漂流海賊編② 海賊たちの歓迎の宴は華やかなのよ
「クリームソーダを飲ませる為には、新たなクリームソーダよりも、クリームソーダが飲みたくなるメニューが必要だと思わないかしら」
アップルパイが駄目なのは、グリーンの言動でも明らかだ。
◇
ホワイト「わたしクリームソーダ飲めないから,代わりになにかつくろうか?」
食欲だけ煽っていくスタイル──
────代わり・・・ココアとか?
ヒョウリュウグリーン
2024年 12月09日 08時38分
(咫尺天涯戦隊ヒョウリュウグリーンのAPPLE PIEな1日:感想参照)
◇
ギルティーーッ‥‥と、ライフルを構えるチェリー嬢。怪しく輝く氷と、黒グロな何かを精製するサファイア様とコーラ姫。待つのだ、チェリー様はともかくお二方。グリーンの内臓は流石に生のままだから、処置で何とかなりませんって。
「あら、止めるのならレッド、あなたが変わりに食べても良いのよ?」
「グリーンの為にお作りになられているものを頂くわけにはいきませんよ」
ともかく‥‥seasonⅡに悩めるグリーンが新たな漂流をするには、それが自然なのだろうか。甘いクリームソーダには何が合うのか、確かに大事だ。しかし肝心のクリソニウムに繋がらなければ、意味がない。
「そこは任せて頂戴。漂流者が泣くほど喜ぶものを用意するわ。チェリーさん、ラッピングしたものをレッドに見せてあげて」
サファイア様がチェリー嬢に用意させたものをテーブルへと置く。
「これはピザ?」
ラッピングというか真空パック状態になっていた。見た目は鮮やかなのだが、密封されている意味がわからない。
「開けちゃ駄目よ、レッド」
「普通より派手に赤いから、私‥‥チェリーレッドを模したピザだろう?」
赤っぽいきのこでレッドの髪が出来ている。魚の身で上手く囲い、溶けたチーズが顔を作る。いくつかあるので確かめようとすると、チェリー嬢に止められたのだ。
「赤いのは行燈茸だよ。それにシュールストレミングをほぐして周りに乗せて、エピキュアーチーズをまぶして顔にしたのよ」
型崩れしないように、包装されたラップが厳重な為に、匂いまではわからない。我が顔ながら、美味そうなのだが。食われるのか。ピザカッターで、カットされるのかと思うとなんか痛い。
試作品のクリスマスケーキも合わせたパーティセットが出来上がる。
「こんにちわー!ヒョウリュウイーツデース!」
すみっこで研究に没頭するブルーへ、メッセージを添えてパーティセットを配送する。結構な量になるので、グリーンと一緒に飛ばす際に崩れない入れ物が必要だった。
「了解。なんとかするよ」
ブルーは事情をすぐに察して迅速に対応してくれた。隕石が落ちても壊れない、グリーン専用のバックパックを作る。流石ブルーの開発した『ヒョウリュニウム』 だ。
新装備の試着の為に呼び出されたグリーンが、パープル♡シャドウズからのメッセージカードを持たせられて、パイパイレーツの拠点まで飛ばされた。持たされた品は贈り物なので、グリーンは安心していた。
「タフだよね、グリーンって」
ブルーの改造で、大砲による射出速度は軽く音速を越えている。それなのにグリーンに内臓されたGPSの心拍数は正常で、データ分析をするブラウンも呆れていた。
◇
すわっ敵襲か!?
新たなアップルパイ作りの会議を開いていたパイパイレーツは、突然の地響きと震動で飛び出して来た。
りんご園の近くの空き地に大きなクレーターが出来ており、緑の物体が刺さっていた。
「あれ、ヒョウリュウジャーの緑じゃん」
「ウケる〜〜、頭から刺さってるし」
パイパイレーツの集団に囲まれて、グリーンの見えない鼻の下が伸びる。思えばNAROUでは苦難と悲劇の連続だった。パイパイレーツの基地に漂う芳醇な果実の香りと色香に、グリーンの心が溶けかけた。
「あっ、こいつパープル♡シャドウズの差し入れ持ってやがる」
ハラリと落ちたパープル♡シャドウズのメッセージカードの入った封筒。グリーンは桃色の空気から一転して、寒々しい緊張感に脅かされた。
「メタリックブルー様からのご馳走じゃん。特製クリソーやアップルパイの新作まである!」
────説明しよう!
