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第一章 「分ける」という知的行為

 本エッセイは「人間とは何か」という問いに対して、「分けるヒト(羅:Homo Divider)」と名付け、それを答えとする試みである。



 早速だが"分ける"の意味を次に定義する。これをしなければ本題に入れない。



 分けるとは"ひとまとまりのモノ"を、"2つ以上の異なるモノ"として認め、"2つ以上の異なるモノ"それぞれに名前を付ける行為である。



 ヒトなんでも分ける。



 例えば、ヒトは"わたし"と"あなた"に分けられる。それぞれ形が違う"木の実"は"りんご"と"ぶどう"に分けられる。ヒトが採った木の実は"わたしのモノ"と"あなたのモノ"に分けられる。



 "頭の上にあるもの"を空と宇宙とに分け、"足の下にあるもの"を山と森と海と川と湖とに分けた。



 暖かくなり、寒くなり、また暖かくなる。この繰り返しを"1年"に分けた。1年を月の満ち欠けによって12つに区分けした。太陽と月の周期を"1日"とした。過去から未来への連続した流れすら分けて、分けて、分けて……みじんに切って"時間"と名付けた。



 名付けとは、分けたモノを分かりやすくする為にラベルを貼ることだ。そして"名付けられたモノ"を自分の支配下に置くことを意味する。親が子に名をつけるように。身の回りに"名付けられていないモノ"が存在するだろうか?いや、存在しない。



 例えば、ヒトは色を7色に分け、それぞれを"赤"や"青"と名付けた。"赤"と"青"を混ぜると、その中間の色になり、それを"紫"と名付けた。それより少し青に近い色を"紺"とし、赤に近い色を"マゼンタ"とした。



 では"マゼンタ"よりもさらに"赤"に近く、"マゼンタ"ではない色は?



 色彩図鑑を見れば、色相や彩度によって、その色にも名前が付けられているだろう。しかし、その色の名前を知らないヒトは、その色を"赤"か"マゼンタ"と呼ぶだろう。彼らは"赤"と"マゼンタ"の間にクオリアで線を引いている。"赤"と"マゼンタ"の間の色など、彼らには存在しないのだ。なかには"マゼンタ"すら存在しないヒトもいるだろう。



 このように、モノは名付けを経て初めて、モノはヒトの思考に存在を許される。ヒトは全てのモノを分け、名付け、それらを研究することで、英知を得た。"分ける"ことは全ての根源にあるヒトの"知的行為"なのである。



 ヒトは世界をどんどん分けて、どんどんカテゴライズ(=分類)していく。



 "姿形が違う"と、ヒトとそれ以外の生物を分けた。



 "川の向こう側に住むヒトとこちら側に住むヒト"で、民族を分けた。



 "私とあなた"で、血を分けた。



 カテゴライズが留まることはない。それはヒトの営みであるからだ。新種の生物、新しい病気、新しい元素。新しい民族……時間とともにカテゴリは増える。これらの多くは、それまで"分けられていなかった"だけで、世界に存在はしていた。分けることで、ヒトがそれを発見できたというだけだ。



 さて、"分ける"という"知的行為"にもヒトは名を与えている。それを日本語では"科学"と呼ぶ。科学とはまさに"分ける"行為に他ならない。



 一つの事象に焦点を当て、観察し、理論に基づいて"この事象はこういうものである"とカテゴライズする。これが科学である。そして科学も、それが持つ視点によって分けられている。生物学、数学、文学、工学、言語学……。



 さて、ここまで、"分ける""カテゴライズ"などと連呼してきたが、それらは一体"何を基準に"行われているのか。



 血か?物理法則か?はたまた神託か?「誰が決めた」?


(1.4) 神はその光を見て、良しとされた。神はその光とやみとを分けられた。

  

(1.5) 神は光を昼と名づけ、やみを夜と名づけられた。


(Word project, 『創世記』)

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