家は、司令官様の為の調査員なんだよ」
「我々ヒョウリュウジャー達からも、逐一情報をあげていたのは知っていたが⋯⋯」
ウキウキぼっちライフを満喫している裏で、重大な物事が進行するのは良くある事だ。報連相は大事。グリーンが司令官様とのコミュニケーションを、しっかり取れていると信じているよ。
タイミングが悪いグリーンから、私へ向けて応答を求める通信が入る。どうせガチャか玩具でも見つけて、ニヤニヤしながら漂流に巻き込もうとしているのだろう。
「またグリーン? せっかくサファイア姉さまがいらしてるのに、邪魔な男ね」
チェリー嬢の言う通りだ。お宝は目の前にあるのだ。それ以上何を求めるというのだ。
「愚かね、漂流者は。自分の装備を誰が用意したのか忘れてるのね」
本人は用心してプライベート通信機を使っているのだろう。だが我々の使う通信機は本部からヒョウリュウジャー専用に配布された正規品だ。
サファイア様の指摘するように、グリーンは誰がヒョウリュウジャーの装備品を作ったのか忘れているようだ。
あの仕掛けマニアな幻邏神様が、図面通りの装備で済ませるはずがないではないか。そして気づくまで泳がせるのは司令官様と同じ。
「レッドぉ〜〜あ〜っあ〜、応答せよ。こちらグリーン、聞こえるかぁ⋯⋯」
止めるのだグリーン。君の生態は全て関係者に筒抜けだ。漂流中の醜態が気付かぬ内に晒されている事実に早く気づけ⋯⋯
────ピキッ
えっ、ピキッ? ヤバい、サファイア様のブルーの瞳が虹色に光ったよ。凍てつくブルーの波動で、グリーンの身体が氷結グラスに氷漬けにされる未来が見えたよ。
せめてプリン体、カロリーゼロの氷結にしてあげて⋯⋯ダイエット中だから。私がサファイア様にお願い出来るのはそれが、精一杯だった。
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