年末年始編 モチモチモテモテでおめでたい
「カラッ風プリーーーズ」
プリーズとか、和の言葉どこ行った。柔らかなもちで固められたグリーンが、突如吹き荒れる乾いた風により固まる。
最悪な事にヒョウリュウジャー達がいない。皆を集められるゴールド様も帰ってしまって、残っているのは私と女神様達だけだった。
冷たい汗が頬をつたって落ちる。グリーンの命運は、この場でもっとも力のあるサファイア様にかかっているわけだが⋯⋯。
「このままお持ち帰りさせていただいてもよろしいかしら」
「煮るなり焼くなりどうぞご自由に」
‥‥ですよね〜。この場にはパープル・シャドウズのメンバーしかいない。グリーンへ焼きもちを妬くようなものがいないのだ。
グリーンは御供え餅の飾りのように、頭だけ出したまま、おしるこ姫にお持ち帰りされた。
「あらら、止める暇なかったわ」
哀れなグリーンを見てスッキリさしたのかサファイア様に笑顔が戻る。よくやったよ、グリーン。身を挺してサファイア様の笑顔を守ってくれて感謝するよ。
「おもちって固いよね。全弾弾かれたわ」
チェリーライフルでグリーンの救出を試みたチェリー嬢も悔しそうだ。全弾見事にグリーンの頭部のゴーグルにぶち込まれていたが⋯⋯偶然だろう。
「大変なのです! グリーンが」
「おしるこ姫に」
「攫われてしまった」
「ヨヨヨ〜〜」
モブ戦闘員達も、丁寧にお辞儀をして去っていくおしるこ姫に手を振って見送った後、グリーンがいない事に気づいて騒ぎ出した。
「グリーンさまをお連れになるなんてなんと酷い事を‥‥」
沈むグリーンをイカ達の餌にしそこねて、悲しんでいるマッド・シュヴァルツ姫。彼女の涙は本物だ。
「残念ながら我々の力が及ばなかった。鏡開きの日になれば、グリーンも解放されるはず」
慌てる必要はなかった。どのみちブルーがお休みしている間、ヒビの入ったスーツでの活動は危険なのだ。必要ならばゴールド様の力やシルバーのイラストによって、いつでも召喚されるだろう。今はそっと御供え餅のように飾るくらいが安全なのだ。
何よりおしるこ姫はたおやかなお姫様だ。時折クリームソーダ以外のものを食べたいんだと叫ぶグリーンを、たっぷりと甘やかしてくれるはずだ。
「念のため、メッセージだけでも入れておくか」
新しく新調するグリーンのヒョウリュウジャースーツは、ワンサイズ大きめにするようにブルーへ伝えておいた。甘やかされて正月太りしたグリーンには、いまのサイズではキツイかもしれない。
グリーン人形のおケツが破れたのも、きっとそういう事だ。
二年越しの謎が解けて視界を覆う霧が晴れたかのようだ。今年は良い年になりそうな予感がした。
「災難は去ったわ。みんな今年もよろしくね」
「新年を祝って、乾杯!」
サファイア様とチェリー嬢の言葉に私やシュヴァ姫や、モブ戦闘員達が祝杯をあげる。
「ちょっとぉーー、放置はどうかと思うよぉーー!」
餅だるまとなって運ばれてゆくグリーンの叫び声が虚しく響く。漂流者のヒョウリュウ力が発揮され、雪まつりスタッフの目にとまり、舞台は雪国へと移るかもしれない。
おしるこ姫に連れられてグリーンがどこへ漂流したのか、我々は知らない。彼がどこに漂流しようとも、見守るのもまた我々の務めなのだから。
頑張れ、グリーン。みんなが君の活躍を待っているのだ。
お読みいただきありがとうございました。
時系列的には魔王と対峙前にする予定が、間違えて対峙後になってしまいました。
年を跨いで作品作りに協力していただいたマロンブラウンヒョウリュウジャーの中の人様、ありがとうございます。
またお話の元を提供していただいたヒョウリュウグリーン様の辻堂様もありがとうございました。ヒョウリュウジャー原作の幻邏様にも感謝の意を捧げます。




