クリスマス外伝 ② パープル♡シャドウズは何かと戦っていたよ
「これを発表するとさ、たぶん泣くね。泣きつくわよね」
「誰が? 話が見えないよチェリー様」
「辻堂に決まってるじゃない。他に誰がいるのよ」
チェリー嬢が名指しで呼ぶのはグリーンの事だ。中の人とか気にしないのが彼女らしい所だろう。そのチェリー嬢が急にヒョウリュウジャー達と連絡を取り出した。なんでもクリスマスに向けたケーキを作りたいと言うのだ。
「仕方ないじゃない。クリスマスケーキは大抵苺だもの。お正月にはおせちに栗よ。このままだとさ、私の出番がないもの」
緑化運動促進のため、レッドはヒョウリュウジャー業務を放置プレー中だ。なのにチェリー嬢が騒ぎ出したのだ。
「あなた、業務なんてしてたのかしら」
サファイア様の鋭いお言葉が背中に刺さる。名目上はお供‥‥じゃなく護衛なのだ。だからお側にいるだけで業務でもある。
「それならこの退屈な時間を何とかしなさいな」
実のついてないチェリーの枝で突かれてレッドは泣く。もちろん距離感が縮まっての嬉し泣きだ。
ただね‥‥祭りが終わって、中の人達はみんな忙しいのだ。我儘言ってはいけませんよ、サファイア様。
「なんかねー、レッドの外の人が、今は企画が立て込んでいて忙しいんだってさ。辻堂とばかり遊んでいられないから、設定集に色々とツッコミたいけど我慢するんだって」
感想として言葉に残すと、刺激してはいけない人達が科学反応を引き起こすようだ。誰も見ないレッドの手記ならば問題は早々起こらない。レッドの外の人も、多忙な時期や、体調崩している方々に迷惑をかけたくないようだ。
「でもさぁ、辻堂のレッドへの煽りが原因だと思うのよね。作中ワードを使って小突いてるよね。爆弾ツンツンしてるようなものよね」
チェリー嬢がチェリーライフルを構える。テーブルの一つに組体操して積まれたグリーン人形へ向けて、パシュッとチェリー種弾を放った。
見事に一番てっぺんのグリーン人形を撃ち落とす。グリーン人形の頭がないのは気のせいだ。はしば達が悲しむから早めに回収して直してもらおう。
「グリーンも色々考えてるはずだよ⋯⋯たぶん」
今は動き始めたブラウンにより、剣山の上にでも座る治療を受けているそうだ。ニードルクッションのように大人しくチクチクしてれば完治は早いのだと思う。実際ブラウンの医療効果のおかげか、症状は改善に向かっている様子。
⋯⋯レッドはグリーンやヒョウリュウジャー達と同じで、女神様方の要望に応えたいだけなのだ。いや、欲望が女神を誕生させたのか。
サファイア様の影響で、過激さが増していた。グリーンをあまりいじめるなと、各方面からお叱りを受ける。『叱責天罰戦隊』 が組まれるかもしれないから我慢しているのが実情だ。
散々酷い目に遭っているのに懲りない漂流者に、サファイア様の機嫌が悪くなり、ヘイト値が溜まってゆくのはもはや流れだ。基本設定なのだ。暇な時は、放っておいてもヘイト値は上がるようだ。
これ‥‥レッドは悪くないよね? 悪くないと言ってよバニーちゃん。
想定外のトラブルを引き起こしそうなのは、新たにパープル♡シャドウズに加わったブラック・プリンセスの怨念体ブラック・スクイーズだ。それも『マッドイカー・シュヴァルツ』バージョン。何で?
