脱衣所と浴室
「失礼ながら、リリィさんは姉系であっても現状は見た目10代前半ぐらいかと」
「自覚はあるが。なんだ? おまえもバカにしたいのか?」
こういう合法ロリの人は、散々見た目をいじられるんだろうな。やはりこの手の話題は触れないが吉。すげぇ睨んでるし……
しかし今回ばかりは触れざるを得ない。
「いえいえ、そういうわけではなく。
今回の件に関してですが、いくら実年齢が20代後半とはいえ、見た目10代前半の女性にテンプレ反応とか、まして手を出そうと思う男って、やばくないですか?」
合意かどうかの問題ではなく、年端の行かない少女に手を出す男性、つまりロリコン。どこかの国では重罪になるらしい。
オレがリリィさんに何かしらの反応をすれば、それは犯罪者の仲間入りとなりかねない。
「それはやばい。私がもし成人男性が幼女に手を出す現場に遭遇したら、間違いなく天柱を下す」
「その現場」
「…………」
オレは自分とリリィさんを交互に指差すと、リリィさんは静かに納得してくれた様子。
「今回はお前の勝ちだ。私も犯罪者と同居しているなんて噂を立てられたくはないからな」
「はぁ……それはどうも……」
そう言ってリリィさんはオレの横をすり抜けてダイニングへ向かう。
なんの勝負だよ? 何かの思惑がなければ勝負なんて仕掛けてこないだろ。もし負けてたなら実験材料にされていたのか?
怖い怖い……
さて、こんな短い距離なのにやっとの思いで脱衣所にたどり着くと、ここにも資料が……なんてことはさすがになかった。
脱衣所内には、何も置かれていない棚、洗面台、ドラム式洗濯乾燥機、室内干し用のバー。ただし洗濯物は干されておらず、よそお通り洗濯機の中に入れっぱなしだ。
このままではオレの服が洗濯できない。
仕方がないので、中に入っているものは全て棚に放り投げるように移動させる。
それから自分の服を脱いで 、洗濯機の中へ。
使い方は……よく見ればこのドラム式洗濯乾燥機はウチにあるやつとほぼ同型っぽく、スイッチの配置までそのまま。
ただ、やはり普通にスイッチを押しただけでは反応しなかったので、これまでと同様、念じるようにスイッチを押すと、本来液晶部分に残り時間が表示されるところ、その液晶部分の上に『30』という数字が浮かび上がった。
そう浮いているんだ。横から見ても後ろから見ても、立体的な数字が浮いている。
しかも終了までが早い。
……ここは異世界間だしてくるんだ……
まぁ異世界というか、オレの世界と比べると近未来的とでもいうか。
やはり異世界は異世界でも、中世ヨーロッパベースではなく、魔力が存在する現代日本のパラレルワールド、という認識の方がよさそう。
30分で完了するなら、シャワーをさっと浴びてノーパンで過ごすよりも、湯船に使ってのんびりとしようか。
そう思って浴室の折れ戸を開けると、詩音曰く『少女の浴室必需品』がずらりとならんでいた。
こういうところはちゃんとできるんだから、もっと他のことにも反映させてほしいものだ。リリィさんも詩音も。
なーんでオレが詩音が使う『少女の必需品』を勝ってこなくちゃいけないんだ。下着を買ってこいとか、罰ゲームというより処刑だろ!
まぁもしかすると二度と会うことはないかもしれないから、そんな陵辱は受けることはもう二度とない……と思いたい。
それはさておき。
浴槽のお湯は抜かれている。というか、リリィさんは湯船に浸かっていないのだろうか? あるいは同じ湯に浸かられることを嫌ったか。
もったいない気もするが、家族以外、いや、家庭によっては親父さんに同じ湯を使って欲しくないという年頃な少女もいる、という噂を聞いたことがある。
お嬢様カフェで働く詩音の友人という女性がウチに泊まりにきたときも『残り湯を飲まないように』とか言ってたけど……それとはまた違うか。
あれはオレをただいじってるだけ。
この世界では水はどれくらいの価値があるかわからないが、自由に使っていい、と言われている以上、浴槽にお湯を貯めることにした。
もうスイッチ類にはだいぶ慣れてきたので、念じながらポンと押すと、浴槽にお湯が貯まっていく。
そして体を洗い終える頃にはちょうどいい感じのお湯が貯まり、温度を確かめて湯船に浸かる。
脱衣所に響く選択の音。気持ちいい湯加減。
普通の生活っていいよなぁ……