メタリックブルーとは、サファイア様を召喚したヒョウリュウシルバーが、遊び心と悪戯心を発揮される姿である。魔法銀の如き輝きは、魔法のペンにさらなる魔力と魅力と画力を宿らせる。
ミステリアス・シルバーは無限の可能性を秘めているヒョウリュウジャーなのだ。
「はっ? そんな能力知らないんだけど」
襲われずに済んでホッとするグリーン。その視線の先には意識を失いかけたデスアップルパイがいた。
「ピザにケーキまであるじゃん」
ブルーの魔改造により、グリーンのバックパック内は寒暖が自在だ。ピザは温かく、ケーキやクリームソーダは冷たく運べる。
「ありがとね、グリーン。ウチラ新作悩んでいたから嬉しいよ」
感謝の言葉をかけられて、グリーンは感動した。決して両腕に抱きつくパイパイレーツのパイの柔らかさに触れたからではない。
「そだ、グリーンも一緒に食べようよ」
ガシッと両腕をロックされるグリーン。海賊の宴に強制連行される。カッコいいけれど、中の人はただの漂流者。やわやわなパイがなくても、常人以上の力は出ないのだ。
海賊館の一室に連れこまれたグリーンは、盛大な歓迎を受け喜ぶ。色々なパイの数々にニヤつきが止まらない。
しかしデスアップルと怪しげなクリームソーダだけは避けよう⋯⋯グリーンはそう考えていた。浮つきながらも学習はするものだ。しかし、レッドの顔を型どったピザを見て、嫌な予感がした。
パイパイレーツの一人がピザの包装されたラップを次々に破った。その瞬間、室内には激臭が解放され、グリーン襲う。漂流のため無駄に感度の高まったスーツの機能のせいで、グリーンの中の人は中で大変な事になった。
「あっ、このピザ美味し〜〜っ」
漂流海賊達にはピザは何故か高評価だった。涙と嗚咽で大変な目にはあったが、迷子のホワイトが漂うグリーンを釣り上げ、グリーンだけ無事? に帰還した。
ホワイトさんは絶賛迷子中なのは、彼女にとっての日常なのだ。
◇
「あいつらは流氷の海も漂流する海賊だからね。エスキモーの保存食のキビヤックも食べるそうだよ」
発酵しないハズレを引くと危ないグロい伝統食。良い子は画像検索しちゃ駄目だぞ。
「サファイア様。グリーンはともかく、なんでも食うならパイパイレーツの退治は無理ではないですか」
「だからいいのよ。私がクリームソーダに入れた氷はウラシマのドライアイスなのよ」
「ウラシマ? 玉手箱のですか?」
「そうよ。ソルティバブルホワイトクリームソーダの塩分の強烈な渇きを促進させるの。デスアップルパイで動けず干からびるがいいわ」
「ドライってそっち?!」
ヤバいやつじゃん。ドライフリーズとでもいうのか⋯⋯グリーンが口にしていたのなら一瞬でミイラになりかねない代物だ。
「まあこれでしばらくは大人しくなるはずよ」
毒を持って毒を制す。グリーンの捨て身の特攻で、パイパイレーツの一部は大人しくなった。しかし、漂流海賊の勢力は広く強い。
グリーンの試練はまだまだ終わらないのだった。
頑張れ、グリーン。みんなが君の活躍を待っている!!
お読みいただきありがとうございます。
サファイア様の生みの親であるシルバー様の、新フォームを勝手に創造した事をお許し下さい。
またグリーン様、中の人の体調悪い時ですが、大変な目に合わせてごめんなさい。