どうやら『メイド喫茶 愛しのチェリー』 ハウスのモブ小屋横にプールが出来たせいだ。本部にいるとホワイトがシイラ号の燃料の為に、調理しようとするらしい。
未知の食材を調理したものが問題ないか、グリーンが真っ先に食す。過剰反応を引き起こさぬ為の、配慮だ。たまに痺れていたり、青黒くなっているのは愛嬌だろう。
モブ横プールは、NAROUの管理するプールとして、とかげブルーとはしばブラックが急いで建築したようだ。モブ戦闘員はもとより、グリーンが息抜きによく泳ぎに来るようになった。
あっ、サファイア様のイライラの原因はそれか。
ぷかぷかと漂うばかりのグリーンにサファイア様のヘイト値が上昇する。フォーム・チェンジし過ぎたせいか、レッドには、サファイア様の気持ちがよくわかる。
「────よし⋯⋯やるか」
「さすがレッド。淀みがないわね」
一気にパァッと、明るく華やかになるサファイア様。やはり美しい。
「腕が鳴るわね。たっぷりと踊らせてみせるわ!」
チェリー嬢が舞踏派から武闘派になってないか心配だ。
「なぁに? グリーンが踊るの? 溶かすの?」
イカすシュヴァ姫も嬉しそう。でも物騒なのだよ。溶かすって、絵の具じゃあるまいし。
「⋯⋯それならさ、酸の海に沈めてかき混ぜようよ」
⋯⋯あれ、誰よこの人。めっちゃ楽しそうにいるけど、言ってる事がおかしい。グリーン‥‥逃げるんだ。
──⋯⋯ぷかぷか。
「ボク? ボクはワインレッド。中身はまだないよ。でもよろしくね」
良かった。新たな邪気がヒョウリュウジャーに紛れ込んだのかと思ったよ。ワインだし、邪気ではなく酒気だね。大人の事情で密かにメインキャラと入れ替わっても見逃してね。
金星から輸入した流れる酸の海がプールに流され、グリーンが溶けるように沈む。本体も酸には弱いからね。SAN値が下がらないのがグリーンの強み。
『グリーンの悲惨な一日』 の無限ループへの放流が開始された。何日で脱出出来るのか、わからない。
時空を歪ませるとか、そんな概念干渉出来るのは‥‥うん、とばっちりを受けるから止めておこう。
『マッドイカー・シュヴァルツ』の新技、イカ墨メイルシュトロームで、さらにぐるぐる真っ黒にかき回す。
「汚物は消毒よぉぉぉ〜〜〜!!」
ヒャッハー‥‥って感じではないが、高圧放水を楽しむ女神様方。汚したのは『マッドイカー・シュヴァルツ』 なのだが、汚れ落としの名目があれば関係ないようだ。
濃縮されたシュワッとパンチ入りの洗浄液をプランジャーポンプユニットでグリーンへの洗浄放水プレーを楽しむサファイア様とチェリー嬢とコーラ姫様‥‥じゃない『マッドイカー・シュヴァルツ』 だ。
消防士のようにウォーターシールドで、完全にグリーンを封じ込める。ブルーインパクトの力も加わり高水圧で制御難しいのに、負けないパワーのある女神様方⋯⋯。
きちんと、汚れを落としたので、はしばブラックの精霊たちにも迷惑はかけないよ。
そのかわりに、大好きなグリーンが酸で外装溶けてアイスクリームのように真っ白になったので、お絵描きタイムが始まる。メロンシロップ原液百%を吸収すれば、すぐに元の緑に戻る。
プールのネタを書いている時に煽り設定いれるから、グリーンが無限ルーブのプールで溺れかけた。でも、しっかり後始末をするパープル♡シャドウズの皆さんは進歩していたようだ。
『マッドイカー・シュヴァルツ』も楽しめたようでコーラ姫にお戻りになったよ。あれ、怨念ではなくただの⋯⋯止めておこう。グリーンへの愛が少し過激なだけのはず。女神の闇に触れてはいけないのだ。
「あれ、なんでグリーンを洗っていたんだっけ?」
辻堂氏は大人しく治療をしたり、資料作りをしたりと忙しく、さほど目立つ動きはしてなかったはずだ。
なんか悪ノリしてしまったが、ノリノリの海苔⋯⋯はて、どこかで?
どうやらヒョウリュウジャーらしく漂流して、別な目的に向け動いてしまったようだ。
────ケーキは果たして出来るのか、乞うご期待!
お読みいただきありがとうございます。
クリスマス外伝、こちらが本編ですが、長くなったので次話に続きます。




